表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
看板娘始めました  作者: 暗根
本編
8/177

首謀者

メタ回。

そう言うの嫌いな人は飛ばしてください。

「じゃあ、おやすみー」


「おやすみー」


民宿「しろすな」2階。

本日の業務を終えた2人がそれぞれの自室に消えていく。

初日こそドタバタだった初のお客対応であったが、慣れとは案外早いもので、2日目のこの日はそれほど慌てることもなく終えることができたようである。


「…寝るか」


さて、こちらは咲希の部屋。

自室に入って1人になった咲希である。

どうやら何かやろうか考えていたようだが、明日のことを考えると寝た方がいいよねこれ、と言う感じになったので、もうとっとと寝るようである。


「…」


先に敷いておいた布団の上に携帯を持って寝転ぶ咲希。

さくっと目覚ましの設定をかけると、電気を消して、スマホを頭の上くらいにセットしてそのまま目を閉じた。

クーラーはガンガンに効いているので布団は被っている。

これ自体はもはやいつものことである。


「…」


寝る体制に入って、布団で目を閉じた咲希であったが、その日はたまたま寝つきが悪かったのか、なかなか意識が飛ばない。

ので、一度起きるかと思い体を起こそうとしたのだが。


「っ!?」


身体が動かなかった。

まあ、俗に言う金縛りである。

で、こういう時は大体何かよく分からないものを感じ取ることが多いらしいが、例にもれず、咲希にもその感覚が襲っていた。

身体こそ動かない状況であったが、こういうの苦手な咲希にとってみれば絶叫ものである。


『咲玖、聞こえるか』


「…っ」


『…ああ、すまぬ。叫ばれると不都合であるが故、体の自由は奪わせてもらっている』


そんなとこに突然かけられる、というか頭に響く謎の声。

前述のとおり金縛り状態であるため、声が出ないが、咲希の心の声は南無阿弥陀仏を唱え続けていた。


『…一フレーズでは霊すら払えぬぞ。そもそも我は霊に非ず。そなたをここに呼んだものだ』


そこで告げられる諸悪の根源発言。

最低限超常的な存在であることだけは分かる。


『今宵にそなたら抱いた懸念を払拭するために一時的に顕現させてもらった。…ああ、口に出さずとも胸の内で話すがよい。我にはそれで届く故』


(え?聞こえるのこれ)


『聞こえておるぞ』


(誰?どこにいるん?)


『誰かは知らんでよい。いる場所はそなたの頭の上側だ』


謎の声の主はそう告げるが、現状頭を動かせない咲希にその姿を確認するすべは無かった。


(え、お前が俺らをここにやったの?)


『そうなるな』


(何故?)


『それに答える時間は今は無い。そなたらには悪いがこちらから伝えるべきことだけ伝えさせてもらおう』


謎の声の主は、そこで一呼吸置いたように言葉を区切り、そのまま話し出した。


『そなたらは、その体が別の誰かのものではないかという懸念を持ったようだな』


(…まあ、明らかにこの今の体の過去があるから、そう思って)


『結論を述べる。その体の過去は我が用意したもの。よって、そなたらは誰かを乗っ取ったわけではない。何も罪悪感を抱く必要はない』


(え、そうなの?)


『今宵、伝えておかねばならなかったのはそれだけだ。梛にも同じことは伝えておくが故、安心するがよい。また、いずれ、そなたらの前には顔を出す。その時に詳しい話はさせてもらおう』


(…ということは、今日渚が言ってた帰り道の少年は…)


『…さて、失礼する。長時間の顕現は色々と影響を及ぼしかねぬが故』


(ちょ、待て、まだ話が…)


その辺で、咲希の意識は飛んだ。


□□□□□□


「…あれ、いつの間に眠って」


布団からゆっくりと起き上がる咲希。

勝手に目が覚めたようで、とりあえずスマホのアラームを解除した。


「…夢、なのかなああれ。でも記憶がやけにはっきりしてんだよなあ…」


咲希の頭に張り付いて離れない謎の声との問答。

夢として片づけられなくもないが、記憶の残り方と、リアル感がそうではないと訴えていた。


「…ちょっと渚に聞いてみるかあとで」


とりあえず寝間着から普段着へと着替えを済ませ、部屋外の廊下へと顔を出す。

と、そこへ丁度同じように出てきた渚と鉢合わせた。


「あれ、早いな、おはよう」


「おはよう」


「丁度よかった、話したいことがあったんだ」


「えっと、話したいことって?」


「…あのさ、変なこと言うと思うんだけど、昨日の夜、誰かに喋りかけられなかった?こう、頭の中にこう直接」


「え、あったけど、もしかして、咲希姉もそうなの?」


「え、まじで。じゃあなんか、今の体がどうとか話しされた?」


「なんか、そんな話された気がする」


「じゃあ、一応あれ、ほんとなんかな…夢かどうかが正直ようわからんくて、ただ、お前の方にも話してるようなこと言ってたから聞いてみた」


「あぁーなるほど、なんだったんだろう」


「いや、まあ、一応昨日の夜話してたようなことは無いみたいだから安心しろよってことなんだろうけど…私にもわからん」


結局あれが誰で何者だったのかは分からずじまいであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ