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看板娘始めました  作者: 暗根
本編
75/177

「じゃあとりあえず咲希の見た目もなんとかしたしぃ、次はぁ…って咲希どうしたの、そんなにキョロキョロして。なんか距離開いてるし」


「ああ、いや、なんか人の目が気になってつい」


「美船、もうちょっとゆっくり歩けって。咲希さんが追いついてない」


明らかに首が不自然に左右に定期的に振れている咲希。

一応歩いていく美船についていくこと自体はしているが、歩みもどこか遅い。

先ほどまでは普段通りであったので、まあ今の格好が問題であろう。


「んー?私に見惚れてるぜ的な奴?」


「どこをどう考えたらそういう風に見えるわけ?」


ナルシになれるほど、今の格好に咲希自身が慣れていない。


「え、だって今の咲希すっごい綺麗に見えるよ?ねえ?」


「ああうん。似合ってますよ咲希さん」


「あの、追撃やめてください。そもそも恥ずかしいんですよこれ。美船も雅彦さんも普段の私の格好知ってるでしょうに」


「むしろ知ってるからそういうの選んだんだよ?」


「嫌がらせですか?はーもうなんか肩も足もスース―するんですけど」


肩は露出しているので当然である。

下も普段スカートをほぼ穿かない咲希にとっては、当然落ち着かないものである。

ましてその状態で人目につくようなところを歩いた経験などあるわけもない。


「いいじゃんいいじゃん、咲希私よりもよっぽどスタイルとか顔とかいいんだから、お洒落しないと損だもん!いやでもせっかく格好をそれっぽくしたからには色々いじりたくなってきたなぁ…」


「ちょ、嘗め回すような視線やめーや」


咲希を下から上までじーっと見つめる美船。

若干咲希がたじろぐ。


「うーん、まあ靴は今日は外歩くだろうから仕方ないにしても、やっぱ顔とか髪型とかいじりたくなるよねー」


「勘弁して」


「うん、まあ流石にそこまでやってると時間無くなりそうだからまた後日にするけど」


「後日やるのかよ変わらねえよ」


「その時に新しく別の服買って、咲希の服の幅をこう広げていく感じで。おお!我ながらいい考えでは!?」


「それに巻き込まれる私への考慮無いんですかね?」


既に今日以降の予定が勝手に組まれていく咲希。

数か月分の付き合いで実際に言い出したら本当にやられかねないのは重々承知している。


「美船あんまり咲希さんを困らせるようなことは…」


「大丈夫だって、なんだかんだ本人も楽しんでるし?」


「どこが」


吐き捨てる咲希。


「えだって咲希知らないうちに髪下ろしてたしー?なんだかんだ乗ってるのかなーって」


「まあ、こっちの方が似合ってる気がしただけだけど…」


実際髪を下ろしたのは完全に咲希の独断である。


「うんうん、いいんだよお洒落はそういうとこからのめり込んでいけばいいんだから」


「のめり込みはしねえからな!」


「大丈夫、咲希の家にはお洒落さんの渚ちゃんもいるから、一回落ちればあとは早いってあたし信じてるから」


「いやな信頼だなおい」


「いやむしろこれは渚ちゃんに手伝ってもらえば早いのでは…よし、はい咲希こっち向いてー」


「うわ、ちょ撮るな」


パシャリと突然スマホを構えて咲希の全身を写す美船。

すすっと画面を操作してなにやらアプリを立ち上げて素早くその写真をどこかへと送信する。


「これでよい」


「よくねえよ。どうすんだその写真」


「これをこうしてこうじゃよ?ほら」


パッとスマホの画面を咲希に見せる美船。

画面に表示される先ほどの写真と渚とのトーク履歴。

思いっきり渚に送られた後であった。


「あっ本当に渚に送りやがった。うわ絶対帰ったら突っ込まれるやつだこれ」


「くくく…そのまま渚ちゃんにいい感じに懐柔されてしまえ」


「されねえからな」


悪だくみ面を晒す美船に突っ込む咲希。

ただこれで後で渚に何か言われるのは確定した。


「ふふふ…でも格好変えるだけでだいぶ化けたし、全身本気でやればもっと良くなると思うんだよねー。それこそあんまり女子耐性の無い、兄貴とかがいちころになる程度には」


「いちころっておま…」


「え、だって咲希、さっきから結構兄貴既に目の端で追ってるよ?咲希のこと」


「え」


「ちょ、美船!?」


唐突にぶっちゃける美船。

思わず声を上げた雅彦をにやにやとした顔で見つめながら美船が続ける。


「いやだって妙に静かだから気になるじゃん?そしたらなんか定期的に目の玉だけ咲希の方向いてるじゃん?いや分かるよー兄貴。咲希綺麗だもんね?でもなんか直視するのはどうかなと思ったやつでしょ?」


「ちょ、おま本人の前でっ!」


「…えーっと」


咲希の顔が雅彦の方を向く。

表情はいつものままだが、謎の圧を感じた雅彦が猛烈に頭を下げる。


「すいませんすいません。いやあの、なんかその変な気があるとか、そういうのじゃ…いや全く無いと言ったら嘘になりますけども、決してなんか悪気があったわけじゃあ…」


その言葉を聞いた咲希が、噴き出した。


「ぷ、いいですよ。大丈夫です。その程度気にしませんよ。というか言わなくていい部分まで漏れてますよ雅彦さん」


正直男からそういう目で見られたことに対して、思うところはあったようだが、まあ自分も多分逆の立場だったらやってるかもなとか思ったらどうでもよくなったようである。

ある意味中身が中身なので見知った仲ならある程度寛容的ではある。


「ああ…はぁあ…美船ぇ!」


「わ!私事実言っただけじゃーん!」


横では雅彦が美船に切れていた。

なかなか珍しい光景であった。


□□□□□□


「そろそろお昼にしよっか」


「咲希さんお腹減ってますか?」


「ん、まあ並みに。お昼にするならするで大丈夫ですよ」


「じゃあ決まりー。どーするもうここで食べてく?」


「俺はなんでもいいけど、咲希さんどこか行きたいとかあります?」


「なんでもー。というか何があるかも分からないので任せます」


「じゃあどうせ夜は外で食べるし昼は簡単でいっか。そこのフードコートでいいんじゃない?」


「ああうん。私はいいよそこでも」


「じゃあそこにするか」


というわけでフードコート。

なんだかんだ人は多い。


「うっわめっちゃ混んでる。クリスマスなのに」


「クリスマスだからこそじゃないかなむしろ」


「とりあえず席探すか。取っとかないと座れなさそうだぞこれ」


というわけで先に席を確保して座る3名。

とりあえず荷物置いて一息つく。

美船の買った物と、咲希の元々着ていた服等、地味に荷物はある。


「ん、先に2人行ってきなよ。流石にこんだけ混んでるし席確保要員いるでしょ。荷物放置してくわけにもいかないし」


「咲希いてくれるの?んーじゃあ先に行こうか兄貴?」


「じゃあお言葉に甘えて」


「いってらっしゃーい」


というわけで十数分後。

美船と雅彦が帰ってきた。


「ただいまー結構混んでたー」


「お帰り。まあこんな人だかりだしな。ん、2人はお昼そんだけ?」


「うん、まあ朝食べてそこまで経ってるわけでもないしねーそれに一応奢りだからあんまり高いのとか買うと兄貴が切れちゃうし?」


「お前な…なんでことごとく俺に奢らせるんだ」


「へへっ、いっつも奢ってくれるからつい」


「雅彦さん気前良すぎでは?」


「いや、あのはい。美船に言われると断りづらくて…」


「ふふーシスコンで助かるぜぇ!」


「いいように使われてますね」


「はは、面目ない」


2人はサンドイッチを買ってきたようである。

雅彦の奢りの様だが。


「じゃあ次私行ってくる」


「いってらー」


「いってらっしゃい」


それだけ告げて咲希が席を立つ。

周辺を見渡してそこまで人がいなさそうなところに向かって行った。

待ちたくないからである。


□□□□□□


「お待たせ」


「おかえりー」


「お帰りなさい」


咲希が席へと帰ってきた。

数分後の出来事である。


「って咲希ラーメン?がっつり行くねがっつり」


「まあお腹空いてたし普通に。あと割と空いてたから」


咲希はラーメンを選んだようである。

しかもちゃっかり大盛である。

ビジュアル面との落差がすさまじい。


「というか多くない?え、てか大盛?大丈夫なの?」


「余裕」


「え、大盛なんですか?」


「あ、はい。なんか無料だったんで大盛に」


「マジですか。夏祭りの時もちょっと思ってましたけど、食べますね」


「ああそういえば、こうやって食べてるシーン見せるの2回目か?まあ日頃からこんな感じですよ私」


さも当然のようにそういう咲希。

実際普段からこんな感じではある。


「というか2人とも待っててくれたの?食べててよかったのに」


「一緒に食べたいじゃんね?」


「咲希さんにも待っててもらったんでおあいこってことで」


「そうですか?じゃあまあ頂きます」


「「頂きます」」


というわけで昼食である。

待っていたおかげで食べ始めたのは全員同じ時間であったが、食べ終わったのもほとんど同時であった。


「ごちそうさまでした」


「咲希早くねぇ!?食べるの。なんで私がサンドイッチ1個食べてる間にラーメン大盛消滅してるの?」


「え、そう?早いか?」


「フードファイター?」


「そんな食えんわ」


「いやー…流石ですね」


「何の感心ですかそれ」


「いや夏祭りの時に見た早さは本物だったんだなと」


「反応に困るんですけどその言い方!?」


目の前には完全に空のどんぶり。

汁まで込みで完全完食であった。


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