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看板娘始めました  作者: 暗根
本編
72/177

事の後

「んあー楽しかったなぁ。王様ゲームなんて俺もやったの初めてだったけど。案外やってみるとおもしれえな!」


民宿「しろすな」1階風呂場。

とりあえずあの後風呂入ろうという話になり、男子勢から先に入ることになったのである。

そして風呂場の中と言えば、先ほどの王様ゲームの話が飛び交っている状況であった。


「俺も初めてだったけど、案外楽しかったな。色々やらされたけど」


「言うてそんな大したことやらされてないだろ?俺なんて猫語だぜ?猫猫!にゃーお!」


「最初はともかく最後らへんはほとんど効いてなかったよな?」


「まあなんかずっとやってたら慣れちまったからな…でもお前なんてほとんど何ともなかっただろ?」


「そうは言っても外走ったりするのは結構堪えたぞ?今日どんだけ寒いと思ってるんだ」


「お前普段から運動しまくりだろ?こんな程度へっちゃらだろ?」


「さっきも言ったけど、ここの周り一周くらいだからなんとかなっただけだからな」


「へへ、まあいいじゃんかそれくらいならよ」


その言葉に対して思い出したかのように明人が言葉をつなぐ。


「でも俺もその後、お前にハグをだな…」


「あああああ!言うな!やめろ!忘れようとしてたんだから!お前あれマジでやばかったんだからな!?」


凄まじい絶叫を上げる啓介。

今日は幸い、お客もいなければ、そういうのに割と神経質な咲希もいないので、叫んでも特に問題ない。


「やってる側もそれなりにダメージあったんだからなあれ!?」


「やられてる側は大ダメージとかそういうレベルじゃねえよ!なんだよあのマジな感じ!?今思い出してもゾッとする!」


「いやなんというかその…真面目にやれば恥ずかしさ軽減できるかなと…」


「その反動俺に来てるんだけど!?あのね!?俺はノーマルなの!一瞬でも男にときめきかけたの!どうしてくれんのマジで!」


真面目に怯えた顔をする啓介。

相当あれは心に来たらしい。


「いやあくまでもハグしただけだからな?」


「あれがか!?愛の告白にしか聞こえなかったからな!?顔と喋りかけ方本気すぎるんだよ!というか渚たちが話してるの少し聞こえたけど、お前あれ文化祭でやったってマジか?」


「え?あ、近い感じで…その、短編映画録らされて…」


苦い記憶を思い出して伏せ気味になる明人。

それに対して啓介が盛大に反応した。


「はー!あー女の子に好かれるわけだわ!どうせ女子にキャーキャー言われたんだろ!?」


「いやそっちもそっちで好きでやってるわけでは無いからな!?」


「否定しないってことはやっぱキャーキャーは言われたんだな!はーなんだお前!?そんななのに渚に手を繋がれただけで赤くなってるしよ!なんなんだお前は!?」


「い、いや、あれは、その…あんな風に手をつないだの初めてだったというか…」


「いやでもお前夏祭りの時普通に手繋いでたよな?」


まあ当然の疑問である。


「あれははぐれないようにその、自然に繋いでたから気にならなかっただけで…今回はなんか渚と繋ぐって考えたらその、物凄い恥ずかしくて…」


「ほんとなんていうか女子慣れしてんだかしてないんだかよく分からん奴…でも渚と手繋いでんのなんか罰ゲームじゃねえよな。役得だよな普通に!」


「いやだから恥ずかしかったんだってば…」


そんなことを話していたら顔がにやける啓介。


「へへへ、いやーでも役得と言えば他にも色々見れたよなまあじで?俺たちはともかく、女子勢の色々?ふへへへ」


「笑い方。少しは自重しろよな?」


「だってさぁ?なかなかあんなの見れないぜ?特に渚!昔っから恥ずかしがるのとは無縁だっただろあいつ?いやー顔真っ赤なんだもんやべえってあれ!しかもメイド服だし!なんか最後声がえらいことになってたし!破壊力ーがやばいってまあじ。ある意味我らが女王に感謝だよな!」


「あのなぁ…だからって女子に向かってエロいは…」


「なんだよ?そういうお前は何とも思わなかったってか?」


「そ…それは…全く違うと言ったら嘘になるけども…」


「ははっ!だよな!俺が目をつぶったらどうこうって言った時やってたもんなお前!俺は冗談で言っただけだってのによ!はは!」


「えっ!」


「なんだよ?ばれてねえとでも思ったかぁ?ばっちり確認してるぜ?いやー実に神妙な顔で目えつぶってやがったな?俺すらやってないのに、ククク」


「い、いや、あれは」


「あれはなんだぁ?いやでも分かるぞ?渚だもんなぁ?正直めっちゃ可愛いしなぁ?そんな子があんな声上げてれば反応しなきゃ男じゃねえよなぁ?へっへーこのむっつりスケベめ。あけっぴろげにこうやって言ってる俺よりもよっぽどあれな想像してたんじゃねえの?お?お?どうなんだよその辺?」


言葉攻めを食らって羞恥を刺激されたのか明人が逆に啓介に叫ぶ。


「お、お前はどうなんだよ啓介っ。稜子に思いっきりキスされて固まってたじゃんかよ!満更でもなさそうな顔してたよなっ!どうなんだよそこ!」


「え、あ、あ」


啓介の声が止まる。

静寂が一瞬の間流れる。


「…え?」


「あ、いや、あれは、いやそりゃ、役得だなってさ、はは」


言葉から勢いが消える啓介。

なんだか顔も赤い。


「なんだよ、そんなに急に動揺して…」


「いや…その、いや、何でも、ねえよ?へへ…」


「…お前、まさか」


□□□□□□


一方、渚と稜子。

渚の部屋の中である。


「稜子ちゃん、さっきから顔が物凄いことになってるけど、大丈夫?」


「大丈夫!?大丈夫に見えるこれが!?」


「うーん、見えないから聞いてるんだけど。さっきもちょっと言ったけど、なんで口にしちゃったの?」


「そ、その、キスって言われたから、口以外考えられなくて…」


「うーん、そうなのかなぁ。でもまあ、確かに、言われてみればそうやって考えれなくも無いのかなぁ」


「考え方とかどうでもいいのよ!私、私、キス、口に、思いっきり、しちゃった…!ああああああぁぁぁ!もうどうしよう!啓介に顔向けできない!」


渚のベッドの上でじたばたする稜子。


「稜子ちゃん!?それは私のベッド!そんなにばたばたしないで!布団がつぶれちゃうよ!」


「うるさいうるさい!そもそも渚が王様ゲームやろうって言わなきゃこうはならなかったのよ!」


「それに関しては否定できないから、ごめんねって感じなんだけど、まさかあんなことになるなんてって感じだよね」


「あいつもあいつでキスなんて言うし!あーもう、私もなんで馬鹿正直に言葉通りにやってるのよもおおおお!」


「落ち着こ?落ち着いて稜子ちゃん!本当に、本当につぶれちゃうよ!」


「いいわよ!つぶれたらもっと可愛いの買い直すから!」


「可愛いのって!ここ私の部屋なんですけど!?モノトーンの中に可愛いのあったらびっくりだよ!」


「そもそも女子らしさ全然しないのよこの部屋!何よ白黒って!あんた本当に女!?」


「ちょ、ちょっとひどくないかな稜子ちゃん?一応、一応女の子ですけど!?あと、ちょっと一応そういうの気にしてるんだから言わないで!」


「だから丁度いいからベッドから直してやるわ!この!この!」


「やめて、落ち着いてってばぁ!ほら、一回座って!」


稜子をなだめる渚。

本格的にベッドがやばそうだったので渚も必至である。


「はああぁぁぁ…」


「とりあえず、落ち着きました?」


「ええ、まあ…」


「それでね?蒸し返すようで悪いんだけど、稜子ちゃんってあの状況でキスするってなったら、誰にでも口でしてた?」


「するわけないでしょ!」


「だよねえ。稜子ちゃんだもんね。誰にでもするわけないよね」


「するわけないでしょ…明人にだってやらないわよあんなこと…」


「そうだよね、いくら仲がいいからって、誰にでも口にキスできたりはしないよね。それこそ、そういうこと気にしてそうな稜子ちゃんがすぐに口っていう発想に至るとは私思わなかったんだよね。だから私もちょっとびっくりしたよ」


「私だって誰にでもそんなことなんてしないわよ。あれは、あれは…その」


「うん、別に言わなくてもいいよ。だからこそ、大丈夫なのかなって」


「大丈夫じゃ、ないけど。なんかもう、流れに任せてやっちゃったというか…そんな感じ」


「ふんふんふん。なるほどね。でもあれだよね。啓介君も割と、まんざらじゃなさそうだったよね」


「…あれで拒否られてたらそれはそれでキツイわ」


「それでさ、稜子ちゃんは拒否されなかったでしょ。それに起こってしまったことはしょうがないから、これから稜子ちゃんはどうしてくんだろうなって思って」


「…分かんないわ。勢いでやっちゃったけど、心の整理もついてないし」


「でも、稜子ちゃんも啓介君のことは嫌いじゃないでしょ?」


「嫌いだったらあんなことしないわよ」


「それに、神谷君みたいなこともあったわけじゃないんでしょ?」


「…ええ、まあね。明人とのことがあった時に色々助けてくれたのが啓介だし」


「だから、ある意味これはチャンスだと思うんだよね」


「…何がよ?」


「2人がくっつくチャンス的な?」


直接的な発言をぶつける渚。

稜子が切れる。


「ふた…くっつくって…渚ねえ!」


「わわ!怒らないでってば!お節介だとは思うけど!こんなことがあったらもう2択くらいしか無いと思うんだよ!」


「だからって今、私あいつの顔みて、話せる気しない…!」


「うん、無理して話す必要は無いと思うよ。だけど、ここでもし稜子ちゃんが啓介君のことを避けちゃったら、酷いと疎遠とかになっちゃうかもしれないし、私もそれは嫌だなって思って」


「…じゃあ、どうしろって言うのよ?」


「もっと啓介君のこと見てみるとか?」


「私が死ぬわ!」


「うーん、じゃあそうだなぁ。ここから1週間以内に、また啓介君と遊ぶ機会を作るとか?」


「…もうなんかそっちに話持ってく気満々ね?」


「だってその方が面白そうだし?」


「面白そうって…はぁ、まあでも、このまんまで終わるのもなんか癪だし、何かしてみるわ」


「うんうん。私も手伝えることがあったら手伝うから、頑張って!」


「ええそうね。そうするわ。…あ、でも渚っ!今日のこと絶対誰にも言わないでよ!?絶対だからね!」


念を押す稜子。

やった身ではあるが相当恥ずかしかったようである。


「うん、言わない。まあ言う相手もそんなにいないしね。言ったところで感あるし」


「それでも!」


「大丈夫、絶対言わないから。それでさ、いつからそういう感じで見てたの?」


「今それ聞く!?」


「むしろ今だから聞くよね」


呆れ顔になりながらも渚にその時のことを話す稜子。


「…本格的に考えたのは中学生の時」


「あれ、結構長いんだね。もっと最近なのかと思ってた」


「意識し始めたのはその辺ってことよ。…まあ、明人とのごたごたもあったしあの時は」


「ふんふん成程、つまり稜子ちゃんが失恋のショックで落ち込んでるところに来た救世主が啓介君だったわけね」


「言わないで。恥ずかしいから」


「えぇーでもそっか。そっからだとすると、相当長いよね。啓介君は稜子ちゃんに対してそれ以上のアプローチは無かったの?」


「無いわよ。数年一緒にいたけど、無かったわ」


渚としては、失恋した女の子に近づく男はだいたいヤリ目的だと思っていた。

なので稜子と啓介がそのパターンで無いことに、少しだけ安堵していた。


「ふんふん、成程ね。確かに啓介君って回りよく見てるし、気遣いが上手だよね」


「当時の私としてはそれで助かったんだけどね。…まああんまりにも何にもないから最近はちょっと…ってのもあったけど」


「へぇ、そうなんだ。啓介君って学校とかで人気とかってあるの?」


「…まあ人としては?浮ついた話は聞かないけど」


「なるほど。そういう感じなんだ。そう言えば稜子ちゃんってさ、告白されたことある?」


「何聞いてんのよ!」


「いや別に、知りたいなって思っただけ」


「え、何、嫌味?」


その言葉にキョトンとする渚。


「え?何が?なんで?」


「え?」


「え?」


「…いや、無いんだけど。それはともかく、え、あなた一回くらい告白されてるでしょ?てっきり分かってて聞いてるのかと」


稜子があり得ないものを見た顔でそう渚に言う。


「え?えー?無いよ?」


「は?冗談でしょ?」


「嘘じゃ無いけど。ほんとに、無いけど」


「…なんでよ!おかしいでしょ!」


「ええぇ…おかしいというか、なんというか、なんていえばいいんだろうなー…」


「え、だってこんなに可愛いのよ?ありえないでしょ?棒立ちしてても男寄って来るでしょ?」


割と本気で考える渚。

女になってからの経験で無いと言ってしまったが、よくよく考えれば、この容姿でここまで一切そういう話が無いのはおかしいというものであると思ったようである。


「えっとね、前までは全然男の子が寄ってこなかったというか、周りが女の子だらけだったというか、そういう感じで、あんまりそういうこと無かったんだよね」


「え、女子中?」


「ん?違うけど、なんというか、話しかけに来なかった、かなぁ。周りの子が全部話してたというか、後聞きだったというか、男の子と話しても一言二言だったよ」


とっさに考えた言い訳をぶちかます渚。

幸い話の整合性に問題は無さそうである。


「そういう…中学時代はお嬢様か…」


「え?お嬢様?」


「いや、なんというか今の話聞いてたら男との接触絶たれてる感じがしたから…」


「まあ話しかける用事が無かったから話さなかっただけな気もするけどね」


「渚の周りの男はヘタレしかいないの…?こんな子がいたら普通告白列くらいできるでしょ…」


「えええええ!?できるの!?何それ知らない世界!」


「いや想像だけど。でも意外ね。全く告白されたことないなんて」


「喜ぶべきか、残念がるべきか分からないけど、そうだね」


「とにかく、私は無いわ。そういう経験」


「そっかあ、そうなんだ。じゃあ、そういうわけでもないのか」


「どういうわけよ」


「啓介君が草食男子で、ちょっと高嶺の花な稜子ちゃんに告白できない構図なのかなって思ってたけど、またそれとは違うね」


「高嶺の花って…あなたじゃあるまいし」


「え?なんで?稜子ちゃん美人じゃん」


「…あ、の、ね。あなたがそれ言うの?」


「え?ああ、そっか」


自分の容姿を思い出して何か納得する渚。

定期的に忘れる。


「なんか腹立つわねっ!」


「別にわざとじゃないんだよ!ごめんね!だってほんとに、稜子ちゃんが美人だと思ってたから!」


「仮にそうだとしてもあなたに言われると完全に嫌味よそれ!」


「ううーん、でも私空気読めないしなー。それに女子力も全然ないし」


「少なくとも格好は相当女子だと思うけど?」


「一応努力はしてるつもりなので。だからこそ、稜子ちゃんは魅力的な女の子だと私は思うんだよね」


「…そこまで直接言われると恥ずかしいわね。なんか」


「だって私が男だったら稜子ちゃんみたいな子を、ほっとけないもん!」


「…渚が男か。…まあ確かに私もほっとけないけどそれ」


「え、何が?どこが?顔?」


「いや顔は知らないけど。なんかあぶなっかしいし、一人で置いとけないというか…」


「私はダメな子じゃないよ!アホの子でもないし!それはそれで酷いと思うよ稜子ちゃん!」


「そうは言っても…ねぇ?」


「何が!?何が!?ねえ、直すから教えてよ!」


そこで部屋がノックされて明人の声が聞こえた。


「おーい、風呂あがったぞ」


「あら、空いたみたいね、お風呂」


「え、ああ、うん。そうみたいだね。ってあ!話に夢中で用意してなかった!」


「あ、ほんとだ。じゃあ続きはお風呂で」


「そうだね」


そうして夜は更けていった。



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[一言] そういうカップルになるのか。 そして風呂シーンは男のみ。
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