王
2日連続投稿遅れて申し訳ない。
明日からは元に戻します。
どうかご容赦を…
「「「「王様だーれだ!」」」」
王様ゲームを引き続き行う4名。
「うっし!俺だ!」
「げ、変なこと言わないでよ」
「それ稜子ちゃんが言うの?」
「さっきのは変じゃないから」
「王様ゲームのルールを無視した人が言うセリフじゃないよ」
「まあそれはそれこれはこれ」
「理不尽な」
「じゃあそうだなぁ…2番は、今から外を一周してくる!」
「えーっと2番…俺かぁ。えぇ…マジ?もう夜でクソ寒いんだけど…」
「頑張れ神谷君」
「まああんたなら余裕でしょ」
「しゃあない、行ってくるわ。すぐ戻る」
と言って外に出ていく明人。
ほどなくして外から帰ってくる。
が、ものすごいしかめっ面であった。
「やばい。外超寒い。やばいって」
「お帰りーお疲れ。風吹いてた?」
「突風だったよ!この家一周程度でよかった…」
「町内一周にしとけばよかったか?」
「時間かかりすぎるわよそれ」
「流石にそれは可哀そう」
「勘弁してください…」
「じゃあまあ次ね」
というわけで再びカードを引き直す4名。
「「「「王様だーれだ!」」」」
「あ、今度こそ私!私だから!私王様でーす!」
「…いや、流石に二回も奪う気無いわよ」
「一応?言っとこっかなって思ったの」
先ほど奪われたので念のためである。
「さっきのはあくまでも文化祭の仕返しだから…で、王様どうするの?」
「うーん、じゃあ…一番の人が、次王様になるまで…語尾ににゃぁをつける!」
「うっわ陰湿」
「陰湿って何!?可愛いもんでしょ!?」
「次王様になるまでってのがまた…それで一番誰?」
「…俺だにゃあああ!」
猫語尾があたりに響く。
「あ、啓介君だ」
「うにゃあああああああ!」
「可愛い可愛い、可愛いよ啓介君。さっき私が恥ずかしい思いをした分恥ずかしがってしまえ!」
「にゃああああ!あんまりだにゃああああ!」
「でもなんかある種自然体よね」
「確かにな。普段と大して変わってない」
「普段からにゃあって言ってるの?」
「誤解だにゃあああ!」
「いやでも叫ぶときだいたいこんな感じだからなぁ啓介って」
「叫ばないで言わない方が楽しそう」
「まあ、わざと叫んでる節はあるよねにゃあ。ある意味叫んでれば恥ずかしくないしにゃぁ」
「それでいいのかお前は…」
というわけで影響を残しつつも次である。
「じゃあ次行きましょー!」
「「「「王様だーれだ!」にゃぁ!」」」
「あら、今度は私ね」
「さて、稜子ちゃんは何を命令するのかな」
「そうねぇ…じゃあ3番は下の自販機で私にジュースを奢る」
「ちょ、俺なんだけどにゃあ」
「2連続で当たっちゃったねぇ。ご愁傷様」
「誰のせいだにゃあ!」
「しいて言うなら、運?」
「まあ運だよな」
「よね。ほら早く行って来なさいよ猫」
「ちっ、仕方ないにゃあ…」
というわけで猫語尾のまま1階に降りて、何かを買ってくる啓介。
「ほら、買ってきてやったにゃあ」
「…あの、お汁粉なんだけど」
「指定は無かったにゃあ」
にやりと笑う啓介。
やられた側の稜子は特に表情を崩さず、涼しい顔である。
「これは一本取られちゃったね稜子ちゃん」
「飲むのかそれ」
「…まあ、仕方ないわね。…次に期待しときましょ」
満面の笑みを浮かべる稜子。
「笑顔が怖いにゃあ!?」
そして語尾をそのままに王様ゲームは続く。
「「「「王様だーれだ!」にゃぁ!」」」
「お、俺だ」
「明人か…あんたも大概何言うか分からないから怖いわね…」
「神谷君は何言うのかなぁ」
「うーん…そうだなぁ…1番は逆立ち5秒」
「ちょ、明人、それ…」
カードを見てわなわな震える稜子。
「ん?どうした?」
「私格好、分かる!?ねえ!?」
「あ」
「逆立ちは、駄目だよ。だって稜子ちゃんスカートだもん」
「見えるにゃぁ」
稜子は本日スカートである。
故に逆立ちなんてその状態でしようものなら当然結果はお察しである。
「啓介君その叫び方だとなんかちょっと変態みたいだね」
「王様が回ってこないから仕方ないにゃあ」
「…啓介なんか順応してないか?」
「してないにゃぁ。とにかく王様の命令に従うにゃあ」
猫語尾のまま答える啓介。
順応してないという割には使いこなし始めている。
「クッソ…え、ここでやるのこれ?」
「…最悪俺は壁見とくけど」
「あ、じゃあ私が見とくから、他の2人が外で待ってればいいんじゃないかな」
「…まあ、見られるよりかマシね。それで」
「じゃあ俺らは外で」
「えーにゃぁ」
「とっとと出るぞ」
残念がる啓介を外に引っ張り出す明人。
「というわけで稜子ちゃん、頑張って逆立ちしようね」
「5秒、5秒ね…大丈夫かな、最後逆立ちとかやったのいつだっけ…」
「逆立ちはできるの?」
「まあ一応?」
「へーすごいなぁ。私出来ないんだよね」
「あらそうなの?なんかできると思ってたわ」
「そんなに運動する人間じゃないので」
「よし、じゃあまあ行くわよ。ストップウォッチお願い」
「了解!」
というわけで逆立ちをしてみたわけであるが、割とすぐに体勢を崩して倒れこむ稜子。
「…いやあのさ、5秒きつくない?」
「2秒もたなかったね」
「普通じゃない!?あいつ5秒普通なの!?」
「仕方ないよ神谷君だもん」
「ぐぅ…あいつなら仕方ないけど…」
「頑張れ、私しか見てないからごまかせるよ!」
「3秒耐えたらオッケーにしてほしいわねこれ…」
「とりあえず5回だけやろ5回だけ」
「最悪総合計5秒で行くわ」
「それでいいと思う」
というわけでしばらくしてなんとか総合計5秒分の逆立ちを終えた稜子。
「結局5回やる羽目になったし…」
「お疲れ」
「やってる最中完全に見えてるし!もう!」
「見えてたね、あんなの穿いてるんだね。稜子ちゃんのイメージにしては可愛くて意外だった」
「うっさい。人に見せるもんでもないわよ」
「じゃあ、2人を呼ぼっか」
明人と啓介を部屋へと戻した。
「終わったにゃあ?」
「終わったよ?」
「なんか結構苦戦してるっぽかったけど、大丈夫だったか?
」
「大丈夫に思える!?5秒とか無理だからね!?」
「え、そうなのか?」
「神谷君には分からないと思うけど、逆立ちの5秒はだいぶしんどいと思うよ」
「そ、そうなのか。次から気を付ける」
「この運動馬鹿…次よ!次!」
というわけでさらにまだまだ続く王様ゲームである。
「「「「王様だーれだ!」にゃぁ!」」」
「私です!私がまた王様です!」
「また渚だにゃあ。上乗せは勘弁願うにゃあ」
「安心してよ、まだそう言うやつする気無いから」
「初手で食らってるにゃあ!」
啓介が叫ぶ。
叫びつつも猫語尾は守るあたり割と律儀である。
「じゃあー次はー2番の人が、1番の人に、恋人っぽく愛をささやきながらハグする!」
「ちょ、渚!?」
「なんかまた凄いのが出たな」
「へへへへ、やってくださいね」
「これ、やるにしてもやられるにしてもヤバいわね…えーっと、私3番か。回避ね」
ほっとした顔の稜子。
「…ということは」
「またおれかにゃぁ!?」
「災難だね啓介君」
「しかも口調が抜けてないっていうね。で、どっちがどっちなの?」
「えーっと…俺が2番だな」
「ぎゃああああ!明人に襲われるにゃああ!」
絶叫する啓介。
「襲わねえよ!やめろ!近所に誤解されたらどうするんだ!」
「うわー…」
「じゃあ2番の人、1番の人に、どうぞ」
「マジか…仕方ない、やるか」
「手短に、手短にたのむにゃあ」
というわけで実際にやるために少々席を移動したわけだが。
「…あの、明人、その、顔がマジだにゃぁ…」
「スイッチ入ってるね。文化祭も多分こんな感じだったんだろうね」
「どっかで見たことあると思ったらそれか。まあ確かにこの顔はやばいわね」
明人の表情を見てそんなことを呟く女子2名。
本気顔のイケメンというだけでもだいぶやばい。
「…啓介」
「はひ!?」
「俺、お前のこと…」
「あ、あの、明人?明人さん!?」
「ずっと昔から…親友だと、思ってるんだ。…ここで抱いても、いいか?」
「っっ!―――!」
そのままハグする明人。
滅茶苦茶本気だった。
愛の告白に聞こえなくもない。
「うわー…すっごい」
「これは、これで…なんか、面白いかもしれない」
「…啓介と明人か。考えたこと無かったけど意外とありね」
「確かに。逆も見てみたいかもしれない」
「それだと完全にギャグじゃない?」
「分かんないよ。もしかしたら啓介君に秘められた才能があるかもしれない」
「…これ越えられる気はしないわねぇ」
「ああ、でもうん。それは分かる気がするよ」
そして時間にしてたっぷり数秒間明人に抱き着かれた啓介がようやく動いた。
「…いい加減離れるにゃああああああ!!!!!!!はぁはぁ」
「うお、っぶねえなおい」
啓介が明人を大きく弾き飛ばしてハグから脱出する。
その顔は結構赤い。
「ガチすぎて吹っ飛ばすタイミングを逃したにゃぁ…!やばいにゃぁこいつ…!」
「お疲れ様でした。なかなか面白かったね」
「こいつヤバいにゃぁ。たらしなのは間違いないにゃぁ…!女だったら落ちてたにゃぁ…!」
「あー分かる分かる。やばいわよねこいつ」
「ちょ、ひどくないか。言われたことやっただけだぞ」
「大丈夫、それはある意味で褒められてると思うよ」
「うんうん褒めてる褒めてる」
「ほんとか…?」
「しばらく半径数メートル以内に入るなにゃぁ…!男にときめきたくはないにゃぁ…!」
割と必死の形相でそんなことを言う啓介。
「じゃあとりあえず次行きましょうか」
そんな啓介を華麗にスルーして次のゲームである。
「「「「王様だーれだ!」にゃぁ!」」」
「俺だにゃぁ!」
「王様になっても語尾が取れてないにゃぁね啓介君」
「あ、もういいにゃぁ!このまま行くにゃぁ!」
「開き直ってるし」
「さっきのお返しにゃぁ!3番と1番は次どっちかが王様になるまで恋人つなぎするにゃぁ!」
猫語尾のまま命令を下す啓介。
「あ、私一番だ」
「…えーっと、俺が3番だな」
「あ、じゃあ、席移動した方がいいかもしれないね」
「そ、そうだな」
というわけで席を移動した明人。
渚の隣である。
「ほらーさっさと繋ぐにゃぁ!」
「どうしたの神谷君。手繋がないと次行けないよ?」
「そう…そうだな」
と言いつつも、手が動かない明人。
そんな明人を見て稜子が口元を歪ませながら渚に呟いた。
「渚、察してあげて、慣れてないのよこいつそういうの」
「え!?慣れてないの!?なんで!?女の子たぶらかしてるじゃんいっつも!」
「だからたぶらかしてないって!…いや、その、そういうのを覚えたときには女子に寄らないようにし始めた後だったからやる機会が無かったっていうか…」
「ふんふん成程ね。じゃあ神谷君のタイミングでつないでくれればいいよ」
「え!?」
「おーっと何気に言うわねえ渚」
「こういうのは慣れが大事なんだよ。ほら、頑張って神谷君」
「お、おう」
というわけでものすごいぎこちない感じで渚の手を握る明人。
「…こ、これでいい?」
「んーこうかな?」
普通の握手スタイルだったので、恋人繋ぎに切り替える渚。
それに明人が思いっきり反応した。
「っ!」
「お、めっちゃ反応してるにゃぁ」
「うるせえ!慣れてないんだってほんとに!」
「モテすぎて逆に疎遠になるってなんか腹立つにゃぁ」
「分かる分かる、もはや嫌味よね」
「というわけで、もうちょっと頑張ろうね。神谷君」
「あ、ああ」
「じゃあ次行くにゃああああ!」
啓介の宣言の下、さらに王様ゲームが続行する。
「「「「王様だーれだ!」にゃぁ!」」」
「あら、また私ね」
「う、なんかまた直接攻撃が来そうだにゃぁ…」
「まさしく女王様だからね、稜子ちゃんの場合」
「誰が女王様よ誰が」
「稜子ちゃんがだよ稜子ちゃんが」
「王の実権を奪い取るさまはまぎれもなく女王のそれだったにゃぁ」
「というわけで、女王様命令をどうぞ」
「…そうねぇ。…じゃあ、2番、腕立て50」
「え、あの、私なんだけど」
「50…結構きつそうだにゃぁ」
「この恋人の繋ぎはどうすればいいの?片手?まさか片手?」
「片手50は無理でしょ?まあやってる間はやらなくていいわよ」
「分かった…!頑張る!」
というわけで腕立てであるが、回数が回数なのでそこそこキツイ。
渚の口からも声が漏れる。
「ん…あぁっ…」
「…なんかすごいいけないことさせてる気になってきたわ」
「目を閉じるとやばいにゃぁ」
「やめ…!うぁ…て!」
「うんうん、いいにゃぁ。もっとやるにゃぁ」
「お前は少しは自重しろ」
「やめ…ん…てよぉ!」
「もっと恥ずかしがるがいいにゃぁ」
「おかしいわね…命令したはずの私よりこいつのが楽しんでる気がするわ」
「ただの変態だろ」
「無理ぃ…!もう…んぅ…無理だからぁん…!」
「うーん、エロいにゃぁ」
「うっわストレート」
「少しは隠せ」
というわけで想定外の羞恥プレイを強要されつつも、なんとかやることを完遂した渚。
「なんか色々持ってかれた気がする…」
「ごちそうさまだったにゃぁ」
「啓介君がこんなにひどい人だったなんて思わなかったよ」
「いつまでも猫やってるからイーブンにゃぁ」
「啓介君、猫やめていいにゃぁよ?」
「こういう感じで使えるからやめないにゃぁ」
どや顔でそういう啓介。
「あおられてる感じがしてむかつくぅ!」
「というかもはや猫が意味をなしてないわよねこれ」
「完全に取り込まれてるな」
「次!次!」
さらに王様ゲームは続く。
「「「「王様だーれだ!」にゃぁ!」」」
「…あ、俺だな」
「お、明人にゃあ」
「…じゃあ、うーん、そうだなぁ…」
悩みだす明人。
「さて、今度は何を言うのかな」
「ろくでもないこと言わないでよ?」
「うーん…何か、何か面白い奴…」
「なんかヤバいにおいがするんだけど」
「神谷君、普通のでいいんだよ?普通の」
「そうか?じゃあ普通ので。1番が2番にキスする」
サラッと言ってのける明人。
「うぇ!?神谷君!?」
「え?普通のって言うから…」
「それは全然普通じゃないよ!」
「あんたね!?それ、それ、やっちゃいけないやつだから!?」
「え?え?でもなんかよくやってるの聞く気が…」
「そんなのやってるの、不純異性交遊してる人たちくらいだよ!」
「あああぁぁ…やっぱり明人が悩むとろくなことが…」
頭を抱える稜子。
でも結局命令なのでやらざる得ない。
「それで…結局誰だにゃぁ?」
「えーっと…私1番」
「え?私2番じゃないから…ということは…あ」
「え、稜子?」
「ちょ、え、啓介にするの!?」
「え…え、え」
「ま、まあそう、なるな」
「なんて命令するのよ!?」
「いや良かれと思ってだな!?」
「どこがいいのよ!?」
「…でも、王様の命令は絶対、なんだろ」
「クッソ!ああああ!」
「えっと、その。頼むわ」
「あんたも!なんでここで猫取れてんのよ!やりづらいでしょ!」
「んなこと言ったってなあ!」
「…く、仕方ない。いい?やるわよ!」
稜子が啓介の隣に座りなおす。
そのまま啓介の顔を横に向かせると、一瞬目を合わせた後、唇を奪った。
無音のまま数秒が停止する。
「え、口…?」
「あっ!?」
渚の呟きが部屋に響く。
その声で稜子がハッとした様子で唇を離した。
「え?こういうのって、手の甲とかほっぺとか、そういうのじゃないの?え?口?」
「お、俺もその辺のつもりだったんだけど…」
「っ―――――!先に言ってよぉ!!!」
顔を物凄く赤くして稜子が叫ぶ。
啓介も啓介で顔が真っ赤であった。




