理不尽
予約投稿ミスです。
失礼しました。
闇鍋後。
2階に戻った4名はトランプを引っ張り出していた。
「あ、そういえば、みんなは何時に帰るの?」
「あ、そうだな。俺らはともかく、啓介そろそろやばくないか」
「確かに…電車そろそろ最終だな…」
「そう、確か電車そろそろだなって思ったんだけど、いつもは、クリスマス会はどれくらいの時間に終わってるの?」
「次の日の予定によるかな…あとは場所?」
「泊まってく日もあるっちゃあるわよね」
「あ、泊まったりするんだね」
「そうしないと誰かが必ず8時過ぎくらいには家出ないといけなくなるからなぁ」
「そっかぁ。今日はどうするの?」
「んー…俺は特に予定とか無いけど、渚の家どうなのその辺?」
「うちは今日も明日もお客さんの予定は無いから、多分大丈夫だと思う。咲希姉に聞こっかな」
「渚がいいなら泊まってきてえな。今から帰るのはそれはそれでなぁ、だるいよな」
「ならちょっと聞いてくるね」
というわけで電話をかけることにした渚。
かける先は当然咲希である。
「そういえば咲希姉どこ行ったんだろう。聞いてなかったな」
そもそも美船に呼ばれたのでちょっと出てくるくらいの話しか聞いてない。
「もしもし」
「あ、咲希姉」
「渚、どうした?」
「あのさ、今家でクリスマス会してるでしょ。それで、もし咲希姉がいいなら、明日お客さんも来ないし、みんなを泊めたいと思ってるんだけど、いいかな?」
「んー…お客いないならまあ。家事周りはなんとかするっしょ?」
「大丈夫、できるから」
「じゃあ、いいよ別に」
「そういえば、咲希姉って何時くらいに帰るの?」
「えーあー…10時前には帰るつもりだったんだけど…」
咲希の声の隣から小さく声が混ざる。
美船だろう。
「えーまだ遊ぶー!」
「って感じなんだよね」
「ふんふんふん、成程ね。お風呂のお湯とかどうする?入れとく?」
「あー…何時になるか分からないし、いいよ。最悪シャワーで済ます」
「ん、分かった。気を付けて帰ってきてね」
「そっちもな。じゃあまた帰る時一応メッセージで連絡は入れるわ」
「あい、了解」
というわけで聞くこと聞いて戻る渚。
「お待たせ、大丈夫そう」
「お?マジで?やった、寒い中一人で帰らなくて済む!」
「じゃあ、このままゲーム再開ということで」
「じゃあ、次負けたやつ罰ゲーム有にしようぜ!」
「どんな罰ゲームにするの?」
「…負けたやつ見てから決める!」
「それ、あんたが負けて首絞めなきゃいいけど?」
「大丈夫だ、今のとこ最下位は無いから」
「それはフラグだよ」
「フラグはへし折るものだ!」
ということでトランプ再び。
今回は大富豪である。
ローカルルールモリモリである。
「む…なんでこういう時に限って、革命起きちゃうかなぁ…」
「ふー手札クソ雑魚だったから助かった。はい3、2枚」
「んーうー出せない…!」
「じゃあ…8切って上がり!」
「えーっと、うん、渚負けね」
「なんでー!途中まで私が強かったじゃん!見てよこの手札!1と2ばっかなんだよ!」
「なんかごめん。途中で革命起こして」
「うわー予想外過ぎるよーえー啓介君にフラグを押し付けたかったのになぁ…」
「突き返させてもらったぜ。ということで渚罰ゲームな!」
「はい、罰ゲームです。何やればいいですかぁ」
「…渚の罰ゲームか。何かあるか?」
「うーん…なんかこうどうせだし恥ずかしい感じのがいいよな」
「いやいや、なんで私が恥ずかしがらなきゃいけないの。もっとあるでしょ他に。闇鍋みたいなさ、ああいう感じの罰ゲーム」
「なんかそういうのだと即効すぎて面白さ持続しないじゃんね」
「私の罰ゲーム持続型なの!?」
「…ああ、なら丁度いいのがあるわ」
「え?」
何やら持っていた荷物をごそごそする稜子。
「じゃーん。これなーんだ」
「メイド服?」
「そうそう。正解。というわけでこれ着てくれる?」
「成程。そういう系ですか。じゃあちょっと着てくるから待ってて」
「あら、案外嫌がらないのね」
「ほら、嫌がってても進まないでしょこういうの」
「嫌がるの見てるのも楽しいけどね」
「ああーじゃあ着るのいやだなぁー」
「棒読みすぎるわよ。はいはい行ってきて」
「じゃあ行ってきまーす」
というわけで渚の自室。
着替えに来た。
「んーメイド服か…前に一回着たことあるんだよな…懐かしい」
数年前の記憶を呼び起こす渚。
その時もメイド服を着ていた。
「ま、男の時だったけど。それに比べたら普通だよね」
まあ記憶の中の自分はまだ男だったのだが。
別にそういう趣味ではなく、文化祭の出し物である。
とりあえずそんなこと思いながら着替えて鏡の前に立つ。
「え、かわっ…いや自分なのは分かってるんだけど。似合うなあ」
自画自賛を発動させながら、誰も見ていないことをいいことに鏡の前でポーズをとりだす渚。
「へ、へへへ、へへ」
変な笑い声が漏れた。
これでは美少女形無しである。
「写真一枚撮っとこ」
自撮りも済ませる。
記念である。
「うんうん、なんとなく満足。行こっかな」
というわけで着替えを終えて戻る渚。
着替えてない時間もたっぷりあった気がするが気にしてはいけない。
「お待たせー」
「おかえり、おお、似合うわね」
「おー!めっちゃ似合うじゃん!」
「なんだろう、意外と褒められると照れるね」
「…」
「おい、明人もなんか言えよ」
「ああうん、可愛いと、思う」
「う、その、可愛いって言われるとだいぶ照れるかもしれない」
「あんたまたたぶらかして!」
「してないしてない!今のはちょっと言葉に詰まっただけだろ!?」
「そういうとこ!」
「でもあれだね。やっぱり似合うって言われるよりも、可愛いって言われる方が照れるね」
「流石だなぁ天然たらし」
「たらしじゃないってば!」
「いやいやそれは嘘だと思うよ。私から見ても神谷君は十分たらしだと思う」
「ちょ、渚まで…!」
「…いや、そこで私に助け船求めるのは無理あるでしょ。たぶらかされた側なんだけど」
「う…四面楚歌」
「ふう、じゃあ私の罰ゲームこれで終わりだね。着替えてきていい?」
「え?続行よ?」
「え?え?」
「持続型なんでしょ?今日はあなたそれよ?」
「えー!?聞いてないよ!」
「言ってないもん」
「流石に一人だけメイド服って言うのは恥ずかしいかもしれないね」
そう言いながら座りなおす渚。
「…ってそこは普通に受け入れるのかよ」
「え、別に受け入れたわけじゃ無いよ?罰ゲームだからほら、仕方ないじゃん」
「またまた、まんざらでもない癖に」
「ち、違うもん!恥ずかしいもん!着替えていいなら着替えるし!」
「ダメです。この後もそのままメイドです」
「ううう…じゃあもう一戦」
「んー次はどうする?もう一回大富豪するか?」
「まあそれでもいいし、別のゲームでもいいけど」
「あ、私思いついたよ」
「ん、渚何か案あるのか?」
「王様ゲーム!」
「王様ゲーム…ああ、あれか」
「そう、罰ゲームは平等じゃないとね」
「…へぇ、面白そうじゃない」
「どうかな?」
「私は賛成ね。面白そうだし…」
「まあ俺は楽しけりゃいいぞ」
「他に何かやるものあるわけでもないし、それでいいぞ」
「じゃあ決まりで。えーっと、どうやって王様決めよっかな」
「トランプの1,2,3,ジョーカーでよくないか?それなら」
「確かにそれならすぐ用意できるね」
「つまりジョーカーが王様ね。分かったわ」
「じゃあそういうことで2回戦、行きましょー」
というわけで突然の王様ゲーム勃発である。
「「「「王様だーれだ!」」」」
掛け声とともに一斉にトランプを引く。
ジョーカーは渚の手の中。
渚が王様である。
「はいはい!私!私王様!じゃあー…」
「え?あなたメイドでしょ?」
「え?」
「え?メイドじゃない。王様じゃないでしょ?」
突然とんでもないことを言われる渚。
「ほ、ほら、メイドだけど王様だよ?」
「それじゃ反逆じゃない。やっぱり王様じゃないわね」
「何それ理不尽じゃない。なんか今日稜子ちゃん当たり強くない?」
「そう?え、でもどう見てもメイドじゃないねえ?」
「クク…そうだな」
「え、え?」
笑いがこぼれている啓介と、状況が理解できてない明人。
「というわけで王様は私が引き継ぐから、座っていいわよ」
「理不尽だよ!ねえねえ理不尽じゃない!?」
「…なぎさぁ?文化祭、覚えてる?」
「…あ」
稜子がほほ笑む。
完全に暗黒微笑である。
「忘れたとは…言わせないわよ?」
「なんでメイド服あるんだろうって思ってたけど、そういうことだったんだね、稜子ちゃん…!」
「そ、そういうこと。ほんとは着せて終わる気だったんだけど…なんかあんまり恥ずかしがってもいなかったし?もう少しいじめたいなって?」
「それはひどくない?ねえねえ。でも仕方ないなあ。そういうことなら、今回は王様をあげます」
ひどいと言いながらも王様の権利を渡す渚。
「まあまあ、そんなひっどい命令するわけじゃないから安心しなさいよ」
「酷い命令だったら泣くからね!」
「そこ拒否じゃないのかよっ」
「泣くも拒否も一緒みたいなもんでしょ!」
「えぇ…?」
そこまで話したところで、稜子が思いっきり命令を宣言した。
「まあまあ、私にしたこと返すだけよ。ジョーカー持った人、メイドのテンプレセリフを全力で言いなさい」
「えええええ!?メイドのテンプレセリフって何?どういうやつ?」
「決まってるじゃない。お帰りなさいませご主人様、でしょ」
「そ、それかぁ…じゃあ頑張るから、いくよ?」
「あ、普通に言っても駄目だからね」
「が、頑張ります」
「クク…ようやるぜ」
「笑わないでよ啓介君。私だってこれは流石に恥ずかしいんだよ」
「稜子も理不尽すぎるし…クク…アハハ」
「え、どういうこと?」
一人だけきょろきょろしている明人。
なんでこうなってるのか理解できてないようである。
「まあまあ、観衆は黙って聞いてればいいのよ。さあ、渚、上目遣いで、こびこびで、ほら」
さりげなく難易度をあげる稜子。
「注文ふえてるし!行くからね!ちゃんと見ててよ!」
というわけで命令に従う渚。
とは言え滅茶苦茶恥ずかしい。
服は良くてもこれはダメである。
「お、おかっ…うぅ…」
「んー?よく聞こえないわね…最初から」
「お、おかえり…なさい、ませ。ご、ご、うぅん…じんさまぁ…」
「あら、途中が聞こえなかったわ。もう一回」
「ううぅ…お、お帰りなさいませ、ご、ご、ご主人様!」
「あははは!」
「…どう?まあいい?」
「いや俺に聞くなよ」
「もうやりたくないです…!」
「…それ言われるともう一回言わせたくなるわね…」
「稜子お前そんなにSだったか?」
「いやなんか面白くて」
Sっ気を全力で発揮した稜子に結局数回やり直しをさせられた渚。
渚の精神力が削れていった。
「お帰りなさいませ!ご主人様!」
「…よし、まあいいでしょ」
「評価厳しっ」
「渚…?顔、その、大丈夫か?真っ赤だぞ…?」
「大丈夫じゃないですが…?どうだった?私の全力は…?頑張ったんだよ、これでも」
「その…見てるこっちが恥ずかしくなってきた」
「それ一番しんどい奴じゃん」
「いや、渚いいね!最高!ハハハ!」
「ねえ啓介君!今回は譲ったけど次王様になったら絶対許さないからね!」
「おう!覚悟しとくわ!ハハハハ!」
「ううぅ…第3回戦!」
そして王様ゲームはまだ続く…




