親フラもどき
民宿「しろすな」2階。
咲希が自室でオンゲ中であった。
「はい、じゃあ装備強化やりまーす」
「え、マジでやるの咲希ちゃん」
「だってもう火力頭打ちなんだもん。やらないと」
「それ溶けません?装備」
「えーっと確率10%ですね」
「無理げーでは?素直に今の装備売って購入費用に回した方が…」
「まあ…一応予備あるからまあ…というわけでいきまーす。…はい駄目」
「ですよね。あー勿体ない」
「ああああ、やらなきゃよかった」
「だから言ったのに」
「でもやりたかった」
「砕けた装備は供養しときますね」
「あいー…あーだっる、また装備集め直しじゃん」
「え、ちなみにそれどこで落ちる奴です?手伝えるか知りませんけど一緒に行きますか?」
「んーまあ一緒に行くなら行きます?どうせ元の確率低すぎて一人で狩りに行く気もないし」
「あーなら俺も行くー」
「え、3人。馬2人までしか乗れんぞ」
「俺は自分ので行くからいいって。そっちの馬なし男乗せてやってくれ」
「馬なし言うなよ。お金ないんだよお金」
「はいはいじゃあ雅彦さん乗ってってください」
「じゃ、お邪魔しまーす」
「あいー」
そんな感じで目的地周辺まで移動する3名。
「あ、こっから歩きね。馬入れんしこっから」
「え、そうなん?」
「厳密には入れるけどクッソ遅くなるから歩いた方がまし」
「ならしゃあねえ歩くか」
「ちなみにどこなんです?」
「え、あああそこ。下の方」
「…遠くない?」
「まあ10分もすりゃ着く着く」
というわけで実際に目的地に到着。
咲希には見慣れた光景だが、2名には未知の領域である。
「じゃーとりあえずガーって回ってくんで、撃ちもらし頼んます」
「はーい」
「あの、敵、固くね!?」
「あらもうやってるし。ちょっと待って加勢するから」
「いや無理無理無理死ぬ死ぬ死ぬ。いやハメ食らってる助けて!」
「ちょっと待てって言ってんのになんで奥行くかなぁ!?雅彦さんちょっとあれ助けてから狩り回りしますね」
「はい。とりあえず火力足りなさそうなんでランポの回復回りますね」
「お願いしまーす。回復スキル無いんで」
「はーい任されました。今助けるから待ってろー」
それから数分後。
無事に殲滅が終わり、ランポが救出されていた。
「あ゛ー死ぬかと思った」
「死んでたことない?」
「デス表示出ましたよね」
「デスペナ受けなかったからノーカンノーカン」
「とりあえず、でかい敵見かけたら突っ込むのなんとかして」
「いや倒したら美味しそうだなと」
「倒されてんじゃん」
「いずれリベンジするから」
「今死ぬなって話だから」
その時咲希の部屋をノックする音がした。
当然渚である。
「咲希姉!お風呂出たけど入らないのー?」
再びノックをする。
いつもなら気づくのだろうが、今日はヘッドセットをしっかりハメているせいで咲希に届いていないようである。
「ねえ起きてるー?お風呂、出たけど、入らないのー?」
もう一度声をかける渚。
でもやっぱり気が付かない咲希。
「ねえ、入っていいー?起きてるー?」
「あれ、今誰か女の子の声しなかった?」
「え?咲希さんなんか言いました?」
「え、言ってないですけど?え、なんか聞こえました?」
「いや俺は聞こえてないですけど」
「いや絶対誰か女の子喋ったって今。多分咲希さんじゃない誰かがしゃべったよ絶対」
「いや何それ怖い怖い」
「ねえ咲希姉、ってゲームやってるし」
「ほらー!今のは流石に聞こえたでしょ!」
「ああうん、聞こえた。あの、咲希さん」
「えなんでしょ」
「多分、呼ばれてますよ」
「え」
そこで咲希の肩が叩かれた。
部屋に入ってきていた渚である。
「あ、悪い」
「聞こえてるー?お風呂、出たけど」
「今は聞こえてる。おっけ、そろそろ行くわ」
「お?い?誰ぞ?え?咲希姉呼びってことは妹さんいるの?」
「ああうん。一応」
「ねえ、咲希姉、誰かとやってんの?」
「やってる。2名ほど」
「ああ、そうなんだ」
「え、咲希ちゃん妹さんいたんだ?ほえー」
「いや何その反応」
「え、何々、雅彦お前妹さんとは付き合いあるん?」
「え、まあ何回かは会ってるけども」
「いつの間にお前そんなに女に会うようになったんだ?」
「いや仕事場だから!仕事行ったら会うってだけだからな!?」
「ふん、いいよな、仕事だろうが何だろうが付き合いあって。万年野郎に囲まれて出会い1ミリもこちとら無いってのによ」
「知らんがな。自分で好きでそういう仕事場選んでんだろ」
「うるせー!あそこまで女子いないとか聞いてねえ!」
発狂し始めるランポ。
出会いの無い職場のようである。
「え、咲希ちゃん咲希ちゃん」
「え、何」
「咲希ちゃん同い年じゃん。妹さんいくつなん?」
「え…なんか歳聞かれてるけど言っていいのかこれ」
一応渚に確認を取る咲希。
「え、何話してるの私のこと?年齢くらいなら別にいいけど」
「えーっと…確か16」
「JKじゃん。えー!?お前JKと交流あんの!?いいのぉ!?」
「何がいいんだよ!普通に喋るくらいの付き合いだってば!」
「はぁー!いいよないいよな!JKと仲良くなっといてあわよくばとかいけるもんな!はぁー!」
JKに過剰反応するランポ。
付加価値を大いに見出しているようである。
「お前なぁ!咲希さん聞いてんだぞ!」
「うん、まあ、はい」
咲希がドン引きした。
流石に引いた。
「引かれてるぞ」
「はっやべえ興奮してた」
「その発言のがやばいぞお前」
「まあJKもといは置いといて」
「今の流れでよく置いとけると思ったな?」
「いいの一旦置いとけ。へーでも妹さんいたんだなーなんか猶更俺らとオンゲしてるのが変な感じしてきた」
「いや別にやるから。オンゲくらい普通にやるから。関係ないから」
「え、妹ちゃんやったりしないの?これ」
「今んとこやってないね」
「え、じゃあ他のゲームは?なんかやってないの?」
「え…なんかやってるゲーム聞かれてるけど」
再び渚に確認を取る咲希。
なんか滅茶苦茶食いつかれたのでどこまで話すものかとなっている。
「いったい何の話してるの」
「なんか歳教えたら食いつかれてるぞ」
「え、相手男の人?」
「うん」
「知ってる人?知らない人?」
「雅彦さんの友達」
「うううううんん…ゲームくらいならいいけど」
「今何やってる?あれだけ?」
「うん、あれだけ」
「じゃあそれだけ教えとこう」
「あんまり個人情報言っちゃだめだよ。私も名前呼んだのは悪かったと思ってるけどさ」
「だから本人に確認とってんでしょうが」
「ほどほどにね」
「別に基本的にもらしゃしませんよ…えっとね、妹やってんのね、特殊部隊物のFPS」
そうして実際に渚がやっているゲームを教える咲希。
その内容はガンシューティング。
しかも結構コアなやつである。
「え?」
「え、だからFPS。結構うまいで」
「え、FPS?え、妹さんだよね?」
「おう。妹ですが」
「FPS?え、しかも特殊部隊物って多分あれだよね」
「うん多分それ」
「え、マジ?」
「え、そんなにヤバいのそれ」
微妙に話についてこれていない雅彦が疑問符を浮かべる。
「なんかガチゲーマーやってるイメージしかないんだけど」
「へぇ…コアゲーやってるんだなぁ…」
「FPS…FPSかぁ…」
「うん、多分それしか今やってないし、今後もそれくらいしかやる気無いんじゃないかね」
「うぐ…俺FPS全然ダメなんだけど…」
「そこまでして遊びたいんかお前は」
思わず雅彦が突っ込んだ。
「JKと遊ぶチャンスやぞ!飛びつかん方がどうかしとるだろ!」
「お前の頭がどうかしてるよ」
「うがああああ!」
虚しい叫びが音声通話にこだました。




