ネトゲ
「さーってと、風呂入り終わったし寝る前に軽くオンやるか」
既に時刻はそろそろ10時過ぎ。
だがそれでもゲームしたい欲に負けてゲームを始めようとする咲希。
まあ日課である。
そもそも日中だとお客がいたりするので微妙に集中しづらいのである。
結果として気兼ねなくやれるという意味ではこの一日のやることが大体終わって寝るだけのこの時間しかないのである。
「さーって、とりあえず入ってログボ確認するべか」
とりあえず日課のログボ確認しつつ、今インしているフレンドがいるか確認する咲希。
そうすると誰かが入っていることが確認できた。
「あれ、誰かいる?雅彦兄さんではないな。あー昼のあの人かな。えーっと場所は…お、近い。まー行ってみますか」
特に理由は無いが、とりあえず昼間フレンドになったネットネーム「ランポ」の元に向かう。
本当に理由はない。
なんかいたから行ってみるだけである。
「お、いたいた」
キャラクターを発見してとりあえず接近する。
向こうも気が付いたのかこちらを向いて動きを止める。
「まあなんかとりあえず跳ねるの基本まであるよね」
何故か相手の目の前でぴょんぴょんする咲希。
それを見た相手もぴょんぴょんする。
挨拶みたいなもんである。
そんなことしてたら、通話アプリの方に連絡が入った。
『通話しない?』
『行く』
ということで通話の方に参戦する咲希。
既に「ランポ」はそこにいた。
「あ、咲希ちゃんおっすおっす」
「どもーランポさん。この時間やってるんですね」
「あー今日は時間あったからね。雅彦もそのうち来るんじゃないか」
「へー。そうなんですね。とりあえず2人でやってますか」
「そうやね。あーでも俺咲希ちゃんの行くとことか着いてけねえよ?」
「別にそんなヤバいとこ行ったりしませんよ。そっちのお供する感じで」
「ああ、ならいっか。頼むわ。レベリングで既に髪の毛禿げそうなんだよね。レベル上がりにくすぎぃ!」
「あ、それならいい場所ありますけど」
「お、マジ?手伝ってくれる?」
「いいですけど。連れてってあげましょうか?」
「おサンキュー」
そんな感じで2人でゲームに勤しむ。
咲希が先導する形でプレイを進める。
「それにしても」
「なんでしょ」
「咲希ちゃん手慣れてんね」
「散々やってますんで。あ、あと最近は雅彦さんとやってたからちょっと思い出したのはありますけど」
実際雅彦と遊ぶ時も咲希が先導する形になることが多いので似たようなもんである。
「めっちゃ雅彦と遊んでんのな?」
「まあ言うほどですけど。やる日に数時間くらい一緒に遊んだりする程度で」
「そうなんだな。嫌でもほんとに今日の昼びっくりしたんだって。友達連れてくるって話になってさ。じゃあ今から呼んでくるって言うから結構仲良さそうなの想像してるじゃん?でさ、あいつ今まで女周辺にいたこと無いわけよ」
「そうだったみたいですね」
「そうそう。でさ、だからまあ男友達だろうと思って話してたんだよね。結構やりこんでる言ってたから猶更なんかそんな感じだったんだけど。そしたらいきなり女子の声するじゃん?もう物凄い驚いたわけよ」
「昼間も言ったけど同い年だからね?」
「まーなんか女性だとなんか固い感じするから女子ってな」
「なんだそれ」
突っ込みつつ、片手間でモンスターを一掃していく咲希。
「あ、とりま最高効率求めるならついてくるだけでいいですんで」
「え、マジ?そんな効率化されてんのここ?」
「数万体は狩りつくしたので。そろそろ絶滅するんじゃないかなここの敵」
「狩りすぎでしょ。やば」
「この狩場に関してはもはやマスターなんでね」
「お、どやっていくぅ」
「どやぁじゃないが」
「今のはその流れでしょ」
ゲーム内会話を挟みながら、狩場を駆け巡る2名。
若干「ランポ」が置いてけぼりである。
「え、てか彼女ってわけじゃ無いんだよね?」
「無いです。いや別に雅彦さん嫌いなわけじゃ無いですけど、そもそもそういう意思が今んとこ無いですね」
「あ、そうなんだ。結構そういう仲くらいまでいってんのかと」
「ご安心を。いってません。というか仮にいっててもはぐらかしませんかねこの感じ」
「あれそう?」
「まあ私がもしそうだったらそうしますかね。本人の口から聞いてと言いますね間違いなく。他の人は知りませんけど」
「そうなんだ。ああでも違うんだな」
「違いますね。少なくとも今のとこはそういうんじゃないですし。どっちかって言うとゲーム友達?」
「お?ということは今後ある?」
「まー…それは本人が聞いてきたら答えますかね」
「えー気になる」
「個人情報です」
「個人なのかこの情報は?」
「じゃあパーソナル情報です」
「…一緒じゃね?」
「あれそうか」
「英語弱いの?」
「超嫌いです」
英語は嫌いな咲希である。
「成程。なら仕方ないな」
「えーじゃあ、まあ、なんでしょ。とりあえず雅彦さん本人が聞かないと駄目ってことで」
「じゃあ雅彦来たら聞いてみよ」
「あ、ランポさん。それ寄ると死にます下がって」
「え?」
「いいから下がってって!死ぬよ!」
「あ、うえぇ!?」
「ちょ、はよ下がれ!突っ立ってんじゃねえ!」
「はいぃ!」
ゲーム外のこと話してたら中が大変なことになってることに気づいてなかった「ランポ」であった。




