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看板娘始めました  作者: 暗根
本編
56/177

準備

予約投稿ミスです。

大変お待たせしました。

「じゃあ、とりあえずカニの下準備するか」


「うん」


民宿「しろすな」1階キッチン。

やっとの思いで運び込んだカニを今からさばくところである。

担当メインは明人であるが。


「そういや渚は結局できるようになったのか?」


「残念ながらあれから一回もやってないからできないかな」


「そうか。じゃあ今日も一緒にやってくか」


「うん、お願いします」


ということで実際にカニを剥いていくことにした2名。


「あ、前回もなんかこのタイミングで聞いた気がしたけど、今日は何作るんだ?」


「この間作ったもの作るつもりだよ」


「じゃあ、剥き方とかはこの前と同じでいいか。じゃ、渚こっちのカニ担当で」


「分かった」


「とりあえずゆっくりでいいから。ペース間に合わなさそうだったら手伝うから安心してやってくれ」


「何から何までありがとう。頑張るね」


「おう。じゃあしばらくカニ剥きだな!」


というわけでしばらく黙々とカニを解体していく2人であった。


□□□□□□


「全然、切れない。神谷君なんか、裏技とかあるの?」


「裏技ってか俺の場合割と力技っていうか…」


そう言いながらカニの解体を進める明人。

手慣れているだけあってサクサク進む。


「私も力技でやってるのに、なんでそんなに剥き方に差が出るんだろう」


「まあその辺は慣れだって。最初は俺も似たようなもんだったし。ああ、でもあえて言うなら、なんというかハサミこうじゃなくてこう入れる感じ」


手で、ジェスチャーする明人。

それを見て頷く渚。


「ふんふん」


「まあ結局力で剥くことにはなるけど、俺はそっちのが綺麗に剥ける気がする」


「成程、こうかな」


実際に試してみる渚。


「ああ、そうそう、そんな感じ。で、そのままこう」


さらっと渚の手をつかんで誘導する明人。


「深すぎじゃない?」


「大丈夫、なんとかなる」


「私初めてなんだけど大丈夫かな」


「大丈夫大丈夫。最悪失敗したら、他の料理の方に回しちゃえばいいし」


「うーん、じゃいっかぁ」


「とりあえず思い切りよく」


「分かった」


言われた通りにやったら綺麗にできた。

カニ剥きの男流石である。


□□□□□□


「はぁ、できたぁ」


「お疲れ。いや、2回目の割には結構手慣れたんじゃないか?」


ようやく料理を終えて、一息つく2人。

時間的にはまだ余裕だが、それでも1人ではやはり厳しかったのが容易に想像つく。


「そう言ってもらえると嬉しいかな。でもやっぱり神谷君がいないと全然分からないね」


「やってるとそのうち体に染み込むぜ」


「神谷君の体はスープの具かなんかなの?」


「染み込み具合で言えば、おでんの大根みたいな状態」


「なんかいまいち分かんない例えだね」


「スープの具もよく分からんぞ」


お互いによく分からない例えを繰り出す。


「適当に言っただけだから。気にしたら負け」


「そうか?…うーん、おでんの大根の染み方的には美味い例えだと思ったんだがな」


悩み顔になる明人。

上手に例えたつもりだったようである。


「私おでん嫌いだから」


「あ、そういう理由。それは知らなかった。すまない」


おでん嫌い故であった。

この方向性から理解されないのは想定外である。


「分かればいいんです。分かれば」


「へー、渚意外と好き嫌いあるんだな」


「じゃなきゃ、料理当番なんてしてないよ」


「あ、もしかして料理当番やってる理由って…」


「私が嫌いなものを食べないため」


「やっぱりかよ!」


「いいじゃんだって美味しい物食べたいんだもん!」


渚が料理当番になっている理由は、当然咲希と渚のうち、料理がまともにできるのが渚しかいないというのが大きいのだが、もう一つの理由がこれである。

嫌いなものを食べたくないなら、自分が作ればいいじゃないの精神である。


「え、ちなみに渚何が好きなの?」


「ワンプレート料理」


「幅広いな」


「でも実際、オムライスでしょ、カレーライスでしょ、ドリアでしょ、親子丼でしょ、かつ丼でしょ、とりあえず一皿に収まるものが好き」


「海鮮丼とかは?」


「嫌い」


「例外思いっきりあるじゃないか」


「だって嫌いなものいっぱいあるんだもん」


ワンプレートは好きだが、すべて好きとは言ってない。


「逆に何が嫌いなんだ?」


「魚でしょ、貝でしょ、野菜でしょ、きのこでしょ、あと煮つけ」


物凄い大雑把な回答が返ってくる。

が、あながち間違いは言っていない。

ほんとに嫌いである。


「こっちはもっと幅広いな!というか魚介類駄目なのか?ここに住んでるのに」


「別に住みたくて住んでるわけじゃ無いし」


「あれ、そうなのか。てっきり帰ってきたからここ好きなのかと思ってた」


「嫌いじゃないけど、別に海の食べ物が好きなわけじゃ無い」


名前渚なのに詐欺である。

まあ本人も気づかないうちにここに居た上に、この名前だったので文句言われる筋合いは無いが。


「…スーパー、生命線なのか」


「うん」


「苦労してんだな…」


「これでも栄養面は一応気にしてるんだよ」


「魚駄目、野菜駄目…えーっとどうやって?」


「味付けで」


「あ、そう来るのか」


「それしかないよね」


「まあ、直接が駄目ならそれしかないよなそりゃ。突っ込みどころしかない気がするけど」


「私に突っ込んだらキリがないと思うよ?」


「…ああ、まあ確かに。昔からそうだったな」


遠い目になる明人。

何か渚との古い記憶を思い出しているのだろう。

どうやら昔から突っ込みどころ多数だったようである。


「その言われ方はなんか腹立つ」


「ごめんて。悪気があったわけじゃ無いから」


「ああはいはい。分かった分かった。お風呂入ってきなよ。学校から帰ってきたままなんでしょ?」


「凄いスルーされた気がする。まあ、そうなんだけど。時間的に直接来たからな」


明人は学校帰り直で「しろすな」まで来ている。

なので当然体は汚れている。

まあ手洗いはちゃんとしたので料理に支障は無いが。


「料理も作って汗もかいたと思うし、私今からご飯作るからその間に入ってくるといいんじゃない?あれだったらタオルとか貸してあげるよ」


「そっちは手伝わなくていいのか?」


「うん、いつも通りだから全然大丈夫」


「じゃあ、そこはお言葉に甘えさせてもらう。ありがたく入らせてもらうよ。正直体の汚れが気持ち悪いんだ」


「うん、でも8時前には出てきてね。女湯になるよ」


「あ、それはやばいな。厳守するよ」


当然今回は女性客もいるため、そこを過ぎると明人の社会性が死ぬ。

絶対に出ないといけない。


「あ、で、タオルいる?」


「借りていい?」


「お客さんに出すやつあるからそれ貸してあげるよ」


「おっけ、手早く入ってくるわ」


慌てて風呂に向かう明人であった。



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[気になる点] 誤変換:剥ける 「まあ結局力で剥くことにはなるけど、俺はそっちのが綺麗に向ける気がする」
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