助力
「いや、しかし誰に助けを求めればいいんだろうか…そんな知り合いいないんだよな俺…」
民宿「しろすな」の2階の自室に籠って、パソコンの前で頭を抱える咲希。
突然大量の来客予約が入ったことで嬉しいは嬉しいのだが、割とどうしようか悩む羽目になったのである。
最悪咲希はどうにかなりそうなのだが、渚がもたない。
「あー…とりあえず、聞けそうなのは一人だなあ」
とりあえずスマホで連絡を入れる咲希。
とは言え咲希がスマホで誰に連絡を入れられるんだと言われれば、渚及び大月兄妹くらいなものである。
それでいて、身内の渚は当然意味ないので、スルー。
となれば本当に大月兄妹しか相手がいない状況である。
「…やっぱ、美船、かなぁ?雅彦の兄さん忙しそうだもんなぁ」
という感じで美船にターゲットする渚。
なんとなく普段から来てるのだから時間は取れるだろうと思っている。
「というか、頼みたいの家事なんだが、あいつできるんだろうか?」
なんだかんだ美船とは結構会っているが、その辺の能力値は謎なので、どうなんだろうと思いつつも、それでも頼れるの相手が少ないので仕方ない。
とりあえず聞いてみないことには始まらない。
『美船、ちょっといい?』
とりあえずいつものアプリで連絡を入れる咲希。
『あれ?咲希どうしたの珍しいね!』
『ちょっと緊急で相談が…』
『相談?どうしたのー?』
驚いた感じの返答が返ってくる。
まあ夏祭りの頃の連絡以降まともにここで連絡していなかったので当然かもしれない。
『ちょっと3日後にうちに客が大量に来ることになったんだけど、それの手伝い募集中。真面目にかなりやばい』
『咲希がそんなこと言うってことは相当な気がするけど、そんなにお客さん来るの?』
『8人』
『うわ、すごいね!』
『そう、初めてこんなにお客さん来てくれて嬉しい反面、絶対2人じゃ回らねえ』
『いつー?』
『3日後から4日ほど、昼間から夜にかけてかな』
無理かなと思いながら文章を打ち込む咲希。
しかし返答は高速だった。
『いいよー何すればいいの?』
『え?マジで?そんな、いいの?』
『いいよ?3日後から4日ならぜんぜんだいじょーぶ!何やればいい?』
『あーそういうことなら頼みます。やることは掃除と洗濯とあと渚の料理の手伝い』
『おっけー!あ、でもそんなに私家事できないよ?』
『いやマジでやばいから構わないから』
『じゃあ3日後の昼くらいに行くね!』
『助かる。それじゃ3日後』
そうしてスマホを置く咲希。
「よっしゃ、とりあえず3人ならなんとかなるだろなんとか。美船いてよかったっ!」
過去の自分の交友関係を喜ぶ咲希であった。
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一方の渚。
咲希と同じく自室にてスマホで手伝ってくれそうな人に連絡を入れる。
「とりあえず稜子ちゃんに聞いてみよ」
困った時の稜子。
とりあえず話は聞いてくれそうなので。
『稜子ちゃああああん!』
『え、え、どうしたの』
『あ、えっと、お願いしたいことがあって、いいですか!』
『内容によるかな』
『3日後の夕飯時に夕飯を手伝ってくれる人を募集しています。手伝ってください。お礼は、また考えます』
『夕飯時…?その日だけ?』
『可能なら、2、3日連続でお願いしたいです』
『何があったのよ』
『うちにお客さんが来たんだけど、合計で8人いて、私一人じゃ夕飯全部作り切れる気がしないから、そのお手伝いが欲しかったから、お願いしました』
『ああそういうことね。手伝ってあげたい気持ちはやまやまだけど、ごめん無理だわ。無理矢理なら1日くらい行けるかもしれないけど、3日は無理ね。うちのご飯担当私だから、家が死んじゃう』
『無理してまでは、手伝ってもらうほどじゃないかな。無理言ってごめんね。ありがとう』
『ごめんね。また何かあったら言って。やれることなら力になるから』
『ありがとー』
残念ながら振られた。
まあ向こうにも向こうの事情があるだろうし致し方なし。
「まあ、突然過ぎたし、しょうが無いよね。うわーどうしよう」
一応隣で咲希もどこぞかに連絡してるとは言えど、望み薄である。
このままでは本当にどうにもならない。
「うーーーーん、神谷君にも一応聞いてみよっかな。忙しそうだけど…」
若干恐る恐ると言った感じで、明人への連絡をすることにした渚。
『この間は、カニのさばき方を教えてくれてありがとう』
『いいって。その代わり今度もしカニ来たらまた教えてくれよな!』
『そのカニなんだけどね。3日後に来るんだけどよかったら来ない?』
『え?いいのか?』
『ちなみにね。多分、3日間ぐらいずっとカニだよ』
直接お願いをしにかからない渚。
3日くらいずっとカニとは。
『え?え?どういうこと?』
『お客さんがね、いっぱい来ることになったの。それで人手が足りなくて…』
『そういうことか。でも俺でいいのか?』
『神谷君料理できるし、適任だよ。むしろお願いします。助けてください』
『ちょっと待ってくれ。ちなみに何時ごろとか分かるか?』
『5時くらいから来てくれると、遅めでも6時くらいに来てくれると、すごく嬉しいです』
『分かった。予定を確認するから少し待って』
『分かった』
それから待つこと数分。
再びスマホから通知が鳴る。
『おっけーいいぞ』
『ほんとに?大丈夫?』
『おう、ただ学校帰りそのまま向かうことになるかも』
『神谷君がそれでいいなら大丈夫だよ』
『じゃあ問題ない。5時くらいには着くように向かうことにする』
『お願いします。本当にありがとう』
『気にすんなって。あ、カニはくれよ!』
『あげるから!大丈夫!』
『じゃあまた3日後な!』
『うん、またね』
「3日間カニとか言っちゃったけど、そんなカニ出さないよね。神谷君には悪いけど、3日間カニはあげれそうにないや」
何か別の方法で労おうかなとか考える渚であった。




