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看板娘始めました  作者: 暗根
本編
36/177

子供

電気が一応復旧した民宿「しろすな」内。

実際に電気の復旧がいつになるかはさっぱりだが、まあこれでしばらく持つはずである。

定期的にガソリンの補給はいりそうだが。


「あー一応冷蔵庫とかあの辺ちゃんとついてるか確認だけしといて。多分大丈夫だとは思うけど」


「うん、分かった。そういえば、使えないものとかあるの?」


「見た感じ電気容量的には大体使えるとは思うけど、一応節約はした方がいいかもな。エアコンとかその辺」


「エアコン使えないんだ、暑いのになあ」


「一応しばらくは残り香じゃないけど残り空気あるからそれで耐えて」


「あーい」


「あ、扇風機くらいならたぶん大丈夫」


「あーい」


「あと、お客もう1泊してくみたいだから、そういうことで」


「ああ、そうなんだ、分かった」


その辺まで語ったところで、やることやったという感じで2階への階段を上がっていく咲希。

後には渚が残された。

そのまま台所へと向かう渚。

当然やることは冷蔵庫の確認である。


「うーん、一応ついてる?」


電力の供給自体は復活したので、動いてはいるようである。

少なくともしばらくは腐る面では心配はいるまい。


「ついてるなぁ。運んできたかいあったなぁ」


頭によぎるのはガソリン缶を運んだ記憶。

ここいらでガソリンを買えるのは町の隅のガソリンスタンドだけなので、そこまで徒歩で買いに行ったのである。

20kgくらいあったので正直めっちゃ疲れた。


「よしよし、んーあとは、あ」


そういえば、エアコン客室にもあったなと思い出して、お客にそれを伝えないとと思い至る渚。

いきなり電力が駄目になることは無いかもしれないが、あんまり下手なことやってまた停電は困る。


「とりあえず伝えに行かないと…」


というわけで客室に向かう渚。

扉をノックする。


「すみませーん。一応電気付いたんですけど、今お時間大丈夫ですか?」


しばらくすると、扉が開き、中から父親の方が顔を出した。

何故か股の間に子供がいるが気にしたら負けだろう。


「あ、すみません。大変な時に」


「あーいえいえ、むしろそちらさんの方が大変でしょう」


「いえいえ、全然大丈夫なんですけど、今自家発電に切り替えて、あんまりいっぱい電気使えないので、エアコンは使わないでくださいって伝えに来ました」


「ああ、そうなんですね。分かりました。…となると大分暑くなりそうだな…」


「そうですよねー。台風でただでさえ暑い夏が湿気のせいでもっと暑いですもんね」


「ほんとですよ。今回も台風に襲われる前に帰れたらよかったんですけどね…突然早くなるせいで予定が狂っちゃいましたよ」


「ほんとに大変ですよね。風は強いと思うんですけど、窓は開けれないと思うので、多分もっと室内暑くなってきますよね」


「あついのやだー」


「そうだよね。暑いのやだよね。あ、それで、多分扇風機が倉庫にあるので、そちらをお持ちしようかなと思うんですけど、どうですか?」


「あ、借りて大丈夫ならお願いします」


「はい、じゃあ持ってきますね。ちょっと待ってください」


そう言って倉庫の方へと向かう渚。


「えーっと、扇風機…」


倉庫は倉庫なので物が多い。

昔から使っていたと思われるものとかもかなり置いてあるので、正直何がどこにあるのか分からないのである。


「たしかあの辺で…あった」


なんとか物の山の中から扇風機を発見して引っ張り出す渚。

型は数世代前のだが、まあ動くだろう多分。


「うぁ、疲れた…」


ガラクタの山から退散してもう一度客室の方へと戻る渚。

埃被ってなかっただけまだましか。


「お待たせしましたー扇風機お持ちしましたー」


そういうと再び扉が開く。

子供が立ってた。


「こんにちは、扇風機持ってきたんだけど、お父さんかお母さん呼んでくれるかな?」


「分かった!パパー!」


後ろに駆け出して父親を呼びに行く子供。

すぐに父親の方がやってきた。


「あ、すいません、ありがとうございます」


「はい、多分古いやつなんですけど、使ってください。動かなかったらまた教えてください」


そういうと扇風機を渡して部屋から退散する渚。

やることは終わった。


「ふぅー」


そのまま1階のソファーに座りこむ渚。

こういう時にわざわざ2階に上がらなくてもよいのは便利である。

そのままスマホを取り出して動画を見だす渚。

流石にこんな日に外に出かける気にもならない。

と、そんな感じでくつろいでいると、廊下の方から聞き覚えのある足音が響いた。

多分子供の足音である。

が、渚は全く気付かずにそのまま動画に集中している。

そのまま渚の横にまでたどり着く子供。

さりげなくスマホの画面をのぞき込もうとしている。


「ん、うわぁ、こんにちは」


「何見てるのー?」


「うーんと、ラジオみたいなやつかな」


「みせてー」


「ん?いいよ?」


ソファー横に腰を下ろして渚と一緒に動画を見始める子供。

が、数分後。


「ねーなんかもっと面白いのないのー?」


「んーつまんなかった?まあそうだよねー何かしたいことある?」


「モン〇ト!」


「モン〇ト?いいよ?」


というわけでつい先ほど停電時にダウンロードしたモン〇トを開いて子供に手わたす渚。


「どうぞ」


「やったありがとー!」


「いいよいいよ」


が、数分後。


「弱いー」


「えぇえ…?弱い?」


「弱い」


「うーん…そうだよ、ねぇ…始めたばっかりだもんねぇ…」


まあ当たり前である。

何分前にダウンロードしたと思ってるんだ。


「やっぱ返すね」


「うぅん。他に何かやりたいことある?トランプとかあるよ?」


「トランプやるー!」


「よーしならトランプ持ってくるね。待っててね」


というわけで2階の自室に戻ってトランプを持ってこようとしたのだが。

メッチャ背後にいる。


「うん?どうしたの?」


「僕も行くー」


「うううーん、まいっか」


適当だった。

まあ2階に上がるのどうこうを気にしてるのはどっちかというと咲希なので、子供くらいなら別にいいだろという感じである。


「あんまり騒ぐと、もう1人のお姉ちゃんが怒るから静かにね」


「分かったー!」


既にこの声がでかいのは突っ込んではいけない。


「よし、行こっか」


「うん」


というわけで自室に子供を招き入れる渚。


「ちょっと待ってね。確かトランプは…」


と言いながら、部屋隅ベッド横の棚をあさる渚。

後ろで何かを開けた音がした。


「ねーなにこれー」


「え、どうしたの?」


後ろを振り返った渚の視線の先には物凄く見覚えのあるものが。

具体的には自分の下着が引っ張り出されていた。


「え、開けちゃだめ、駄目、駄目だよっ!」


近年まれにみる反応速度で子供を確保する渚。


「ごめんね、それお姉ちゃんの下着だから返して」


「そうなの?」


「そうなのっ、だから返して!」


言いながら結構パニックになってる渚。

いきなり下着に手をかけられるとか思ってなかった。


「やだー!」


「ちょ、お願いだから暴れないでっ!」


バタバタする子供を無理やり押さえつける渚。

めっちゃがたがた音がなる。


「ね、面白いものあるよっ!そっちやろっ!」


「やだーこれがいいー」


「そんなの面白くないよっ!」


子供の何が面白いかは分からないものである。

無理矢理下着を引っ張って奪い返そうとする渚。

何故かそれに物凄い抵抗する子供。

頭の中で一旦離して興味を失うまで待つか否かでぐるぐるする渚。

かといって離した瞬間に階下に駆け下りられたらそれこそ目も当てられない事態である。


「あ、廊下に猫が歩いてる!」


「え?」


「よしっ!」


「あ」


物凄い古典的なテクで下着を奪い返す渚。

思わず声が出たのは致し方あるまい。

そしてそのまま子供を廊下に運んだ。

この狼藉は流石に困る。


「はぁ…駄目だよあんなことしちゃ」


「えー…」


「そうだ、映画あるけど、映画見ない?映画見よ?」


トランプの回収とかしてる場合じゃなかったので、代案を提案する渚。


「見る!」


今度は乗ってくれた。


「は、はぁ…じゃ、じゃあさ、お父さんとお母さんに映画見ること言いに行こっか」


「うん」


そのまま階下に降りて、部屋の中の親2人にそのことを伝える渚。

先ほど起きたハプニングにはノータッチ。

当たり前である。

で、2階のリビングに子供を連れていく。

子供の手を引っ掴んで、適当になんか子供が好きそうな映画を選ぶ渚。

流石にさっきみたいなこともう一度されたらパニックで死ぬ。


「これどうかな」


「見るー!」


「よし、じゃあこれ見よう」


ソファーに自分ごと座らせる渚。

そのまま映画鑑賞を始めた。

映画鑑賞はそのまま子供が寝るまで続いたのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 大惨事(笑) まだラフ過ぎる格好になってそうな咲希さんの部屋に突入されなくて良かったのか。
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