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看板娘始めました  作者: 暗根
本編
30/177

お祭り

「んー時刻的にはそろそろだが…」


民宿「しろすな」外。

1人でそこに立つ咲希。

今日は近所の夏祭り当日。

なにやら迎えに来てくれるらしいので待っているとこである。

なお今日は渚も同じ祭りに出てしまうので、「しろすな」自体は客も来ていないのもあって、完全にお休みである。

適当に臨時休業の看板を立てておいた。

時間帯的にもいきなり来る客ももういないはずなので大丈夫なはずである。

そうやって待っていたら一台の車が前に停車した。


「お待たせしましたー」


「ほら咲希、乗って乗って」


空いた窓からそうやって呼び掛けられる。

大月雅彦、及び大月美船の2人である。

なんか祭りに誘われたので行くことにした次第である。

そのまま車に乗り込む咲希。


「スイマセン今日は。わざわざありがとうございます」


「いえ、どうせ今日はそこの妹連れてかないといけなかったので。大丈夫です」


「ちょ、その言い方は無いでしょ。兄貴だって行く気だったじゃん!?」


「わざわざ妹運ぶ意味もないだろ、というかお前も友達とかと行けばいいだろ」


「おまいう?というか今年は友達いるし!ねーねー咲希」


「引っ張るな引っ張るな」


「おい…すいません咲希さん。つき合わせちゃって」


「いやそんなこと。どうせ私誘ってもらわないとどこにも行かないので…」


「昔っからだもんねー」


内心昔っからそうだったのかよと突っ込みつつ車に揺られる咲希。

車はそのまま山道へと突っ込んでいく。

まあ周辺全部山なのだが。


「そういえば、場所どこなんです?詳しく調べもせずについてきちゃいましたけど…」


「ああ、駅で数本向こうの場所です。30分くらいで着くと思いますよ」


「ああそうなんですか。ありがとうございます」


「あれ、咲希昔行ったりしてなかったっけ?」


「さあね。記憶にござらんわ」


「あれー?確か行ってたと思うんだけどなー…」


実際駅数本向こうの場所くらいなら行っていたのかもしれないが、いつも通り記憶にあるわけもない。


「というか咲希格好普段通りだね。お洒落…まあ咲希には無縁か」


「言い方ひでえな。まあ無縁だけど」


咲希の格好はあまりにも普段通りであった。

いつも通り過ぎる。

対する美船は浴衣であった。


「どうせなんだから浴衣とか着てこればよかったのに。幸い元はいいんだから」


「着付けできる人がいませーん。というか浴衣なんか持ってないわ。あと元は余計」


「えーもったいない。持ってたら最悪私とかがやるのに」


「できるんだ?」


「ふっふー私にできることはあんまりない!」


「できることがあんまりないのかよ。駄目じゃん」


「まあでも浴衣くらいなら着付けできるよー。また来年は言ってよ」


「あーい買ってたらな」


「買ってよー咲希の浴衣見たいからー兄貴も言ってたしー」


「え」


咲希の顔が雅彦の方に向かう。

雅彦はうろたえた。


「ちょ、言ってないです!滅茶苦茶言うな美船!」


「あ、ですよね、びっくりした」


「すいません…」


「いや、大丈夫です。びっくりしただけなんで…」


唐突過ぎた。


「まー兄貴は置いとくとしても、買ってよ浴衣」


「なんでや」


「絶対似合いそう」


「…まあ、そう?」


「あ、否定はしないんだねー。ふふー」


「笑うなや」


まあ今の体自体はなんども見ているので、似合いそうではあると客観的に思ったまでである。

他意はない。

ないはず。

そんなことしながら数十分。

車から降りれば人だらけであった。


「うっわ、すごい人の量」


「この時期、この辺のお祭りこれくらいだからね。みんな来るんだよね」


老若男女問わずたくさんの人が来ているようである。

まあよく考えれば駐車場も至るとこ満車だったので考えるまでも無かったか。


「じゃー行こうか。会場自体はあっちだよ」


「あーあそこの人混みね」


まあ人の流れを見れば何となく行くべき場所自体は分かるというものである。


「じゃあ行こう行こう。兄貴ー先導よろしくー」


「はいはい」


こうして行軍が始まった。


□□□□□□


「ねー咲希」


「ん…何」


「食いすぎじゃない?」


「まあどうせ夕飯これで終わりだし」


そのまま人の波に飲まれつつ、会場の方へと向かってみれば、ある意味祭り名物の屋台の列であった。

時間もまだあるということでそこをうろうろしていたわけであるのだが、咲希がめっちゃ買うのでさっきの一言である。


「え、何個食べた?」


「えー…トルネードポテト、イカ焼き、焼きそば、じゃがバター、たこ焼き、唐揚げ…えーっと?まだなんかあったっけ?」


「多いよっ!既に6種類だよ!」


「そうか…?夕飯これで済ますならこんなもんだけど…」


元々咲希は大食いである。

ご飯大盛2杯は行くタイプである。

この体になった後もそれは変わっていない。


「というか甘いものとかじゃなくてほんとに食事ばっかだし…」


「まあ祭りって食いに来てる感じあるし…」


「咲希、いいのそれで」


「いいの」


といいつつ、今持っていたトルネードポテトを食べ終わる咲希。

買ってから数分。早い。

それ見て雅彦が一言。


「咲希さん食べるの早っ」


「え、そうです?」


「え、だって俺まだ半分ですよ?」


どうやら同じ屋台で同じものを買っていたらしい。

が、咲希が食い終わった段階でまだ雅彦半分である。

早過ぎである。


「まあ、私が早いというよりか周りが遅いということで…」


「流石に無理だと思います」


この速度が普通だったら世の中の人間の大半が遅いということになりかねない。


「まあせっかく屋台巡りしてるんで色々食べたいじゃないですか。あ、ちょっとあれ買ってきます」


「え、まだ行くんですか?」


「だから夕飯です夕飯」


「咲希、夕飯もいっつもこんなに…?」


「まあ食べる時は?」


「食費で倒れない?」


「大丈夫」


一応屋台巡りで調子乗ってる面もある。

まあ大食いではあるのだが。

なお屋台から帰還した咲希は棒付きキュウリ持って帰ってきた。

まだ食うようである。


「あ、咲希、咲希。金魚すくいあるよ」


「…ゴクン。やるん?」


「やろやろ。兄貴ーお金ー」


「いやそれくらい自腹切れよ。ここまで奢っただろ」


「やだー財布持ってないー」


「お前なぁ…」


咲希が先ほど買ったものを食べ終えたあたり。

金魚すくいに寄っていく美船。

ただそもそも財布持ってきてなかったらしい。

奢られる気満々である。

なお咲希は奢りに関しては丁重にお断りした。

お金の貸しが嫌いなのもあるが、色々食うことが分かっていたというのもある。

食費で雅彦が破産する。


「じゃあ…1回だけだぞ」


「え、ケチ。取れるまで」


「俺の財布無尽蔵じゃないんだが!?」


ボケをかましながら金魚すくいに挑戦する美船。


「はいじゃあ1回ね。はいポイ」


「よっしゃ、見とけよー」


スッとポイを水につけて、そのまますごい勢いで破り捨て去った。

時間僅かに1秒である。


「ちょ、お前大事に使えよ俺の100円」


「ああ、駄目かあ。もっかいもっかい」


「お前なあ…」


結局3回挑戦した。

全部破れた。


「うごごご…」


「俺が唸りたい」


「もっがい!」


「流石にやめろ!」


流石に止めた。


「こいついっつもこうなんですよ。せめてもう少し時間かけて大事にやってくれないものか…」


「でも、やらせちゃうんですね」


「ええまあ、一応妹なんでね、なんだかんだ弱いです」


咲希も苦笑いである。

当のやった本人は楽しそうだったのでまだよいか。


「あ、そろそろ花火始まるよー。見る場所行こー」


そう言うと美船が先頭に立って歩き出した。

咲希と雅彦が後ろを追う。


「そういえば、毎年来られてるんですか?」


「ああ、いや、毎年来てた、ですかね。あいつが実家から出る前までは毎年のように行ってたんですけど」


「じゃあ久しぶりだったんですね」


「まあこっから毎年になりそうですけどね、帰って来たんで」


「すいません、妹さんと2人の邪魔しちゃいましたね」


「ああいや、あいつと2人疲れるんですよ。こう言っちゃあれですけど、咲希さん来るって聞いてむしろ助かったと思ったくらいなんで」


「あはは、まあ振り回されますよね」


「ええ、それはもう。むしろ咲希さん生贄に捧げたみたいになっちゃって、申し訳ないくらいです」


「いや、全然、むしろ来れてよかったですよ。あることすら知らなかったし」


「そういえば、咲希さんも帰ってきてからそんなに経ってないんですよね」


「ええ、そうですね。まだ数か月くらいです。なんでまだ勝手もよく分からないままなんですよね」


「民宿を継いだんですよね?やっぱり大変ですか?」


「まあ…大変じゃないって言うと嘘になっちゃいますね。まあでも、私とか掃除くらいなもんか大変なのって?」


「そんなことないですって。2人だけであそこをやってるの凄いと思います」


「そんな、大げさですよ。見様見真似のど素人ですし」


「それでも、咲希さんと渚ちゃん頑張ってるの、知ってるつもりなんで。頑張ってくださいね、俺もなんかあれば全然手伝いますんで。…まあ自販機の補充と、お酒運ぶくらいしかできませんけど」


「あはは、ありがとうございます。今後ともご贔屓(ひいき)に」


「また今後ともよろしくお願いします。あ、でもほんとになんかあったら呼んでくださいね。足くらいになら全然なりますから」


「じゃあ、何かあったらお願いしようかな?」


「いつでも。あ、いつでもは無理かもしれない」


「大丈夫ですそれは分かってますって」


そんなこと言いながら人混みを進んでいき、目的地についた。

既に人だらけであったが。


「うわ、凄い人」


「どっか空いてる場所あるかなぁ…」


「美船、それ探すの得意だろ。頼む」


「あいよっと。あの辺とか空いてそうじゃない?」


美船の言葉に従って行ってみると、まだスペースが余っていたのでそこに座ることにする。


「まあこの辺なら見れるっしょ余裕で」


「場所探しありがと」


「ふふーん崇め奉れー」


どや顔かます美船。


「そういえばどれくらいの規模なのここって」


「んー?結構激しいよ?」


「そうなのか」


「まあ流石に超有名どころには負けそうだけど。1時間はやるから安心して」


結構上げるようである。


「あ、そろそろ始まりますよ」


そのまま空に光の花が咲く。

ドンと音があとから響く。


「おー綺麗」


「でしょでしょー来る価値あるでしょー」


そのまま花火は続く。

でかくて激しいのが上がるたびに小さく拍手を送る咲希。

それを隣で見ていた雅彦。

視線に気づいて咲希がちょっと固まる。


「え、あ。ああ、えっと、昔っからの癖で。よくやってたもので」


ちょっと顔を赤くする咲希。

恥ずかしかったようである。

まあ癖なので仕方ない。


「ああ、気にしないでください。咲希さん花火好きなのかなと思っただけなんで」


「ああ、まあ好きですよ。自分一人じゃ中々来ないですけどね」


「じゃあやっぱ誘って正解だったわね!」


「おおう。纏わりつかんと花火見んかい」


花火を存分に楽しんだ咲希であった。



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