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看板娘始めました  作者: 暗根
本編
27/177

買い物

「あ、渚。来たわね」


「おはよー稜子ちゃん」


「おはよ渚。準備はいいわね?途中で取りに戻るのは無理だからね」


民宿「しろすな」がある町の中唯一の駅に集まった2人。

取りに戻れないとはいうのはあながち間違いではない。

少なくとも都会とは言い難い、ぶっちゃけ田舎に属していると思われるここは、1時間に1本しか電車はこないのである。

徒歩で移動できないわけではないが、距離がある上に山中をがっつり通る羽目になるのでよっぽどの理由が無い限りはやらないだろう。


「財布持ったし、かばんも持ったから大丈夫」


「そう?じゃ、行きましょうか。乗り遅れるとまずいしね」


理由は以下略。

逃すと待ちぼうけ確定なので。


「えーっと、どこまで行くの?」


「ここよ。4駅先のここ。まあもっと大きな町に行かないといけないなら反対に6駅行ったここでもいいけど…衣服見に行く分にはこっちで十分ね」


「そうなんだ」


というわけで1時間1本の電車に乗り込む2人。

そのまま電車に揺られること30分ほど。


「よし、着いた。うーん、やっぱ近所に比べると町って感じね」


ガチ都心部というわけではないものの、少なくとも民宿「しろすな」のあるところ周辺に比べると明らかに建物は多い。


「じゃ、行きましょうか。今日見るのって服と下着でいいのよね?」


「えーっと、服と下着でだいたい合ってるよ」


「じゃあ私がいつも行ってるとこでいいわね」


というわけで大型の服屋にとりあえず向かった2人。


「それで、渚。服って言ってるけど何探してるの?」


「とりあえず、秋物かなぁ。今持ってる服だと、多分秋寒くて無理だと思う」


「え、一枚も無いの?」


「一枚も無いわけじゃないけど、着まわせるほどないんだよね」


「渚、あなた今までどうやって秋冬越えてきたの…?」


「昔持ってた服はほとんど置いてきちゃったから全然無い。あとデザインがちょっと…」


「もったいなっ。まあでもそれなら仕方ないか…」


というわけで適当に服を見る2人。


「稜子ちゃん、こっちのブラウスとこのスカートの組み合わせってどうかな」


「まあ、秋って感覚ならいいんじゃない?ちょっとババ臭い気もするけど」


「ええ?ババ臭いのこれぇ?え、じゃあこっちのブラウスは?」


「あー私はそっちのが好きかな」


「ちょっと可愛すぎるかなって思ったんだけどありかなぁ?」


「そう?渚なら似合うでしょ余裕で」


「ほんと?じゃあ買うー」


「…ノリで決めるのはいいけど残金気にしなさいよ」


「稜子ちゃん…こういうのはね、感性で決めなきゃダメなんだよ」


「それ、お金使いこむタイプの発言…」


「大丈夫!今日はこれだけだから」


財布のひもの管理は咲希である。


「あ、あと、タイツとストッキング買いたい」


「ああ、その辺はあっちね」


という感じで順調に買うものを決めていく渚。

さりげなく運動用の服も籠に突っ込んでいる。

前回のテニスの時の影響であろうか。

ちなみに稜子は特に買う気は無いらしい。


「よし、服はだいたいいい感じ」


「レジあそこね。私はもうちょっとこの辺見てるわ」


「うん、分かった。じゃあ行ってくるね」


総額税込み13200円となった。


「あー女物ってやっぱ安いなー」


男物の値段を思い出してそんなことを呟く渚。


「買い終わった?」


「うん」


「よし、じゃあ次ね」


つーわけで退店。

その足でそのままランジェリーショップへと向かう。


「…あれ、どうしたの渚」


「ん、え、何が?」


「いや、急に止まったから」


「いやぁ、なんというか、迫力あるね」


「…?何言ってるのよ?」


稜子には理解できなくても当たり前ではあるのだが、中身まだまだ男状態の渚にとって結構ここはそりゃまあ足が止まる場所ではある。

躊躇はする。

内心マネキンがエロいとか思ってる。

外見とはえらい差である。


「ほら、何やってんのよ。あなたの見に来たんでしょ。ほらほら」


稜子に引っ張られた。


「う、うん、うん」


「躊躇する意味が分からないからっ!ほら入る!」


「わ、分かってるよぉ…」


「というか入るの流石に初めてじゃないでしょあなた!」


「え、あ、お、お母さんとしか、来てなかった」


キョトンとした顔になる稜子。

想定外だったらしい。


「…それは予想してなかったわ」


「お恥ずかしながら…」


「まあ、何はともあれ。あなたのを買いに来たんだから、早く入ってよね。入り口で立ち往生する方が嫌なんだけど」


「あい」


というわけで半ば連行に近い形で中に足を踏み入れた渚。

当然口では色々言っているものの、来店したことなんざあるわけない。


「えーっと、上?下?両方?」


「流石に片方だけは無いでしょ…私だってそれくらい分かるよ」


「そ。じゃあ、えーっと、上いくつ?」


「えーっとね、うーんとね。確か、Dの…分かんない」


「ああ、じゃあちょっと待ってて」


というとそのまま店の奥に入っていく稜子。

しばらくした後に店員連れて戻ってきた。


「え、え、これは、何ですか」


「いや、何ですかってサイズ分からないなら測るしかないでしょ。適当なの買うわけにもいかないだろうし」


「な、成程」


「というわけで行ってらっしゃい。この辺いるから」


「う、うん。行ってくる」


渚の顔は複雑なそれであった。

そのまま試着室へ連行される。

足取りは軽いとは言い難い。


「では、中で上半身裸でお待ちください」


「あ、分かりました」


というわけで試着室内部。

言われた通り上半身を剥き終える。


「お待たせしました。測らせてもらいますね」


「えっと、よろしくお願いします」


渚の顔がめっちゃ赤い。

そもそも裸見られるのあんま好きではないというか嫌いである。

ぶっちゃけ女になってから正面で裸見られたの初なのも結構ある。

見られる側になったことは無い。

見る側はある。


「じゃあ、トップバストから、失礼しますね」


そのままメジャー回してもらって測ってもらう渚。

滅茶苦茶測ってる光景をまじまじと見ている。

そりゃまあ人生初経験である。

そうもなる。


「トップは92ですね」


流れでアンダーバストも測ってもらう。

やっぱ気になるのでそっちに目が行く。


「アンダーは74ですね」


というわけで計測終了。

羞恥時間終了である。

まだ裸ではあるが。


「74の92でカップはD75ですね」


告げられる実際の胸の大きさ。

謎の納得した感じの渚であった。


「あ、どうだった?」


「あ、うん。分かったよ」


「いくつ?」


「えとね、D75だって」


「…大きい」


「そう…っぽいね」


「いや元々久しぶりに会った時から大きいとは思ってたけど…予想以上だったわね…」


「で、でも、私は小さくてもいいと思うんだっ」


「フォローになってないわよそれ」


「ごめん」


「別に、気にしてないから大丈夫よ」


稜子はひんぬーであった。


「えーっとそのサイズだと…こっちかしら?私この辺しか見ないから分かんないわね」


「この辺かぁ、意外と多いね」


渚の頭によぎる今まで持っていた下着類。

どう考えても目の前に売られているそれと比べて、明らかに派手である。

どうしてあんなのしか無かったんだと改めて思わずにはいられなかった。


「うーん、これかなぁ…」


「あら、やけに大人しいわね」


「そうかな。これぐらいのがいいと思うんだけど」


「いや、前見たとき、なんかすごかったから」


「あ、あ、あれは私の趣味じゃないもん!」


「ふーんそうなんだ。まあそういうことにしたげるわ」


「だから趣味じゃないんだってぇ!」


むなしい叫びが木霊した。


「これと、これと、これかなぁ」


なお、選んでいるのは過去渚が渚で無かった時代に、実際に女性といわゆるそういうことをしていて、こんなん着てたな…とか思ったやつである。

別に渚が変態というわけではない。

平均的なラインが分からんのでそうなってるだけである。


「とりあえず試着はした方がいいよね?」


「した方がいいんじゃない?私ほとんどしないけど」


「あ、うん、じゃあちょっと行ってくるね」


地雷な気がしたので触れないことにした。


「すみませーん。試着したいんですけど」


「あ、はい。えーっと…3点ですね。どうぞ。試着の手伝いはご必要ですか?」


「あ、お願いします」


正しい着け方とか知るわけない。

再び魔の試着室にINである。

とりま脱がないと始まらないので脱いだ。


「じゃあ、着けますね」


というわけで実際に着けられたわけだが、その際、店員の腕が背中及び脇下から肉をこう寄せてくるあれをされた。

まあ所詮「寄せて上げる」である。


「ひゃっ…!」


「あ、ごめんなさい。痛かったですか?」


「あ、え、全然大丈夫です!ちょっとびっくりしただけです」


実際はちょっとどころじゃないのだが。

なかなかこう自分の胸で寄せて上げるをされるのは感慨深いものがある。

あと強烈な違和感。


「サイズは大丈夫みたいですね…違和感とかは無いですか?」


「多分?無い?と思います?」


そもそも全部違和感である。

分かるわけがない。

とか思いながら鏡を見る渚。


「え、大きくなってる…」


思わずつぶやいた。

ちょっと驚いたのと同時に、面白かったようである。

胸をちょっと触っていた。


「それなら大丈夫ですね。毎回ちゃんと中に寄せるように気を付けてくださいね」


「あ、はい。気を付けます」


「ところで、お客様でしたらこういうのもお似合いになると思うんですけども、どうですか?新作なんです」


突然家にあるような派手なデザインのを進めてくる店員。

内心買う気は無い。

買う気は無いが。


「えーっと、じゃあ、着るだけ、着てみます」


流れでそのまま試着する渚。

レジに行った段階でそれも籠に入った状態であった。

押し負けた。




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― 新着の感想 ―
[一言] なかなかのサイズな渚さんは(中の人童○じゃないのか(負けた))押しに弱い。
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