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看板娘始めました  作者: 暗根
本編
25/177

もう一人の一日

渚が民宿「しろすな」に帰って数分。

手洗い等済ませた上で、荷物を一通り置けば、既に時刻は7時過ぎ。

先ほど咲希も腹減った等呟いていたので、そろそろ夕飯にせねばなるまい。


「結構遅くなっちゃったなぁ…作らないとなぁ…何作ろう」


等々呟きながら、階下のキッチンへと足を踏み入れる。

残念ながら2階にキッチンは無いので。


「んー昨日のあまりものとか…今日ちゃんと買ってないからなぁ…」


そのまま冷蔵庫の野菜室に手をかける渚。

中にはキャベツやら、何やら、昨日までの残りがそのまま入っている。


「んー〇ックパッドなんかないかな」


持っているスマホで検索かけていく渚。

毎日さらっと料理やっているようで、だいたいこんな感じで調べてたりする。

別に料理関係全部完璧超人ではない。


「ひき肉は買ったからぁ…ロールキャベツとかいいかなぁ…」


そんなこと言いながら上の棚に手をかける。

微妙に背丈が足りてないので背伸びで開ける。


「こういう時だけ足伸びないかな」


ぎりぎり背伸びで棚の戸部分には手が届き、戸を開けること自体はできた。

が、開けるとこで限界である。


「コンソメ…コンソメ…」


コンソメを取り出そうとしているようだが、そもそも戸にぎりぎり届くか怪しいのにもかかわらず、中にまで手が届くかという話である。

まあ無理である。

それを悟ったのか、その場で渚が跳ねる。

届かないにせよ中の確認をしないといけないので。


「あるかな、あるかな」


一応跳ねたことによって棚の中身が確認できたようで、とりあえずコンソメ自体は見つかったようである。

が、どのみち届かないことに変わりなし。

仕方ないので、キッチン隅に置いてある小さめの脚立を運んできた。

来て間もないころに届かない場所が多かったので買った。


「この身体…ちっちゃくて不便なんだよなこういう時…」


身体に対する不満をぶちまけながら、なんとか無事にコンソメを取り出した。

そのまま、そのほか必要なものを取り出すと料理を開始した。

なんだかんだいつもこんな感じである。


「えーっと、ニンジンの切り方は…」


目の先にはスマホ。

切り方検索中である。


「えーっと、煮込む時間は…」


やっぱり目の前にはスマホ。

時間も検索中である。


「まず?肉をハンバーグを作るようにこね…うわっ味噌汁噴き出したっ!」


検索かけながらやってたら味噌汁が噴き出た。

慌てながらコンロの火を止めにかかる。


「うわっ、コンロの取っ手ベッタベタになったっ!どうしよ!」


肉団子作ってた手なのでそりゃそうなる。

その後、色々トラブル起きつつも、なんとか料理そのものは完成した。


「味見しとこっかな…怖いし…」


自分に微妙に自信が無い渚。

まあ食える味ではあった。


「とりあえず及第点かな、うん」


□□□□□□


夕食後、自室にて何やら段ボールを開けている渚。

渚が外に行っている間に咲希が受け取って渚の部屋に置いておいた物である。

中身は化粧品等である。


「とりあえず、この間調べたのは…こんな感じだなぁー」


そしておもむろにパソコンで動画サイトを開く。

検索履歴からメイクの指南動画を開いた。

そして机の前に化粧品を置いておく。


「こんなに化粧品置いたの初めてだよね」


そもそもなぜこんなことをしているのかというと、別にもうすでに自意識まで完全に女に落ちたとかそういうのではない。

自意識は未だに男のそれである。

じゃあ何故こんなことやってるかというと、謎のプライドのせいであった。

男の時代に女の子はこうあるべきだという押しつけを心の中で行っていたがゆえに、なまじ現在の体が女である以上、それ実行しなきゃいけないんじゃね?的な状態になっているのである。

で、結果として化粧頑張ってみるという方向に進んでいった。


「えーっと、まずは…?皮脂を取りましょう…ふんふん」


あぶらとり紙で顔をペシペシとぶっ叩いた後、化粧水やクリームなどで肌の保湿を行う。

動画を参考にひたすら見よう見まねで化粧をしていく。

未知のそれであるが、まあこの辺は経験あるのみである。

下地やファンデを塗ろうとしたあたりで自身の肌と取り寄せた色が合わないような気がして手を止めた。


「あれ、なんか違う気がする……んーでもとりあえずつけてみるしかないかぁ」


と言いながら顔に化粧を行ない、しばらくして鏡で確認する。

残念ながら聞ける相手も今はいない。

咲希とかこんなのやってるわけないので。


「やっぱりなんか違うよねえ…こういうのは流石に自分で選ばないで明日稜子ちゃんとかに聞いてみようかな…」


渚の肌は渚が思うよりも白く血色も良かった。

今回買ったベースの化粧品が思いのほか暗く、結果として鏡に映る顔はむしろ不健康な感じになってしまっていた。


「よしやめよ!明日全部聞けばいいよね!そうしよ」


そう言って、箱から化粧落とし用のシートを取り出して顔を拭いた。

稜子に聞けばなんとかなるだろの期待をこめつつ。


「結構緊張しながら慎重に選んで買ったけど、流石に初心者が簡単にできるようなことじゃないてことなのかなぁ」


と言いながら鏡をみる。


「おはよう!元気にしてた?私はね元気だよっ」


なんとなく鏡に向かっていつものテンションで話しかけてみた。


「うっ、可愛い女の子がめっちゃ元気な顔で挨拶してきた……でもオレなんだよなあぁぁ」


両手で顔を塞ぎながら悶える。

そしてもう一度鏡に顔を向けた。


「はよっ、元気にしてたか?……ぁぁああ似合わねえ、似合わねえよこの顔にそれえぇ」


男っぽい感じでもう一度鏡に話しかける。

結局悶えた。

死ぬほど似合ってない。


「そうだ。お風呂入ろ、それで落ち着こうそれがいいよね」


鏡に対して自爆しながら洋服ダンスを開ける渚。

いつも着ているいたって平凡なネグリジェを取り出す。


「いっつも思うけど…なんで、パジャマ無いんだろう…」


別に渚の趣味ではない。

いや、まったく趣味でないわけではないが、あくまで2次元キャラに対しての話であって自分に対してとかもってのほかである。

最初っからあったのがこれしかないのである。


「まあ…ネグリジェはいいんですよネグリジェは…問題はさ…」


そのまま下着の入っている方のタンスを開ける。

滅茶苦茶カラフリーでファンシーな感じのショーツ類が顔をのぞかせた。


「このカラフルな下着なんだよなぁ…こんなの、着れるわけないじゃん」


着ているが。

これしかないので。


「しかも、見られたし。私の趣味じゃないのに…」


声にならない叫びをあげつつ顔を押さえて悶えた。


「絶対もっと大人しいの明日買ってやる…!」


謎の決意を胸に風呂場に向かう渚であった。



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