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看板娘始めました  作者: 暗根
本編
19/177

呼び出し

「んー渚、今から洗濯?」


「うん。洗濯機終わったから今から干すとこ」


「そうか、頼んだ」


「あいあい」


民宿しろすな2階。

洗濯担当の渚が洗濯機から取り出した洗濯物を抱えて2階へと上がってきた。

2階にはテラスになっている部分があるので、基本的に洗濯物は全部ここで干されている。


「もうちょっとしたら風呂場洗いに行くかー」


そう言いながら咲希が向かう先は自室のベッドの上。

もはや定位置である。

渚が洗濯物干してる間ではあるが、まあそこは適材適所である。

別に仕事やってないわけではないので。


「んー…そろそろ行こうかな」


数分後。

特に何をするでもなくベッドの上を転がっていた咲希が起き上がる。

ちょっと髪がぼさったが、そこはさっと手で直した。

今のところ、客が来るようになってからは特に、掃除をサボったりしたことは無い。

まあその辺は真面目である。


「渚はまだ干してるんかな」


テラスサイドで音がしてるのでまあまだいるのだろう。

その日に出る洗濯の量でその辺の時間はまちまちである。


「あとでどうせ掃除もするけど、まあいいか、それはその時取りに来れば…!」


独り言を言いながら階段を降りようとした咲希が止まる。

次の瞬間には叫んだ。


「ちょ、ちょっとっ!待った!」


「え?あ、すいません。声が聞こえてなかったみたいだったので」


「ここ、プライベートルームです!」


まあ思わず叫んでも仕方ないと思われる。

今泊っているお客の男の方が丁度階段を上がってくるのが見えたので。

なお声は本当に聞こえていない。

咲希が何かやっていたわけでもないので、声が小さかったのかもしれない。

そもそも声で呼ぶシステムが欠陥でしかないのだが。


「あ、そうだったんですか」


「そ、そうなんで降りてもらえます?」


「分かりました。降りますね」


そういえば言い忘れてたような気がしてきた咲希。

というか言ってなかった気がする。


「すいません、私も言い忘れていたかもしれないです」


「いやー、失礼しました。昨日ロビーの椅子に座ってた子がいなかったので呼んだんですけど、応答が無かったのでつい。プライベートルームとは気づかず」


「あっ、ちょっとどこ行ってたのよ!鍵渡してきてって言っただけでなんでいなくなるのよ」


階段を下りていくと、そこにもう一人のお客、女性の方が立っていた。

どうやら男性客の方を探していたらしい。


「いやー、呼んだけど聞こえてないみたいだったから階段上がってた」


「ちょ、え?あそこ上がっちゃいけないんじゃないの?」


「そうだったみたい。あはは」


「あははじゃないわよ!すいません、迷惑ばっかり…」


「いえ、すいませんこれに関しては私もはっきり伝えてなかったので…」


「いえそんな、謝らないでください。それくらい常識的に察しなさいよね!」


「ごめんって」


ヒートアップする女性。

実際にここを管理してる咲希より間違いなく熱くなっている。


「はぁ…全く。あ、そうだ、鍵は結局どうしたの?」


「あ、伝え忘れてた。すいません鍵を預かっておいて欲しいんですけど」


「それ忘れてどうするのよ…」


もうなんか呆れ顔になってる女性。

男性サイドは気にしてないのか気づいてないのか。


「ああ、はい。どこかお出かけですか?」


「はい。海に彼女と一緒に」


「…まあ、せっかくここまで来たので、最初からそのつもりだったんです」


「ああ、そうだったんですね。この辺、海、綺麗ですから」


「綺麗ですよねー。ここに来るときに見たんですけど、下が透き通って見えましたし」


実際、綺麗である。

咲希もここに飛んできた時、最初に海を見たときの感想はそれであった。

なおまだ泳ぐ勇気というか水着になる勇気が無かったのでまだ泳いだことは無い。

渚も同様である。


「私たち住んでるとこ海が無いから、こうやって休暇ぐらいしか海で泳いだりできないんですよね」


「あーそういえばそうですよね。海無し県」


「そうそう、海無し県」


咲希は住所の記入を見てるのでどこから来た人物なのかは知っているからこの発言である。

まあ最初住所を見たときはそんなこと考えてなかったが。


「だったら存分に楽しんできてくださいね。この辺、海くらいしか無いですけど、海は間違いなく最高ですから」


この辺に何があるかを一言で言えば海くらいしか無い。

あと家と神社、スーパーが一つくらいなものである。

観光スポットとか言い出したらほんとに海くらいかもしれない。

少なくとも咲希が知る限りでは。

なおほんとに最高かは泳いでないので知らない。

適当である。


「じゃあ鍵確かに預かりましたので、また帰ってきたときに呼んでください」


「はい、分かりました」


そう言うと2人は玄関口から外へと出て行った。

2人が玄関口から消えるのを見届けて2階へと戻る咲希。

想定外の事態だったのでそもそも風呂場掃除の用意ができていない。


「あ、渚」


「あれ、咲希姉。もうお風呂掃除してると思ってた」


「するつもりだったんですけどね?用意していこうと思ったらこうそこの階段から男の影が」


「え、男?」


「いやまあ、お客だったんだけどね。呼んでたらしいんだけど応答無いから上がって来たとさ」


「でもここ上がっちゃダメって言ってたんじゃないの?」


「言ってたつもりだったけど言ってなかったかも」


「ダメじゃん」


「忘れてたんだよ。…関係者以外立ち入り禁止って札立てといたほうがいいかもなあ」


見切り発進故の事故である。


「そういえば、なんで呼ばれたの?」


「ん、鍵を渡したかったらしいよ。昨日はお前が下にいたからよかったみたいだけど。今日はいなかったから呼んでたんだとさ」


「へー。じゃあ今日も出かけるんだねお客さん」


「うん、なんかね、海行くってさ」


「海かぁ。昨日はお買い物しに行ってたみたいだったけどなぁ」


「え、この辺にそんな買い物する場所なんてあった?」


「電車使って行ったみたいだよ?」


「あー…だよね」


「この辺だといつものスーパーとか個人商店くらいしか無いからね」


「ですよね」


実際そんなもんである。

最初ネットで地図出したときは戦慄した2人である。

元々まだ都会寄りの場所で生活していたので。


「それで、今日はいつ帰ってくるの?お客さん」


「ん?え、帰った時に呼んでもらうからいいんじゃね?時間」


「でも、それこそ帰った時にまた声が聞こえなかったらさっきみたいになるのでは?」


「…確かに」


「ちょっと咲希姉!そういうところっ!」


珍しく怒られる咲希であった。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] ほぉ?神社ですと? さては同じ世界線だったりして… それにしてもこの姉ちゃんの駄目っぷり! さては天然キャラだな!
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