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看板娘始めました  作者: 暗根
EXTRA
175/177

水族館

「うわー水族館って何年ぶりに来たんだろう」


「俺も来るの久しぶりだなぁ…小学生以来かもしれない」


休日。

渚と明人の2人は水族館に出かけていた。

なんのことはない。

いつものデートである。


「でもこの辺って水族館あったんだね。言われるまで知らなかったよ」


「まあ有名ってほど有名でも無いからなぁここ。それでも、一応電車で来れる距離だったから昔はたまに来てたかな」


「私も昔住んでた場所には、大きな水族館があったから、偶に行ってたなぁ」


「へーそうなんだ。そういえば、渚って元々どこ住みなんだ?ここの近所なのか?」


「ううん、全然この辺じゃないよ。車だと大体…6時間くらいかかるんじゃないかな」


「6時間!?滅茶苦茶遠いな…え、ということはもっと都市の方に住んでたのか?」


「太平洋ベルトのど真ん中かな…」


「うわ、大都市じゃないか。…よく今の場所の生活やってけてたな…」


「来た時は大変だったんだよ?場所分からないし、田舎だし、地名見ても何にも分からなかったんだから!」


「やっぱりか?だよなぁ、コンビニ一軒しかないもんなあそこ」


「私にとってコンビニはさ、歩いて1,2分のところに2,3軒建ってるイメージだったんだよ!それこそ、レストランとかも歩いて5分以内にはあるイメージだったんだよ!それが、突然ああいう場所に飛ばされたもんだから、最初はほんとにどうしようってなったんだよ」


「うわぁ、そういう生活憧れるな。ほんとにあの辺宿しかないもんなぁ…」


「まあうちも宿だしね」


「確かに。よくお世話になってます」


「お世話しております。それにこちらこそお世話になっております。これからもよろしくお願いします」


「今後ともごひいきに。じゃあ行くか、水族館」


「うん」


□□□□□□


水族館の中を2人で手を繋いで歩く。

定期的に水槽の前で渚が止まって、中の魚を眺めていた。


「渚、魚好きなのか?見るのは」


「全然?興味ないよ。でもこういうところ来ると、ついつい見ちゃうんだよね」


「そうなのか。いやまあ、あんだけ魚嫌いなのに見るのだけ好きって言われても困惑するけどさ」


「まあ別に魚は味が好きじゃないだけだしね。特別好きってわけじゃ無いだけかな。それこそ私は動物園であっても美術館であっても同じ回答をするよ?」


「そうか?…まあこの辺動物園と美術館無いけど…」


「なんというかこういう場所来ると、ついつい興味なくても見ちゃうんだよね」


「つまらなさそうに回られるよりもそっちの方がいいかな。話せるし」


「ふふふ、それなら安心して明人君。私はどんなに興味がない物でも、出かけ先だったら、何故だか興味が出るし、すごく楽しく感じれるから」


「それならデート先には困らないな?」


「そういうことです」


再び水槽の方に目を向ける渚。

そんな渚の方を明人は見つめていた。

渚の方はというと、魚の説明を読むのに夢中で、そんな風に明人が見ていることなど知る由も無かった。


□□□□□□


しばらく時間が経って。


「イルカショーかぁ、見たことあったかな俺…」


「流石にあるでしょ。それにしてもイルカショーってホントにどこにでもあるんだね」


「確かに世の水族館行けば大体あるイメージ…想像だけど」


「ここはイルカに触らせてもらえる時間とかあるのかな?」


「渚のとこはあったのか?」


「無かったかな。でも旅行に行った時とかに触れる水族館とかあったから、ここはどうなんだろうって思っただけ」


「どうなんだろ…パンフに書いて…ないか」


「あ、触れるみたい。調べてみたら、SNSに口コミで書いてある」


「へーそうなのか。渚触る?」


「触れるならもちろん。私は全力で手を挙げるよ」


「あれ、てっきりやらないかと思った。イルカ好きか?」


「今は好き」


「どういうこと?」


半笑いで明人が聞く。


「ほらさっきも言ったけど、出かけたときは興味がない物も興味がわくし、普段何も思ってないものも好きになれるんだよ」


「便利だなぁその感覚」


「それにほら!ここに来る前だったら、絵面的にちょっとイルカを触りたいってはしゃぐのははばかられたけど、今ならちょっとくらいはしゃいでても許される気がするし!」


「イルカに触るのに貴賤は無いと思うけどなぁ…」


「ちっちゃい子を差し置いて、大の大人がはしゃぐのってどうかなって思ってたんだよね。女子高生だったら挙げてても白い目で見られないでしょ?」


「うわー立場乱用ー」


「当たるかどうか分からないから乱用じゃないもん」


「まあ、その時はカメラマンになろうかな俺は」


「変なとこは撮らないでね」


「イルカ触ってる絵面の変なとこってどこだ逆に」


「緩んでる顔とか」


「~♪」


そうしてしばらくして、実際イルカショーが始まり、イルカを触れる番までやってきた。


「あ、やるっぽいぞ渚」


「分かってる!やるぞ!」


「気合の入りかたすごいなぁ今日」


その辺まで話したところで、ショーのスタッフが声をかけた。


「イルカに触って、見たい人ー!」


「はいはいはい!!!」


至る所から手が上がる。

もちろん渚も手を挙げた。

滅茶苦茶勢いよく、声を上げながら。

さながら勢いだけなら小学生のそれと変わらない。

低学年の教室のそれである。


「では…そちらの黄色いレインコートを来た真ん中の男の子と、真ん中で仲良く座っている、白い服を着た2つ結びのお姉さん!前へどうぞ!」


「お!?ほんとに選ばれたぞ渚!」


「やった!行ってくるね!」


目が珍しくキラキラしている渚。

それを見た明人が物凄い笑っていた。

渚がイルカに攫われて行って、一人席に残された明人。

とは言え明人も明人で、渚がイルカに触るシーンを写真に収めようとしているので、ぼーっとしているわけでは無い。

自前の携帯をカメラモードにして高倍率カメラを構えていた。


「くそ、中々ピントが合わない…いい携帯買っとけばよかったか」


明人が一人で悪戦苦闘していると、渚がイルカに触る番がやって来る。

すると何やら渚とスタッフが会話をしている様子。

渚の下がロングスカートであったため、そのことについてのようである。

何やら話し終えると、おもむろに渚が、スカートのすそをめくりあげた。

ちょっとどよめきかける周辺。

当然その中には明人も含まれる。


「ちょ、渚、なにやってんだ!?」


まあ実際は少し上げただけなので、そんなヤバいことになっているわけでは無い。

が、やっぱり急にロングスカートの裾を上げ始めたらそりゃ気になりもする。

そんな風に明人の内心がざわめいていることなど露知らず、渚はマイペースにイルカに触っている最中であった。

顔がにまーっと溶けている。

表情だけで楽しんでいるのが分かる。

そんな表情を確認した明人は慌ててシャッターを下ろしていた。

このためにカメラ構えていたようなもんである。

それからしばらくして、やることを終えた渚が席へと帰ってきた。


「ただいま。ちょっと手が生臭いかも」


「イルカと触れ合った感想いきなりそれか?」


「感想は触ってる途中にマイクで答えたもんね。これは終わった後の感想だよ」


「途中渚がスカート捲り始めたせいで心穏やかに見てられなかったんだが」


「ああ、あれね。スタッフさんとどうしようって話してて、ちょっとくらいなら濡れてもいいですって話をしてたんだよね。でもまああんまりずぶぬれなのも嫌だったし、ちょっとくらいいいかなって」


「急に渚が痴女になったのかと」


「流石に見えないようには気を付けたよ」


「おじさんどよめいてたぞ」


「あはは、そうなんだ。それはうんなんか、ごめんね?」


「いや謝るよりももうちょっとその辺自覚をだな…」


「自覚?」


「…渚、可愛いんだからさっ!その辺!」


「え、あ、ああ、はい…気を付けます…」


「まあ、おかげでいいもの撮れたけどさ」


「可愛くとった?変なの撮ってない?」


「ん?秘蔵写真になりそうなのは撮ったぞ」


「なにそれ!?見せて!?変なのだったら消すからね!」


「えー…どうしよっかな」


「見せないと明日お弁当作ってあげないから!」


「ああ、それは困る。見せるよ」


と言いながらスマホの画面を差し出す明人。

そこにはとろけ顔の渚が写っていた。


「うわぁ!やっぱ変な写真じゃん!消して!」


「ええ?可愛いと思うんだけどなぁこれ」


「変だよ!顔緩んでるし!だらしないし!」


「それがいいんじゃないか」


「ううー…他の人には見せないでね」


「大丈夫、秘蔵写真にするからさ」


その後もショーが終わるまで十二分にいちゃついた。


□□□□□□


そして水族館を一通り見て、帰り道。

電車に揺られて、後は渚の家まで明人が送るだけというところまでやってきた。


「いや、今日は楽しかったな。また、こういうとこ行ってもいいかもな」


「そうだね。凄い楽しかった。お土産もついつい買っちゃったし!」


「結構買ったよな?袋一杯じゃないか?」


渚の片手にはパンパンになった袋がぶら下がっていた。

なお面積の大半を占めているのはぬいぐるみだったりする。


「ひとめぼれだったんだからしょうがないじゃん。可愛いんだもん」


「なんか渚ぬいぐるみのイメージ無いんだけど、気のせいか?」


「私もあんまり買うイメージ自分に持ってないよ。でもこれは!目が!目が買ってって言ってたから!」


「急に小学生女子みたいな発言が来たな」


「分かってないなぁ明人君は。こういうのはシンパシーで買うんだよ。この子が呼んでたんだよ。だからしょうがない」


「渚とぬいぐるみならまあ…合いそうだからよしとする」


「なにそれ」


そう言って笑う渚。

それを見て明人も笑う。


「次はそうだな、遊園地とかも行ってみたいな。この辺無いから遠出になるけど」


「いいね!私も行ってみたいな遊園地」


「ああいうの最初に行くべきなのかなって思ってたんだけど、この辺無さすぎてさ。また行ける時間ができたら行こう」


「じゃあ帰ったら予定見るから、行ける日決めよ?」


「おいいな、そうするか。じゃあまた帰ったら俺から連絡するよ」


「うん、分かった」


そのまま民宿「しろすな」前まで到着する2名。


「じゃあ明人君、また明日ね」


「ああ、また明日な渚」


そうして、夜は更けていった。


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