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看板娘始めました  作者: 暗根
本編
143/177

映画

投稿順をミスったので同時公開します

というわけで映画館の中に入った渚と明人。

とりあえずまずは席探しである。


「えーっと…席は」


「えっとね、後ろの方だよ。あの辺じゃないかな?」


「だいぶ隅っこだな。渚目はいいんだっけ?」


「いいよ!すごくいいよ!」


力強くそう言う渚。

こっち来るまでは滅茶苦茶悪かったので今の目がいいのは誰よりもよく知っている。


「えーっと…え、ここ?」


とりあえずだいたいの位置が分かったのでそこに向かってみれば、まあ当然カップルシートがそこにあるわけである。

当たり前のように中央のひじ掛けが無いうえに、なんなら完全に席が繋がっている。


「思ったよりも席、狭いね」


「…あ、やっぱ思うそれ…狭い、よなぁこれ…」


2人の目の前の椅子はまあ1人で座れば広いのかもしれないが、2人で座るには少々手狭な広さである。

恐らく実際に座れば密着とまでは行かないにせよ、ほとんど空間的余裕はない。


「受付の人、真ん中のひじ掛けが無いだけだよって言ってたよね…」


「…言ってたな。…ひじ掛けどころかスペースも無いけど」


「無いねぇ…」


やらかしたなという顔をする渚。

想像以上に狭い。

近い。

大柄2人だったらこれ座れるのかなとか思わずにはいられない。

一方明人はというと、ようやく引いてきた顔の赤みがまた再発していた。


「まーこれなら値段半額っていうのも納得だよね。じゃあちょっと狭いけど映画始まるし、座っちゃおっか」


「そ、そうだな」


「あ、ちなみに奥がいい?手前がいい?どっちがいい?」


「俺はどっちでもいいけど、渚は?」


「じゃあ私奥行こうかな」


「じゃあ俺は手前で」


ということで座る2名。

やっぱり間の空間はほとんどできなかった。

そしてそこで渚がある意味重大なことに気付く。


「ポップコーンどこに置こっか」


「あ…確かにこれ中央に置けないな」


そう、このカップルシートは中央部分がまるっきり取り払われているので、置き場がない。

中央に置いて2人で貪るができないのである。


「あー…じゃあ俺が持っとくよ。この辺に構えとけば渚も取れるだろ?」


「あ、ほんとだ、取りやすいかもしれないね」


そう言いながら実際に手を伸ばしてポップコーンを取る渚。

当たり前だがこんな狭い場所でそんなことをすれば当然気を付けても手が明人に触れる。


「あーこっちじゃ神谷君にいちいちぶつかっちゃうね。やっぱり反対側の手で取ろうかな」


そう言いながら逆側の手で取って見る渚。

確かに体が衝突することは無くなった。

が、今度は滅茶苦茶顔が近い。


「お、俺は別にどっちでもいいぞ。結局持ってるだけだしな」


「そう?じゃあ反対側の手にしとくね。いちいち当たると映画集中できないでしょ?」


「…そうだな」


どちらにせよ集中でき無さそうな明人であった。


□□□□□□


映画が始まった。

俺にとってみれば初めて見るタイプの映画だし、内容は割と気になってはいた。

いたんだけど…ちょっと今は映画に集中ができそうにない。

余りにも隣が気になりすぎるから。

渚が近すぎるから。

別に渚が何かしてるわけじゃない。

普通にポップコーン食べながら、飲み物飲んでを繰り返してるだけだ。

だけなんだけど、そう、だけなんだが、今そのポップコーンは俺が持ってるわけで。

手が伸びるたびに渚が大きくこちらに近づく。

というかただでさえ近すぎると思って、ちょっと受付の言葉を恨んでるって言うのに、渚はそんなのおかまいなしだ。

渚が近づくたびに渚から放たれるいい匂いがしてきて、俺の集中をかき乱す。

正直映画どころじゃない。

もうさっきから映画が何やってるのかよく分からない。

渚の方に自然と顔が向いてしまう。

そんな渚は映画に集中していてそんな俺のことには気づいてなさそうだけど…

結局俺は渚のこと、どう思ってるんだろうか。

なんでこう気になるんだろうか。

よく、分からない。


□□□□□□


映画終盤に差し掛かってきたあたり。

明人が色々とあわついているところ、渚が何やらモゾつき始める。


「…どうかしたか渚」


小声で渚に聞く明人。


「えっとね…あの、ね。ちょっとだけ、トイレに行きたくなってきた」


「えっ、トイレ?」


今までで一番恥ずかしそうにそんなことをのたまう渚。


「でも、映画がぁ…いいとこだから行きたくないぃ…」


「いや、でも、それ決壊したら洒落にならないって。退くから行きなよ」


「じゃあもうちょっと限界になったらぁ…お願い…」


既に声は限界が近そうである。

手はグーパーと謎のムーブをしながら尿意を抑え込もうと必死である。

早速横の明人も映画どころではない。

気になりすぎる。

純粋に心配そうな目で渚の方を見ていた。


「…はぁ…ふぅ…はぁ…」


そのうちあえぎ声みたいなものまで漏れだす始末。

色々な意味でヤバい。


「渚、流石に行けって。トイレもそこそこ距離あるぞ」


「だってぇ…!あと、ちょっと…!」


すがるような目で明人を見る渚。

明人の目が滅茶苦茶泳いだ。

そして間髪入れずに立ち上がった。


「行けって。結末見とくからさ、流石に不味いよそれ」


「絶対だよっ絶対見といてね…!」


さながら今見てる映画のワンシーンみたいなこと言いながら渚が席をようやく立った。

そのままよたよたと歩いてトイレに向かって行った。

明らかに限界であった。



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