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看板娘始めました  作者: 暗根
本編
141/177

見る目

映画に行く当日。

渚は待ち合わせ時刻の5分ほど前に待ち合わせ場所に現れた。

待ち合わせ場所には既に明人が待機済みであった。


「お待たせー。待った?」


「30分くらい?」


「え?どうしたのいつもより早くない?ほんとに待たせちゃったみたいでごめんね」


普段の明人の待ち合わせ場所に現れる時刻は早くてもだいたい15分前である。

明らかに早い。


「ああ、なんか思った以上に早く来すぎただけだから気にしないでくれ。余裕持って出すぎた」


「あの映画そんなに面白そうだったかな。そう思ってくれたなら良かったけど」


「ああ、映画…ああそう映画か。そうそう」


「あれ、それとも他に何か行きたい場所でもあった?映画終わったあとだったら時間あると思うから付き合うよ」


「いや、そういうわけじゃ無いから大丈夫」


「そう?ならまあ、今日はよろしくね」


「ああ、よろしく?」


そういうととりあえず電車が来るまで時間があるので待つ2名。

座っていると、隣からちらちら視線を感じる渚。


「どうかした?」


「あっ、え、何が?」


「いや、さっきからちらちらっと視線を感じるから、何か聞いときたいことでもあるのかなと思って」


「いや、その…今日珍しくスカート長いなって思って」


「ああ、そういうことか。これね、この間買った服なんだ。帰り寒いかなーと思って。似合わないかな」


「いや全然!似合ってるって!」


「ありがとう。でも、どうしたの?なんか今日テンションおかしくない?」


「え、そ、そうか?」


「そうだよ、いつももうちょっと素っ気ないでしょ」


「いや、まあ、俺だって見慣れた格好とか、奇抜すぎる格好だと素っ気なくも言うけど、今日のは、その、なんか普通に見たこと無かったから…」


「ふーん、そういうことかー。じゃあいつもの格好とこっちの格好どっちの方が似合ってると思う?」


「え!?」


「いやほらだって、聞いといたほうが今後服買う時に参考になるでしょ?神谷君、他の女の子がどういう格好してるか知ってそうだし」


「知らないわけでは無いけど、そんなに詳しいわけじゃないぞ?」


「まあ、ほら、知らない私よりはいいんじゃない?それに服のセンスは神谷君の方がありそうだし」


「そ、そうか。…俺はこっちの方が、好きかな。あくまで俺は」


「成程ねー。分かった、ありがとう。今度参考にしてみるね」


「え」


「ん?どうかした?」


「あ、いや…何でもない」


「ああ、別に他意は無いよ。ほんとなんとなくついでに聞いてみただけ」


「そうか。そうか…」


若干伏せ気味にそう言う明人。

残念がっているのがありありと分かる。


「どうしたの神谷君。もしかして神谷君ロングスカートがすごく好きとかそう言う人?」


「すごく…かは自覚ないけど好きなのは確かかな…」


「へーどういうとこが好きなの?」


「短いのよりも清楚な感じ」


「そういうこと?神谷君清楚系が好きなんだね。意外に夢見がちなところある?」


「いや、実際に中身がどうとかまでは言及しないよ。ただ見た目はそっちの方が好きなだけ」


「成程ね。確かに私も清楚系な格好は好きだよ。実際たまには家では着てるし」


「そうなのか?普段の格好ばっか見てるせいか、そういうの趣味じゃないかと思ってた」


「なんていうかロングスカートだと外に行くときには足が動かしづらく感じるからかな。だから家だと穿いてるよ」


「そうなのか。流石にそれは知らなかった。いや、俺の周りでもあんまり見ないけど…」


「まああと単純に短い方が可愛くて好きって言うのもあるけど。夏とかだと涼しいしね」


「可愛い…うん確かに渚似合うもんなああいう格好も」


「でしょ!似合うでしょ!」


その一言で滅茶苦茶明人に近くなる渚。

ちょっとナルシスト入ってる。

ノリとしてはアバターを着飾っている感じに近いが。


「あ、ああ、そう、思うぞ」


少し顔をそらしてそう言う明人。


「ああ、ごめんね。ちょっとナルシストっぽかったかな」


「ま、まあ事実だしいいんじゃないのか」


「神谷君が男の子で良かったって今本当に思ったよ。稜子ちゃんだったら多分嫌味を結構言われてるよ、今の発言」


「ああ、確かに、稜子なら言いそうだ」


「でしょ?で、多分その後説教もされるんだよ絶対。その自覚があるなら外でもう少し気を付けれないのーって言われるんだよきっと」


「…言われそうだな」


「しょうがないよ。だって外に鏡無いんだもん。自分の見た目なんて鏡見なきゃ意識することなんて無いよ。ね?」


「…」


「あれ?どうしたの?おーい」


「ちょっとは自覚してくれ!」


「ええええ!神谷君も言うの?神谷君なら分かってくれると思ったのに!」


「同意しようかと思ったけど無理だって!今だって近すぎて直視できてないんだぞ!」


「あ!ほんとだ、ごめんね。私話が盛り上がると人に近づいてっちゃう癖があるみたいなんだよね。ごめんごめん次は気を付けるよ」


「渚、可愛いんだからマジで気を付けて…ほんと」


「あ、うん…気を付けるね」


明人の顔は赤かった。

若干渚も赤くなっていた。

自覚はしてなかったが。

その辺で電車がやってきた。


□□□□□□


電車に乗って渚が隣に座る。

当たり前のように隣に座る。

さっき近いと言ったのにも関わらず、相変わらず近い。


「神谷君、それでね…」


そんなに近いのにも関わらずこっち向いて笑顔で会話を投げてくる渚。

いつもと同じ、何でもない普通の会話。

渚が近くて俺は困っているっていうのに。


「あ、神谷君、これ、これちょっと見てよ」


話題が止まったと思えば少し携帯をいじって画面をこっちに見せてくる。

近い。

さっき以上に近い。

離れるのも違うと思うからその場に留まれば、渚の顔が、匂いが、強烈に俺に襲い掛かってくる。

ずっと気にしてなかった。

仲の良い友達だと思ってた。

だから近くにいても気にならなかった。

2人でいても気にしなかった。

でも、最近になって思う。

渚は女の子なんだって。




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