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看板娘始めました  作者: 暗根
本編
132/177

タイミング

「えーっと…次いつ会いますかっと」


パソコンをカタカタする咲希。

まあいつもの様子ではあるのだが、ここ最近はあんまり触れていなかった。

だいたい例のあれのせいではあるのだが。

そうして今やっていることはというと、雅彦にメッセージを飛ばしているとこである。

昨日今日ではあるのだが、さっそく咲希の方からアプローチである。

もうなんかそういう仲になったんだからいいだろみたいなノリである。


「というか呼ばなくても別に数日もしないうちに会うだろうけどな」


確かに関係性としては一応彼氏彼女になったわけではあるが、雅彦の仕事先であることには間違いないため、ほっといても一応会える。

というか予定では数日後くらいに来る。


「…でもやっぱどうせならちゃんと会って喋りたいよなぁ」


でもなんかそこはやっぱちゃんと喋る機会が欲しいという咲希。

そもそも事件の発端となった日にはまともに会話できずに帰ってる上、先日告白された時も時間帯とかの問題もあり、それほど長時間の会話は出来なかったので今のところちゃんと雅彦と会話できているのはそれ以上に前のことである。

なので咲希的にはとりあえず一旦彼氏だの彼女だの置いておいて喋りたいなぁという思いが強い。


「まあ…いちゃいちゃはちょっとづつやればいいよね。うん」


ぼそりと呟く咲希。

別にしろと言われたわけでは無いのだが咲希的にはやりたいようである。

案外ノリノリかもしれない。

とそんな感じで雅彦にチャットを飛ばしつつ、一人で色々考えていると、チャットの通知音が聞こえた。

雅彦かなと思い画面を見てみると、残念ながら違った。

個人用チャットに悠太から飛んで来ていた。


「あれ、ランポ?なんだ?」


メッセージに目を通してみれば、今話せる?との一文。

特に何をするでもなく雅彦の返事待ちだったのでいいよと返す咲希。

返した後にあれこれ浮気にならんよねとか考え始める咲希。

経験が無いためどの辺まで他の異性とのコンタクトがありなのか分からなくなっている。

雅彦は束縛強いタイプではなさそうなのが救いか。


「うぃーっす!咲希ちゃんお久ー」


「お久って程お久でもなくないですか?」


一応日付にしてみれば2日ほど。

久しぶりを言うには早いというものである。


「いやー確かに2日前話してるけどまともにゲームできてないからさー話した気がしなくてさー」


「ああ、まあ確かに?いやあの日すいません。次の日に予定入ってたこと忘れてて」


「それはいいんだけどさー。というか聞いてくれよ咲希ちゃん!あの日咲希ちゃんいなくなったから雅彦とやるかぁって思ってたらさ!雅彦の奴まで抜けやがったの!俺取り残されたの!ソロ!」


「あ、なんかそれホントにすいません」


「咲希ちゃんと話したかっただけなんだって言ってどっか行っちまうんだよなぁもう全く。こちとらゲームやる気満々だったのに肩透かしってもんだよな」


「え、私?」


「そうそう。ほんなら個チャ送れよって思わずにはいられなかったわ」


「あはは…」


その日は到底個チャなんぞ送れる状況にいなかったので雅彦のしていることも至極当然なのだが、それを悠太が分かるはずもない。

そもそも付き合い始めたことはおろか、一緒に出掛けたりしたことがあることすら彼は知らないのだから。


「あ、そういや咲希ちゃんはもう大丈夫なん?この前なんか店ヤバいようなこと言ってたけど」


「あ、ああそれなら大丈夫です。昨日くらいに解決したので今はもう普通の生活に戻ってますよ?」


「ああそうなんだ。ならよかったんだが」


「なんでです?」


「いや、ちょっとまた咲希ちゃんのとこ遊び行こうかなって」


「え」


「いやーただ流石にこの前なんか店ヤバい!みたいなこと言ってたしそんな状況でお邪魔できないしなーって思ってて。とりあえず聞いてみた」


「え、あ、ああそういう」


「で、で。行ってもいい?いや、この前普通に楽しかったしまた行きたいなーって思ってんだけど。どうせだし雅彦も一緒に」


「あーあー、ちょっと待ってくださいね。予定見るんでミュートします」


「あーい」


そう言って一時的に音声を切ってカレンダーを見る咲希。

今咲希の頭にぐるぐる回っているのは予定が空いているか、ではない。

今来るのかよ!?である。

予定は正直そんなに激しく埋まっているわけでは無いので普通に呼ぶことができるくらいの余裕はある。

が、雅彦との関係がある以上、どうしようである。

いずれ教える気ではあるが、まだ言ってないので。

それに正直この数週間くらいは雅彦とのことだけ考えるつもりだったので。


「え、どうしよ」


内情はどうあれお客である。

咲希が逃す理由はない。

無いのだが、タイミングが死ぬほど悪い。

雅彦と遊ぶ約束決めようとかやってた矢先のこれなので猶更である。

苦虫噛み潰したような顔になりながらミュートの解除ボタンを押す咲希。


「あーえっと、ちなみに雅彦さんには…?」


「あ、まだ言ってねえ。けどまああいつのことだし来るっしょ?」


言っとけよ畜生!と思わずにはいられない咲希。

多分先に雅彦に伝わっていれば咲希に連絡されているので、なんとでもしようがあったのだが。

本人がいない、知らない状況なので滅茶苦茶困る。

なまじ状況的に受け入れられるのが猶更良くない。

体よく断る理由はあれど、そこは経営主として譲れぬものがあるので。


「えーっと、来週の土日ならまあ…?ただ雅彦さんに了承取ってからにしてくださいよ」


「オッケー!じゃあ久しぶりにお邪魔させてもらうぜ!」


「あいあーい」


適当に返事をしながら裏で雅彦にメッセージを飛ばす咲希。


『雅彦さん。なんかランポさんが来週土日くらい来たいって。雅彦さんと一緒に』


□□□□□□


一方そのころの雅彦。

丁度風呂から上がってきて自室へと戻ったところ。

パソコンの通知マークを見てチャットを開く。


「あ、咲希さんからだ」


少々顔が綻ぶのを自覚しつつ、咲希との個人チャットを開く。

下の方には少し前に咲希から送られてきたメッセージがあった。


『次いつ会いますか?』


「今度か…今すぐ、はもう流石に遅いよな。明日でも…」


その文章を見て明日にでも会えますかと打ち込もうと思った時、咲希からもう一件メッセージが飛んできた。

その一文で雅彦が固まる。


「…悠太。タイミング、悪いって」


別に悠太に罪はない。

むしろ教えてないのが悪いのは知っている。

知っているがもうちょっと咲希のことだけ考えられる時間が欲しかったなぁと思わずにはいられない雅彦であった。



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― 新着の感想 ―
[一言] うわあああランポタイミングが悪すぎるぅ……
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