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看板娘始めました  作者: 暗根
本編
131/177

謝罪

「んー…若干眠いな。やっぱ疲れてたのかねぇ昨日」


昼過ぎ。

掃除を終えて自室でゆっくりしていた咲希。

どこかだるそうにパソコンをいじっていた。

まあ本人曰く昨日のぶちまけでスッキリはしたらしいが、いかんせん初めてのことであったので知らないうちに疲労が蓄積していたのかもしれない。


「ま、今日しっかり寝ればいいや。もう寝づらい悩みも吹っ飛んだし」


そう言って腕をぐっと上に伸ばす咲希。

パソコンの使用で固まった肩をほぐす。

そんな時に玄関のチャイムが鳴る音がした。


「ん、お客さんかなー…?あれでも今日予約は…あった気がするけど早くねえ?」


まあ眠たいのはともかく、お客であるならば対応しないといけない。

席から立つといつものように下の階へと降りていき、扉を開けた。


「…え?なんで?」


当然誰かお客であろうと思って扉を開けた咲希。

その顔がぽかんとした表情で固まった。

何故ならそこにいたのは、ある意味予想外の人物であったので。


「アハハ…こんちはー咲希ー…」


そこにいたのは美船。

雅彦の妹である。


□□□□□□


「全く、びっくりしたやんけ。お前もチャイムを鳴らすという行為ができたんだな?」


「そりゃ、まあ、する時はあるよ?そりゃね?アハハ…」


「できれば毎回やってほしいんだけどなぁ?」


『しろすな』2階。

なんだかぎこちない笑みを浮かべる美船をとりあえずいつものリビングにまで通した咲希。

いつもなら知らないうちに2階に上がってきている美船であるため、このようにチャイムをちゃんと鳴らして入って来るのは珍しい。

それに大体入って来た時は咲希にウザがらみをかましてくる美船が、静かに座ったままなんだか落ち着かなさそうにそわそわしているのとか咲希も見たこと無いため、若干反応に困っているところである。


「え、何かあった?」


「な、ななななな何のことで?」


「動揺が一ミリも隠れてないんだが?というか押し掛けずにわざわざチャイム鳴らして入って来た時点でおかしいとは思ってたけど、何の用だよ?絶対いつもみたいに適当に来たわけじゃ無いだろ?」


昨日の渚以上に盛大に動揺している様相を醸し出す美船。

分かりやすすぎてわざとじゃないかと思いたくなるレベルである。

軽く突っ込んでみれば目を見開いて驚いた顔の美船。

バレないと思っていたらしい。


「…いや、咲希?あ、あのさ…」


「なんだ?いやに改まるね」


「その、えーっと…き、昨日ね?兄貴がね?…あのー」


「あ、そのことか」


察した咲希。

というかこのタイミングで改まって訪ねて来た時点で何となく予想はついていたがその通りであった。


「え、雅彦さんから聞いた?」


「聞けなかったから聞きに来たんだって!」


「ああそういう」


「夜に突然ちょっと出てくるってだけ言って出てってさ。なんか帰ってきたら妙に機嫌良いんだもん。で、聞いてみたら咲希と会って来たって。なんかあたしも察しちゃったからそれ以上聞けなくて…わざわざ呼び出したってつまりそういうことなんじゃないの咲希?」


「ん、まあ、そのつもりで呼び出して、雅彦さんの方に言ってもらったよ」


「やっぱり?やっぱり?で、で、返事は?」


「ん、オッケーしたよ」


その言葉を聞いて座っていたソファーから身を乗り出して咲希に顔を近づける美船。


「マジで!?え、いや、兄貴のあの妙に機嫌がいい感じはそう言うことかなとは思ったけど、ほんとに!?」


「ほんとだって、え、そんな驚くところかそこ?」


「だ、だってさ、いやこの前咲希にぽろっと兄貴のこと漏らしてから1週間も経ってないよ!?早くない!?え、というか兄貴に好きかどうか聞いてから3日経ってないよね!?早いって早いよ!?」


「ちょちょちょ、落ち着け落ち着け」


テンションが上がってきた美船をなだめる咲希。


「というか私が雅彦さんに聞いちゃったこと知ってたのか」


「うんまあ一応…いや、そんなことになったって聞いたからあたしも一応責任感じてて…どうやって2人の間取り持とうか考えてたら突然兄貴がご機嫌で帰ってきたからもしかしてと思ってさ」


「あ、雅彦さんもおかしかったりしたのか」


「ここ数日なんだか心ここにあらずみたいな状態だったよ?それが急に感情を取り戻した感じだったんだもん」


「そうだったんか。なんだ、似たような状態だったんだな」


「…というか咲希はいいの?兄貴で?」


「ん、いいけど、なんで?」


「だって、咲希もっといい男くらい作ろうと思えば作れるでしょ?こんな短期間で兄貴選んじゃっていいの?」


「いやそれは買い被りだって…恋愛したこと無いのにそんなポンポン相手作れるかよ」


「それでも!実際どう思ってるの?なんかあたしの発言のせいで流されちゃったなら兄貴ボコしてでも止めるよ?ほんとにいいの?」


「いややめてあげて。まあ、美船の話で意識し始めたのは間違いじゃ無いけど、ちゃんと考えて付き合うって言ったんだからさ。雅彦さんは悪くないって」


そこまで聞いた美船が張っていた気を緩ませたようにソファーへと体を戻した。


「そっか。…ならよし!咲希がそう言うならあたしは2人のこと応援するからね!なんかあったら言ってよ!」


「ああ。…なんだよわざわざ改まって来るから何かと思ったじゃん」


「いやだってぇ、今回のことの発端完全にあたしじゃん。あたしが咲希に余計なこと言ったところから始まってるじゃん。これで変に仲が壊れたりしたらどうしようって思ってたんだよ?おかげで夜しか寝れない体に」


「普通に寝てるじゃねえか」


「まあそれはそれで。うんうん、でも咲希と兄貴かぁ。あ、兄貴が何かやらかしたらすぐ言ってよ!裏でぼこぼこにするから!」


「いや、しなくていいって…というか美船は嫌じゃないの?」


「え?何が?」


「いや、だって仮にもお兄さんが友達と付き合うって話だろこれ?なんか思ったりしないの?」


「うん?兄妹ではあるけどそこは全然。だって咲希ならあたしもどういう人物か知ってるからどこの馬の骨だか分からないのと一緒になられるより安心って感じ?だからあたしは全然応援してるからね!」


「そういうもんなのか…」


と、そこまで話して空気がいつものノリになってきたあたりで美船が何かを思いついた顔を見せる。


「あ、そうだ。やってなかった」


「何を?」


そう言うと美船がソファーから降りて床に正座すると咲希の方へと向き直った。


「え?何?何?」


「今回は余計なことを言って混乱させて誠申し訳ございませんでしたー!反省してまーーーす!」


「ちょ、やめろ!私が変なことさせた人みたいになるだろ!頭上げろおい!」


美しい土下座をかます美船がそこにいた。

顔は笑っていた。


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[一言] モニターはモノクロでいいからモニター付きインターホンに変えようず
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