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看板娘始めました  作者: 暗根
本編
126/177

怒る

3時ごろ。

渚がいつもの買い物を終えて鼻歌交じりに「しろすな」へと帰ってきた。

そのままいつものように玄関を開く。


「ただいまー!我が…-さ、咲希姉?」


「…あ、お帰り」


「え、あれ?大月さんと出かけてるんじゃなかったっけ?」


「いや、出かけてた。こんな早く帰る気なかった」


「そっか。とりあえず中入りなよ」


「…そうする」


で、キッチン。

物凄く沈んでる雰囲気の咲希にお茶を出す渚。

咲希は机に突っ伏している。

とりあえず渚が対面に座った。


「何があったの?」


「いや、あのさ、先日美船に言われたことあるじゃん」


「あったね」


「それを本人に聞いてしまった」


「そういう…ことかぁ…それで?」


「…直球で好きって返されたんだけどどうすりゃいいの?」


「そっかぁ、大月さんの気持ち聞いちゃったのかぁ…」


「…お互い顔見れなくなって、急遽帰還」


「とりあえずお疲れ様…」


「おう…あ、ありがと」


その辺でようやく顔を上げる咲希。

お茶の存在にようやく気づいたらしくとりあえず飲む。


「咲希姉ちょっと前から悩んでたもんね」


「初めてだもん悩むわ」


「それで?言われた感想は?」


「…面と向かって言われたせいでめっちゃ恥ずかしい。というか驚いて固まった」


「そっかそっか。恥ずかしかったのか。でも答えは何となく分かってたんでしょ?それでも驚いたの?」


「何、正直半分信じて半分嘘だと思ってたから。いやもう本人から言われたら信じざる得ないじゃん」


「信じるも何も答えだしねえ」


「いやもう、どうしよ。マジで、今後どういう顔して会えばいいかマジで分からん。普通の調子で会話できるんだろうか」


「成程、大月さんの答えを聞いちゃって、びっくりしちゃって後になって後悔してたってわけね」


「ほんと勢いで聞いてしまった。自爆。アホやで」


「まあそれは咲希姉が悪いよね」


「我ながら過程を吹き飛ばした気がする」


「普通は見極めながら徐々に近づいて行って確信持ってから聞くものだしね」


「そもそも無理矢理答えを聞くものでもないよね…」


「まああまりお勧めはしないよね。でもそれでいつまでも悩むようだったら聞くのもありなんじゃない?」


「…実際もやもやしてたんだよね。だからこそ聞いちゃったんだけど」


「まあとりあえず無理にいつも通りに振舞わなくてもいいんじゃない?むしろ普通に振舞った方が変だよ」


「そんなもん?このままだと俺変な人になりそうなんだけど」


「いいんじゃない?変な人で。元々咲希姉は傍から見れば変わっているような人だし」


「もっとおかしくなりそう」


「例えばどんな感じに?」


「よく分からんけど。でも既に今日の段階でなんか話半分耳に入ってこない状態だったんだよね。さらに悪化しそう」


「それ以外は何にも変わらない?」


「…いやもう正直分かんない。初めてすぎてまず心の整理がついとらんわ。どう整理したらいいのか分からんもん」


「そっか。最後に一つ聞きたいんだけど、嫌な気分とかは無い?」


「全く。むしろ嬉しいわ。困る」


「なら、いいや。咲希姉もう部屋に帰りな。それでお風呂にでも入ってきなよ」


「…分かったそうする。長風呂になるかも」


「いいけどのぼせないでね」


「のぼせはしないけど知恵熱出そうだよ全く…」


そう言うと咲希はいったん自室へと向かって行った。

風呂の用意持って降りてくるのだろう。


「はぁあああああー。完全に恋煩いじゃん。とりあえずしばらくそっとしといたほうがいいかな」


ちらりとスマホを見る渚。

美船に今のことを問い詰めるか悩む。


「大丈夫かな咲希姉。いや大丈夫じゃないんだけどさ。まさかこんなに早く展開が進むなんて思わなかったよ」


流石に誰も予想できまい。


「ほんとはもうちょっと仲良くなってから大月さんにちゃんと言ってほしかったんだけどなぁ。あのままで大丈夫なのかなぁ」


そう言いながら美船に電話する渚。

そう大してかからないうちに美船が電話に出る。


「おはようございます。美船さん」


「お、やっほー渚ちゃん。どったの?」


「お兄さん帰られてますよね?」


「え、なんか口調いつもと違くない?どしたんよ。帰ってるけど」


「いつもと雰囲気とか違くないですか?」


「んー兄貴がか?…ああでもなんかお帰りとか言っても生返事だったなぁってくらい?」


「あぁー…やっぱりそう言う感じなんですね」


「え、何々何があったの?」


「美船さん、自分の胸に手を当ててもらっていいですか?」


「へ?」


「美船さん咲希姉にお兄さんのこと話しましたよね」


「兄貴の…?ああ、数日前に確か少し」


「ちなみにどんな話したかって教えてもらってもいいですか?」


「え、兄貴がなんか咲希と会うと喜んでるとか好きとかどうとか」


「なにやってるんですか!!」


「え、うわちょ、耳。え、え、どういうこと?」


「私があえて言わなかったのになんでそんなこと話しちゃったんですか!」


「え、え、だ、だって流石に本人も知ってるはずじゃ…」


「あの恋愛未経験の咲希姉ですよ!知るわけないじゃないですか!」


「え!?経験ないの!?」


「ないです!だから言わなかったのに!」


「うそぉ!?」


「嘘じゃないです!ずっと遊んでたのになんで気づかないんですか!咲希姉がそう言う知識あるように見えた場面ありました!?」


「え、え、いや話したことはあったけど流石に冗談かなって…え、咲希が?ほんとに?」


「ほんとですよ!ほんとだから大変なことになってるんじゃないですか!何してくれてるんですか!」


「うわぁ…マジか。それは…やらかした」


「そもそもお兄さんが咲希姉のこと好きなのは明らかにばればれでしたけど!それを本人のいないとこで言うのは流石に駄目だと思います!」


「…え、今咲希どうなってるの?」


「お兄さんにそのこと聞いたみたいで、恋煩いに陥ってます」


「聞いたの!?」


「そうなんですよ!聞いちゃったんですよ!あの人!」


「…あ、だから兄貴もなんかおかしかったのか」


「そうです。そういうことです。見守る気満々だったのに!急展開すぎてどうなるか分かんなくなっちゃったじゃないですか!」


「流石にそうなるとは予想してなかった…どうしよ」


「私もどうしていいか分からないです。せめてお兄さんがもうちょっと決心固まってくれてる状態だったら良かったんですけど…」


「まあ、兄貴割と本気っぽいからそこは大丈夫じゃないかなぁ?まあ今度咲希には謝っとく!ゴメンネ!」


「はぁ、とりあえずそういうことなんで、よろしくお願いします」


「はぁい。兄貴は任せとけー」


その辺で電話が切れた。


「はぁ…どうすればいいんだろう。まぁ、いいや。とりあえず食材冷蔵庫に入れよ…」


とりあえず一旦思考放棄する渚であった。






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