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看板娘始めました  作者: 暗根
本編
121/177

ぶっちゃけトーク

「渚、何やってんの」


夜。

風呂から上がってそろそろ2階に戻ろうかと咲希が考えていたところ、台所の明かりがついていたので行ってみれば、渚が何やらごそごそやっていた。


「ケーキ作ってんの」


「え、また?俺の誕生日まだやぞ」


「え、ああ、ううん。咲希姉のじゃなくて神谷君の誕生日のだよ」


「え、ホール?マジ?あれ他の人の誕生日に持ってくんか」


「知ったの最近だったし、プレゼント買ってる余裕もなかったから食べ物が一番いいかなって」


「手が込んでるのか雑いのか分けわからんな」


「手は込んでるけど考え方が安直ってところかな」


「ん、ということは何、あいつ来るときに直渡しすんの?」


「違うよ。明日神谷君家で誕生日パーティーがあるからそこに持ってくんだよ」


「へー。そういうの呼ばれる仲までなってんの」


「いっつも遊んでる子たちに誘われただけだよ」


「え、ということはそいつの家行くの?」


「うん、行くけどどしたの咲希姉。凄い気にするね」


「いや襲われねえかなって」


サラッとそう告げる咲希。


「襲われるわけないじゃん。他にも人いるんだよ」


「こう他の人帰ったタイミングで」


「一緒に帰るってば。何考えてるの咲希姉。大丈夫?」


「いやだってあいつイケメンだけど男だろ?ありえん話じゃないだろ」


「それだったらこの前寝てる私に何もしなかった時点で大丈夫じゃないかな」


「ほらなんか場所的にアウェー感あったとか」


「もう気にしすぎだってば。そもそも神谷君がそんなことできる人間だったら今頃神谷君の周りには女の子のハーレム出来てるよ」


「まあせいぜい食われんようにするこったな。一応ほら、女の子だし」


「ほんと、大丈夫だって。気にしすぎだよー。じゃあ分かった。とりあえずちょっと気を付けとくね」


「ん。あ、あとそれ余るならくれ」


「うん、いいよ。出来たら切り分けておくね。それにしても突然どうしたの咲希姉。昨日までそんなこと一ミリも言わなかったのに。何かあった?」


明らかに何かおかしな咲希にそう聞く渚。

間を置いてから咲希が告げる。


「…あった。うんあった」


「何があったの?」


「いやさ、2日くらい前に出かけたんじゃんね。珍しく。その時美船に言われたことが気になってさ」


「何言われたの?」


「いやなんか雅彦さん、俺のこと好きらしい。直で言われたわけじゃ無くてほのめかされただけだけど」


渚が驚いた反応をする。


「え!?なんで、どうして?なんでそうなったの?」


「こっちが聞きてえわ。こんなダルダル急造女のどこがええんや。ほとんどおっさんやぞ」


「えっと、そこじゃなくて、なんでその話になったの?」


「どうしてって言われてもなぁ…なんか買い物の話してたらそっちに話し飛んでなんかそんな雰囲気をぽろっともらしよった」


「ふーん成程ね…咲希姉的にはどうなの?」


「謎。恋愛経験ないもん」


「だよねぇ。え、でもこれから先は…まさか女の子と結婚するわけにもいかないだろうしどうするの?」


「え、なんも考えてなかったんだけど。まあでも対象は男…?元々恋愛考えてなかったしなぁ…」


渚はなんか難しい顔をしている。


「…どったん突然黙って」


「うーん…なんだろうね。なんだかなぁって感じなんだよね」


当然渚も雅彦が咲希のことについてどのように思っているかは知っていたつもりである。

応援するかどうかはともかく、まあなんか頑張ってほしいなぁとか思ってたところでこれである。

本人に情報が洩れているのは想定外であった。

猶更応援するかどうかで悩む羽目に陥っている。


「なんだかなぁってどういうことよ。俺だって割と困ってんだぞ。その場は流したけど、人からそう言う意味で好意なんて向けられたことないもん。次会話できるか分からんぞ」


「咲希姉大月さんのこと意識してんの?」


「え、聞いたしそりゃ多少は気にする。多少だけど」


「じゃあ仮に上手くいったとして付き合うことになったらどう思う?付き合えそう?」


「今の感じで行くならまあ」


「だから咲希姉私が神谷君の家行くって言ったら襲う襲われないの話したんだね」


「うんまあ、そう。やっぱ頭こびりついて離れん。スポブラ買ったことより残ってるわ」


「にしても突然最後の最後まで想像するなんて意外と乗り気なの咲希姉?」


「乗り気…なのかなぁ?分かんねえよマジ。さっきも言ったけど一回も無いこと分かんないべさ」


「ふーん。だったらとりあえず無理ってなるところまで流されてみたら?」


「まあこれで突然付き合いやめますもおかしいしそうなるかなぁ…別に一緒にいて嫌なわけでもないし」


「まあ一緒にいて嫌じゃないならいいんじゃない?」


「サクッと攻略されそうなのが微妙。気分的に」


「じゃあ恋の駆け引きやってみたら?」


「お前の見ててめんどくさいって知ったからいいです」


過去の渚の恋愛事情を聴いたうえでの発言である。


「でもサクッと攻略されそうなのかぁ。それはそれで意外」


「そうか?」


「だってもう男とキスなんてできるか!ましてやるなんてできるか!って言うと思ってたから」


「いやまあ…精神的ハードルはそりゃありますけど。あるけど好意向けてくる相手とかね。普通に弱い。多分俺すっごいチョロインだと思うわ」


「あ、うんそれはチョロインだね」


「恋愛行為をしたことないとこうなるんだって」


「でも嫌なら嫌ってちゃんと言うんだよ?」


「お前じゃあるまいし」


渚がその発言に怯む。

嫌なことを嫌だとなかなか言えないタイプはどっちかというと渚であるため。


「うぐっ。ま、私のことはとりあえず置いといてさ、私しばらくそう言うこと無さそうだし」


「え、そうなの?いや、前も聞いたようなそうじゃないような気がするけど神谷君とやらはどうなってるのさ」


「だから何度も言うけど友達だってば。それ以上でもそれ以下でもないよ」


「お前突然始まるからわっかんねえんだよな」


「仕方ない。だって恋愛は突然始まるんだもの」


「経験者は語る」


「場の雰囲気って大事だと思うんだよね」


「せやな。流されそ」


「そうそう。流されるんです。気づいたら朝なんです。そういうこともあるんです」


「ああ、朝チュンってそういう」


「そう、そして朝、なんでこんなことしてしまったんだっていう後悔と懺悔が襲ってくるんです」


「問題なのは今はやる側じゃ無いってこったな」


「どっちであっても問題だと思うけどね」


「お持ち帰り」


「逆に言えばお持ち帰られてるわけだから」


「お持ち帰られるってすごいワード生み出さないで」


「男が持ち帰ろうと思ってなくても女の方から持ち帰られようってするパターンもあるんだよ」


「経験談?」


「なーいしょ」


「今更感無い?」


「今更でもそんな恥ずべき過去を話すわけないでしょ」


「それが清純JKやってりゃ世話ねえな」


「別に清純JKやってるつもり無いけどね。むしろ清純な人間をやってるつもりなんだけど」


「まあそもそもJKじゃねえしな」


「そうそうそういうこと。私はもう二度と同じ失敗はしないって決めたの。…ちなみにこういうセリフを言うとだいたい同じ失敗するからあんまり言いたくないんだよね」


「流石にそのフラグ建築はやばいからやめろ。洒落にならん」


「というかそもそも昔のは恋愛失敗してただけだから」


「まあ、せやな。うん」


「偽物の愛じゃ真の愛には勝てないってことだよ。そういうことを知ったんだよ私は」


「いいこと言ってるけど、元が恋愛失敗からって考えるとなんかもの悲しいなそれ」


「そう。本質的に好きになれなかった相手をほんとに好きになんてなれないってことだよ…そもそも……」


その辺まで話して、一人でつぶやくようにぶつぶつ話し始める渚。

ほとんど独り言に近い。

目が死んでいる。


「はいはい。一旦過去と別れようかそこ」


「うんまあ、しばらく恋愛はしないんじゃないかな。私は、たぶん」


「まあ始まったら教えてくれよ。言わんでもいうか?」


「むしろ咲希姉こそ始まってるのに他人事感無い?当事者だよ咲希姉」


「実感ない」


「まあそうだろうね。それに美船ちゃんに聞いただけでしょ。気にするだけ無駄だよ」


「信用ねえなあいつ」


「そう言うわけじゃ無くてね?本人に好きって言われたわけじゃ無いんだからあんまり気にする必要ないんじゃないかなってこと」


「ああそういう。うんまあ、本人から聞くまでは適当に今まで通りでいるさ。聞いてもそのまんまかもしれんけど」


「まあそこは咲希姉の選択次第だよね」


「アプローチとかかけ方知らんから出待ちする」


「やっぱ咲希姉大月さんのこと好きなの?」


「嫌いではないよ。嫌いでは」


「ふーん。じゃあそういうことにしとくね」


そこで咲希が時計を一瞬見て渚に告げる。


「で、そろそろ時間遅いけど寝なくていいのお前」


「これ作ったら寝るよ」


「終わんのそれ…」


「もう冷やしてるだけだから終わるよ」


「そうか。じゃあ明日のあまり楽しみにしとくわ」


「うんうん。楽しみにしといて」


そう言って一人誕生日プレゼントを作る渚を置いて、咲希は2階に上がっていった。


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