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看板娘始めました  作者: 暗根
本編
119/177

行く前

「よっす、悪いな呼び出して」


「いいよいいよー。むしろ咲希から外に出るお誘いがあるとか珍しいね!」


今咲希がいる場所は駅。

大変珍しいことではあるが、咲希が美船を呼び出して今に至る。


「というかマジでいきなり呼んだけど大丈夫だったのか?」


「いいよいいよ。どうせほっとかれてたら今日も咲希の家に突撃する気だったし?それでそれで、買い物に付き合ってほしいなんて本当にどうかしちゃったの?咲希本物?」


「いや本物ですけど、偽物ってなんだよ」


「だって普段の咲希だったらあたしが引きずってっても嫌だぁみたいな感じじゃん。それに比べて自分から私を誘ってまで買い物に行きたいとかもはや咲希じゃないじゃん」


「私だって買いたいものはあるんだよ。ほっとけ」


「でもあたしと一緒に買いに行きたいものって?ゲームのこととかだと私より兄貴の方が…」


美船は雅彦がゲームを咲希とやっていること自体は知っているものの、そっちに参入してきたことは無い。

今のところはやるつもりも無い。

なのでそっちには疎いのである。


「いや、そっちの用なら直接雅彦さん誘うって。そう言う買い物じゃない」


「だよねぇ?というか最近咲希兄貴と仲いいよね」


「そうか?前からネットで遊んでたし今更じゃね?」


「いや、最近は直接会って遊んだりしてるじゃん?今度もご飯いくんでしょ?」


「え、何で知ってるの?いや確かに誘ったけど」


「いやなんか兄貴が妙にテンション高いなと思って聞いてみたら教えてくれたよ?滅茶苦茶聞き出すの苦労したけど」


なお所要時間は5分程度であった。

それでも普段はだいたい美船には甘々な雅彦からしたら長い方ではある。


「え、そんなにテンション上がってたの雅彦さん」


「うん、すごい嬉しそうだったよ。何々、もう咲希と兄貴そう言う関係に…?」


「いや、ない。少なくとも違うだろまだ」


「ほう?今後はそう言うご予定がおありで…?」


「今のことはねえよ。少なくとも私はな」


「えーそうなの?ちなみにあたしは気にしないから兄貴に関しては好きにしていいからね!」


「おい、妹。それでいいのかお前は」


「まあ咲希ならよく知ってるし別にいいかなーって。よく分かんない女に兄貴持ってかれるよりはずっといいよねー」


「ぶっちゃけすぎだろ。…少なくとも私は本人から何かしらちゃんと聞くまでは何にもだぞ」


「まあ咲希ならそういうよねー。ちなみに咲希からしてみたらどうなの?うちの兄貴?」


「いやどうって言われてもな…今のところは友達」


「ふーん…」


「なんだその含みのあるふーんは」


「いや完全に無しでもないんだなって」


「まあ別に人としては好きだしな。じゃなきゃこんなに遊んでないし。でもいまんとこはそんだけだぞ」


咲希的にはまあ普通に友達である。

元々男であったところを差し引いても多分まだまだ友達だろという感じである。


「また何か進展したら教えてね!」


「なんでだよ!嫌だよ!」


「ふふん、咲希が話さなくても兄貴から引っ張り出すだけだから一緒だよー?」


「斜め上からの脅迫やめろや!」


叫びつつ頭を押さえる咲希。

それを美船はにやにや顔で聞いていた。


「というか、今日はそれ関係ないだろ!」


「ああ、そうそう、そうだった。それで兄貴じゃなくてなんだっけ?」


「いや…この前運動しなきゃなって言ってただろ」


「ああうん、言ってたね。やってる?」


「やるための準備しに行くの。具体的にはここ」


「ああ、成程。ブラか!」


「いや大声で言うなよ。人いないけどさぁ…」


要するにそういうことである。

咲希の現状のブラは普通のものだけ。

激しく運動するには少々厳しいところがある。


「…端的に言えば、スポブラ欲しい」


「そういえば持ってないって言ってたね」


「普段の生活するには不自由ないけどさ。流石に運動するにゃ普通のやつだときちぃ」


「ご立派ですものね」


「口調壊れてんぞ」


「だってさぁ、あたしそう大してあるわけでもないのに咲希のはほんとにおっきいじゃん。え、だっていまいくつ?」


「ここで聞くなや。外で話したくないわ」


「いいじゃんいいじゃん小声で小声でほらほら」


そう言いながら寄ってくる美船。

仕方ないので咲希も応じる。


「…F」


一応把握している情報を小声で漏らす咲希。

具体的に測ったりしたことは無いものの、持ってるブラから得られた情報によるとだいたいそんなもんらしいということは知っていた。


「マジ!?F!?」


「うるせえ!声縮めろ!恥ずかしすぎるわ!」


大慌てで口をふさぎにかかる咲希。

流石に自分の胸の大きさを叫ばれるのは恥ずかしかったらしい。

幸い人は他にいないように見える駅のホームではあるが、どこで聞かれているとも分からないので猶更である。


「…ぷはっ!ちょっと咲希、いきなり口抑えないでよびっくりした!」


「流石に今のはお前が悪いだろ!?叫ぶなよ!響いただろ!?」


「いいじゃん減るようなものでもないし!」


「そう言う問題じゃねえだろ!セクハラかよ!?」


激しく動揺する咲希。

流石に想定外であった。


「うーむ…しかし、Fかぁ…いやぁ咲希なぁ、ちょっと体重増えたって言っても細いからなぁ、大きく見えてはいるとは思っていたけど…やっぱ大きかったなぁ…」


「感想を述べながら手を伸ばしてくるのやめて?これ以上は流石に殴るよ?」


「いやFの恩恵に預かっておこうかなって」


「ねえよそんなもん。なんだよその恩恵」


「だってさぁ、あたしBなんだよね?もうちょっと欲しいじゃん?近くにおっきい人いたらやっぱ気になるじゃんね?」


「だからと言って触る理由にはならんだろそれ」


「えー咲希ほんとなんでこんなに大きいのぉ?何やったらこうなるわけ?」


「知るか。特になんかやったわけでもないわ」


実際現在の咲希的には最初っからこうなので何をやったらと言われても困るのである。


「というか咲希の家の人全体的に大きくない?」


「知るか。家系じゃねえのか家系」


「巨乳家系?」


「…なんかその響き嫌だな」


「でも渚ちゃんもぱっと見結構あると思ってるんだけど」


「エロオヤジみたいな目線で会話しないでもらえます?」


「よし、今度聞いてみよう」


「聞こうとするなよ…」


そうこうしているうちに電車がやって来る。


「あ、来ちまった」


「そう言えばどこ行くの?」


「それを聞こうと思ってたんだよ。スポブラ買うのにいい場所知ってるだろお前なら」


「ああそういうことか!もー先に言ってくれればいいのにー」


「流石にメッセで送るのなんか恥ずかしくてな…」


「あれ、そういうの初心?意外ー!」


「うるせっ!」


胸が絡むとこうなるのは咲希の中の男が反応しているのだろう。

実際未だに気にしていたりするので。


「じゃあ私が買いに行ったりする場所でいいよね?」


「ああ、場所知らんし、買える場所ならどこでも」


「おっけー。じゃあ行く場所は決まりだね。レッツゴー!」


「相変わらずテンション高いな…」


こうして咲希と美船は電車に揺られて目的地へと向かって行った。






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