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看板娘始めました  作者: 暗根
本編
108/177

返し

お客の夕飯が終わり、渚たちの分の夕飯も終わった後の民宿「しろすな」。

渚と明人がキッチンで洗い物をしていた。


「やっぱり神谷君がいると仕事が色々早く終わるから楽だなぁ。いっつもいればいいのに」


「暇なときは呼んでくれれば来るけどな。流石に学校ある時はなぁ…」


「最近よく来てくれるからこそ、来ない日が凄く面倒くさいというか、辛いというか…一人って大変なんだなぁって思うよね」


「流石にこの人数の食器とか洗ったり、用意したり一人はなぁ…正直、俺が来るまでよく一人でやってたなって思うぞ」


「だよねだよね!私ってすごいよね!頑張ってたよね!でも最近の私は楽を覚えてしまって頑張れなくなりました。これが文明の利器か。それとも人海戦術なのか」


「前者だと俺の扱いが食器洗浄機とかと同レベルになってる気がするんだが」


「自動配膳食器洗いロボ?」


「高性能というか局所的過ぎるというか…使う奴いるのかそれ?」


「しかも料理教室機能も入っている。これは欲しいよね。あったら私は買ってるよ」


「そのロボが売られた時にお役御免にならないように頑張るよ」


「大丈夫大丈夫、こうやって話すことも人の価値だと思うの。ロボットに居場所は無いです」


「それはそれでロボが可愛そうだな」


「無いものに可愛そうと言ってもしょうがない。でも本当にあるなら買いたくはなるかもしれない。つまり実質3人でやれるから私はもっと楽ができるのでは?」


「はーい、実際は無いので頑張ってくれ」


「あぁああああ、水が冷たいよぉ!」


「安心してくれ。俺もとうに感覚が無い」


「そろそろお湯付けなくていいかなーって思ってたんだけど、これはダメだね。つけた方がいいや」


「まだ夜は冷え込むから仕方ないよなぁ」


蛇口の水をお湯の方に切り替える渚。

冷たくなった手を温める。


「光熱費節約とでもちょっと思ってたけど、やっぱりお湯は最高ですねー」


「…渚、俺も出していい?お湯」


「どうぞどうぞ。流石にそこまで私も鬼じゃない」


「助かる。…あー生き返る」


「それで話戻すけど、やっぱり一人で作業するより二人で作業する方がメンタル的にも物理的にも楽だね」


「渚にとっては毎日の作業だもんなこれ。猶更か」


「そうそう、毎日の作業だから一人でやってると偶にうっかりミスをすることがあるんだよね。その点一人じゃないと割と意識がしっかりしてるからミスしづらくなるからそう言う意味でも複数人で作業するっていいんだよね」


「まあそれは確かに。渚が焦ると不思議なミスするもんな」


「違うの!卵を割って気づいたら黄身をごみ箱に捨てようとしてたけど、ちゃんと気づいたでしょ!」


「逆に殻が残ってるからあの時は流石にほんとに頭がやられたんじゃないかって心配したぞ」


「それはそれでひどくない?私の頭があんぽんたんみたいじゃん!」


「普段は大丈夫だから。普段は」


「ていうか神谷君ときどき私に対してすごく失礼なこと言うよね」


「お互い様だろ」


「まあ確かに。それを言われたら言い返せないかも」


その辺でようやく洗い物が終わる。


「…ああ、そうだ。お互いさまと言えば。ごめん渚、ちょっと待っててくれ」


「はいはい、いいよいいよー。ここは私の家だからいつまででも待てるよ」


「すぐ戻るー」


そう言ってキッチンから姿を消した明人は割とすぐに戻ってきた。

手には包装された箱を持っている。


「渚。これを。バレンタインのお返し」


「ありがとう。これは神谷君から私へのホワイトデーってことで良いんだよね?たぶん」


「ああ、そうだ。あんなしっかり貰った以上お返しはする気だったしな。貰ってくれると嬉しい」


「バレンタインで渡したことを覚えてくれてたことも嬉しいし、ちゃんとホワイトデーの日に返してくれたこともすごく嬉しい。ありがとう!」


「そりゃ忘れるわけないだろ。せっかく友達からバレンタインデーのチョコもらったんだからさ」


「ううん。それでも、いっぱい貰ってたから忘れててるかもしれないって不安もあったし、覚えててくれてありがとう。渡した甲斐があったよ」


「はは、そんだけ喜んでくれるならこっちも渡す甲斐があるってもんだな。あ、中身クッキーだけど渚大丈夫だよな?」


「大丈夫大丈夫!むしろ大好物!ほんとありがとう!」


「あ、好物だった?それなら良かった。駄目って言われたらどうしようかって思ってたよ」


「すごく甘いものが好きってわけじゃ無いけど、クッキーはほんと大好きだからすごく嬉しいよ」


「そっか。よし、じゃあ確かに渡したからな。お納めください」


「ご査収しました。確かに。あ、それで、聞くの忘れてたけどチョコどうだった?」


「ああ、美味しかったぞ?普通のチョコかなと思って食べたけど、中の種類が思った以上に豊富で食べながら楽しかったしな」


「楽しんでもらえたならよかったよかった。結構選ぶのに時間かかったんだよねあれ」


「そうだったのか?なんか悪いなそんなとこで悩ませて」


「全然?むしろああいうのは悩むのが楽しいのまであるよね。だから気にしないで」


「そうなのか?まあ俺も滅茶苦茶悩んだけど…」


「そっかぁ、神谷君は返す人いっぱいいるもんね。悩むよね」


「…それも無いと言えば嘘になるけどそうじゃなくて」


「え?それじゃないんだ」


「…いや、よく考えたら俺、渚の好みとか全然知らなかったからさ。最終的にクッキーにしたんだけどどういう種類のもの買うかでほんとに悩んだんだよな」


「そっかぁ。私なんかのためにそんなに悩んでくれたんだ。じゃあこれは大切に食べないといけないね。ちなみに私はクッキーのプレーンの味が一番好きです。ご参考にどうぞ」


「あープレーンかぁ。ごめん、そこまでは完全一致できなかった。それ種類入ってる奴だから…」


「えへへ。流石にそこまでは期待してないよ。むしろ期待通りだったらちょっと怖いかもしれない。それに、私もいろんな味入れたやつ渡したしね」


「そうかぁ…じゃあ次からはプレーンクッキーの詰め合わせにしよう」


「あ、次もくれるんだ!」


「そりゃ渡すよ。よっぽど遠方の地に行ったりされると厳しいけど」


「そっかぁ、じゃあ私も渡さないといけないねぇ」


「あっ、いやそういうつもりで言ったわけじゃ無いからなっ?」


「ほんと欲しがりだね神谷君は」


「ちょ、やめて。お客さんに聞かれたら誤解されそうだからやめてくれ!」


思わず叫んだ明人であった。

その声の方が「しろすな」に響いたのは言うまでもない。




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