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看板娘始めました  作者: 暗根
本編
105/177

壁ドン

ある日の民宿「しろすな」。

全員の夕飯が終わって跡片付けし終わった頃合い。


「そろそろあのドラマも終盤だねえ」


「ん、ああ、あのさっきからテレビで流れてる」


「そうそう、貧乏な女の子がお金持ちのイケメンに惚れられて玉の輿はよくある話だけど、まさか後半でイケメンが没落するとは思わなかったよね」


「急展開だったな。全部見れてないけど」


「まあ結局没落したかと思ったらなんやかんやイケメンが凄かったから、結局元通りみたいな関係性になってるけどね」


「まあな。不幸せよりいいと思うけど俺は。ご都合主義と言われればそれまでだけど」


「最近のドラマ急展開が多すぎてついていけないんだよねー」


「そんな前からドラマ見てたんだ」


「ちょこちょこ?テレビつけてるから偶に見るよね」


「まあ家が民宿ならそれもそうか。まぁ、急展開も理解できる内容ならいいんだけどな…」


「最近は特にひどい気がするよ…年を取ったからかなぁ?」


「俺たちで年取ったなんて言ったら一部人間から殺されるぞ?」


「あぁ、そうだね、確かに。まだ未成年だもんね」


まあ既に中の人年齢的には二十歳を余裕で越えているのだが。


「…あーあれ、ああいうのさ。あれでそんなにコロッと落ちるもんかよって毎回思うんだよな」


「あぁー壁ドン?どうなんだろう、やってみる?」


恋愛における壁ドンの方である。

イチャコラに対してムカついてする方ではない。


「え、やるの?いいけど別に」


「じゃあそこの壁に立って」


「…ああ、俺がやられる側ねはいはい」


というわけで壁際まで明人が移動してその正面に渚が立つ。

壁ドンの布陣というわけである。


「じゃあ行くよ」


「おう、来いっ…って壁ドンってこんなに構えるもんだったっけ?」


「だ、だってしょうがないじゃんやったこと無いんだもん!」


「お、おう、すまん」


「行くからね!」


前押しをした上でドンと音が出る程度には勢いをつけて壁ドンしてみる渚。


「…」


「…どう?」


「…いや、あのさ、どうっていうか、その…位置が下過ぎないか」


明人の身長は170オーバー。

対する渚は身長153前後。

当然ながら明人の方が背が高いわけで、直線的な壁ドンでは肩よりも下に手がつきささってる。


「神谷君が身長高すぎるんだよ。ちょっとしゃがんで」


「え、しゃがむの?」


「じゃないと顔の横に手がドンってできないんだよ」


「お、おう。…これでいいか?」


そう言われてとりあえずしゃがむ明人。

一応それで渚より顔の位置が低くはなる。


「うんうん、私よりも下になって丁度いい感じ。じゃあ改めて、行くよ」


「お、おう」


再び壁ドンを行う渚。

しかし今度は位置が下すぎる。


「ねぇ神谷君、これってさ、神谷君の位置が今度は低すぎて若干顔見づらいんだけど、どう?」


「…あの、どうっていうか…その、とても近い、です。どことは言わないけど」


「え、あ、あぁごめん。そこが近いとは思ってなかった」


「…何なら掠った気がする」


「その情報はいらない。確かに当たった気がするけど」


壁ドンを行った際に渚の胸元が明らかに明人の顔を掠った。

感触があったので間違いない。


「え…じゃあこれくらい?…維持結構きついけど」


「あ、丁度いい感じかもしれない。じゃあ今度こそ」


というわけで再び壁ドン。

位置的には丁度いいが、明人の体制が今までで一番おかしい。

中腰である。


「…うーん。やっぱなんか違う気がするな」


「うん、なんだか私も違う気がしてきたよ」


「だよな…立っていい?」


「あ、うんごめん。いいよ。ありがと」


とりあえず立ち上がる明人。


「なんか別の意味で困惑するけどそれだけだな…」


「別の意味で困惑?結局どんな感じだったの?」


「あー…いや、色々と近いなぁという感想」


「それはまんますぎる気がするけど」


「ときめくとかそう言うんじゃないんだよな…え、何、何するのとかそういう意味での困惑」


「成程。じゃ、やっぱりあれはフィクションの演出なんだねー」


「あと、体勢が体勢だからそっちの方が気になった」


「それは私が神谷君より背がちっちゃいせいだね」


「まあ確かにそうだな」


「というわけで壁ドンはそう言う感じみたいだよ神谷君」


そこまで話してやることが終わったのでキッチンの外へと向かおうとしている渚。

その時明人が渚を呼び止める。


「そうかぁ…あ、渚」


「何?」


後ろを振り返れば眼前まで接近する明人。

そのまま顔の横に手を伸ばされてドンと壁に突かれた。

壁ドンである。

位置も丁度いい。


「…どう?」


「な、なんていうか、凄いびっくりした」


「あぁ、…だよなぁ、そう言う感じだよなぁ…」


そう言うと、スッと手を引いてテレビの方に目を飛ばした。

シーン的には壁ドンされた相手がなんか落ちてるシーンである。


「…ああはならないよなぁ」


「ま、まぁ、フィクション、だからね…」


「…あれ、渚どうした?顔赤くない?」


「………神谷君ってさぁ!ほんとさぁ!ほんとさぁあ!そう言うとこ良くないと思うんだよね!」


「え、な、何が!?この前も言われた気がするけど!?」


「神谷君ってさぁ!やることがいちいち様になるからさぁ!ちょっとドキッとはするんだよね!そういうところちゃんと考えて欲しいなぁ!」


「え、ドキッとしたの?」


「…」


黙り込む渚。

明人が慌て始める。


「ちょ、ごめん、ごめんって。そんな風に思われてるって思ってなかったんだって」


「散々天然たらしとか言ってるのに何で自覚無いのかなぁ!私はあなたのことそんなに異性として好きとは思って無いけど、これでもびっくりはするんだからね!」


「自覚あってもよく分かんないんだって!だからそんなに怒らないでくれよ」


「とりあえず神谷君はうかつな行動とらないで!神谷君自覚無いかもしれないけどさぁ!あの啓介君すらちょっとときめいてたの知ってる!?」


「…うぁああ!ちょっと待て渚、その話はやめて。黒歴史!」


「思い出しなさい黒歴史を。そしてあなたはうかつな行動をとらないように心掛けなさい」


「反省します…」


「ならよし」


ちょっと渚が怒ってから少し沈黙が流れる。

そこで明人が何かを思い出したかのように口を開いた。


「…でも渚。うかつって意味ではさっきの2回目の壁ドンのあれは…?」


「2回目の壁ドン?何かあったっけ…?」


「いや、胸、掠めた」


片言で言う明人。


「えぇ、ああうん。それが?」


それに対して何とも無さそうな感じの渚。

明人が呆れた感じで言葉を漏らす。


「渚…そういうとこ。俺も一応男…だぞ」


「あ、ごめん」


似た者同士であった。


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― 新着の感想 ―
[一言] ぬぅ、あれは童貞絶対殺神拳奥義…!
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