↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/173

海での戦闘

「ハインツ!これは一体どうなっている。なんだこの液体は!」



 黒い鷲に乗った男は下降してきて、ユーリア達のそばへとやってきた。

 それに食らいつこうと液体が鷲に向かって動き始める。



「ヴァイセル様、青いルクイドが海に現れ、テディが切った所、中から魔力を吸う液体が出てきました!

 ユーリアはルクイドに魔力を吸われ、魔法の発動ができません」



 ヴァイセルと呼ばれた男は「厄介な。」と呟くと、黒鷲に向かって命令する。



「カルステン。黒の風魔法で少し押し返すぞ。私は浄化魔法を使う。やれ!」



 カルステンから黒い風が起き、ヴァイセルからは強烈な光が放たれた。


 風で押された黒い塊は光に当たり体積を減らした。

 だが、徐々にまた液体がこちらにき始めている。


 カルステンはハインツ達の元へ下降し、ヴァイセルが足場の氷へと降り立った。



「ハインツかなり魔力を消耗しているようだな。カルアス! ハインツを浜へ! その後浜の警護にあたれ!」



 ヴァイセルが乗っていた黒鷲の後方にいたカルアスが、下降してきて人型となり足場へ降り立った。


 ハインツはヴァイセルにユーリアを渡した。



「ユーリアの事頼みます」


「ああ、恐らく自分が思っているよりも多く、あの液体に魔力を取られているぞ。ディオンの元へ急げ!」


「はっ!」



 ハインツが敬礼すると、カルアスは羽を広げ足場から飛び立った。






*


「ユーリア、久しぶりだね。挨拶がゆっくりできないのは残念だが、君も浜へ連れていくからね」



 ヴァイセルはユーリアを抱えたまま、カルステンの背へと飛び乗り、浜へ向かおうとする。



「ヴァイセル様……ダメ……テディが……。ルクイド普通じゃない」



 ユーリアは力の篭らない手で必死にヴァイセルの服を握る。



「テディを心配な気持ちは分かるが、今は自分の体を大事に……」



 ユーリアはヴァイセルの言葉を遮り、腕を首に回し耳元で話しかける。



「お願い……あのルクイドの上空に。

 殻の中に何かある気がする……んっ……」



 ユーリアは体に走る激痛に、腕を引っ込める。

 ヴァイセルは頭を抱えると、ユーリアの1番深い傷口に触れる。

 激痛でユーリアは悶えるが、ヴァイセルが優しく声をかける。



「仕方ない。治癒魔法は専門外だが、簡単な解毒なら行える。体に負担は掛かるだろうが、許せ。カルステンは上空へユーリアの解毒がすみ次第、ルクイドの元へ近づく」



 ヴァイセルが傷口の1つ1つに触れ、解毒魔法と治癒魔法をかけていく。

 その度にユーリアには声が漏れるほどの痛みが襲う。

粗方の傷が治り、毒もだいぶ解毒されたので、少し魔力が回るようになってきた。



「ヴァイセル様、もう大丈夫です。ルクイドの元へと連れてってください」


「あ、ああ。カルステン、向かえ!」



 治療に集中していたのか、ヴァイセルは少し反応が遅れたが、カルステンへと指示を出す。


 さっと自分が着ている上着をかけてくれて、ヴァイセルの服に包まれる。







*


 ルクイドの上空へと向かうと、テディが側にやってきた。ヴァイセルにより縮小した液体を、ルクイドごと魔法で閉じ込めるのに成功していた。



「ユーリア様ご無事ですか? 私の軽率な判断で窮地に追い込み、申し訳ございませんでした」



 テディは額から汗を流し、魔力の消費が激しいようだ。テディほどの魔力量でもこの魔獣を抑えるのは難しいようだ。



「テディ、ヴァイセル様に解毒と治癒をしていただきました。ある程度魔力を動かせます。

 ルクイドの殻の中に何か仕掛けがあると思うのですが……」



 ユーリアは金属で覆われているルクイドを指差す。

 テディとヴァイセルは少し考えるとお互いに頷く。



「テディ、一旦包囲している魔法を解き放て、ユーリアに見させる」


「はっ!」



 テディが魔法を解除すると元のルクイドの姿へと戻っている。

 ユーリアは魔眼を使いルクイドを見つめる。

 しかし、強い隠蔽魔法がかかっているせいか魔力の流れが見えない。



「ヴァイセル様あれの隠蔽魔法を解除できますか。その後は魔法を加え、魔力を吸収させ、奴の流れを見ます」


 ヴァイセルはユーリアの言葉に、隠蔽魔法解除の魔法を使う。

 ヴァイセルだけの力では難しいようなので、カルステンの魔力を借りて二人の魔力で解除した。



「私の魔法で解けないとは、これはルクイド単体の魔法ではないぞ……」



 その言葉に皆同意する。

 ヴァイセルは陛下の腹心の一人の魔術師だ。

 魔力も国一番といっていい程の量を誇る。



「裏で何かが動いているのは間違いないでしょう。あの液体といい、通常ではルクイド程度にここまで手こずるとは思いません」



 テディの分析は正しい。何かがおかしいのだ。ただのルクイドならテディの先程の一撃で絶命している。


 ユーリアはルクイドの魔力回路を探るべく、ルクイドを覆う量の炎魔法を浴びせた。

 殻にも防御の魔法陣が仕込まれているようで、薄く光る。


 少しは魔力を吸収したようで、ルクイドの殻の内部へと魔力が流れていき、魔力の質が中で変わった気がする。


 あの液体といい、上位種の荒れようといい、1つの可能性が出た。



「テディ、ヴァイセル様。恐らく奴はキメラ化しています。殻の中には黒のスライムが寄生しているのでしょう。殻についている魔法陣も、人の手により加えられたものでしょつ。

 表面のルクイドだけ攻撃したのではだめなのです。中のスライムから魔力を供給し、元の姿へと戻るだけです」



 テディは魔獣が人の手によって改良された事に怒り、全身から魔力が溢れ出てきている。

 ヴァイセルは顎に手をやり、現状を打破する策を練っている。



「テディ、もう一度キメラに攻撃はできるか?あの殻の魔法陣ごと破壊してもらいたい。

 その後は私が浄化魔法をかけ、スライムを無に変えそう。研究材料が無くなるのは痛いが、やむを得ん。このまま街の中に侵入されては被害者が増える」



 テディは怒りを魔力に変えるようで、キメラに放り込む魔力を練り始めた。



「先ほどは魔法陣の存在が分かりませんでしたからね。出力を間違えないよう徹底的に潰します」



 ユーリアは残りのテディの魔力を考え、テディに問う。


「テディ、私の魔力を使って……今の私じゃあのキメラに対抗できる魔法を発動するのは無理なの。お願い……」



 テディはユーリアの結っている髪を解くと、20センチほど髪を切り、吸収した。

 召喚魔獣は主人の髪や血から魔力を吸収しているのだ。テディがあまり魔力を欲する事はないが定期的に渡している。



「ユーリア様、ありがたく使用させていただきます。後で整えて差し上げますね」



 テディは魔力を再び練り始める。ユーリアの魔力も得てさらに大規模な魔法を放つようだ。

 ヴァイセルはその様子を見ていると、口を開く。



「ユーリア、悪いが私にも魔力を分けてくれないか?あのキメラはユーリアの魔力やテディの魔力を吸収しているわけだろう?

先程の解除魔法で魔力が少し心許ない」



 そういうとユーリアを抱きしめる手に力が篭った。



「私の魔力を同調させれば、体にご負担になりますよ?」



 ユーリアの言葉にヴァイセルは首を横に振る。



「チャンスは一回だけだろう? 私の体に負荷がかかれば、ユーリアが後から癒してくれればいい」



 ユーリアはヴァイセルの覚悟に頷き、ヴァイセルに触れて魔力を同調させていく。


 テディが魔力を込め終えたようで、剣を振り上げる。



「いきます!」



 テディからの剣から轟音がして、キメラを真っ二つに切る。

 中から再び黒い液体が飛び出してくるが、ヴァイセルの洗浄魔法により、跡形もなく消え去った。


 残ったのは真っ二つに両断された殻だけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。