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6:俺たちのリーダーがこんなに可愛いわけが

 


 帰ってきた俺を待っていたのは尋問だった。


「で、どう説明してくれるんですか? 先輩」

「だから、彼女はリーファであって、リーダーでもあってな」

「ふぇ? ご主人様に従うので、わたしはリーダーではないですよ」

「よし、被告人は嘘をついているわ。ライナー」

「わかった……許せロイド。おれもさからえないのだ」


 椅子に縛られ、膝の上には重石のつもりなのかライナーが乗ってくる。

 リーファの中にバリッシュがいる証明なんて、できるわけがない。


 俺が帰ると最初こそ笑顔で迎えてくれたが、後ろにいたリーファを見た瞬間全員の笑顔が固まった。

 それからは、あれよあれよと縛られこのザマだ。


「私たちのお金を勝手に使った言い訳がリーダー? ねえリーファちゃん。あなたバリッシュって名前に聞き覚えある?」

「誰のことでしょう。ご主人様の名前ですか?」

「リーファちゃん、この男の名前はロイドよ。ロイドご主人様って呼んでみたら?」

「えっと……ろ、ロイドご主人様?」

「もうやめてくれ……」


 メンバーがこれで、バリッシュが寝たきりの状況だ。

 理由もなく連れてきたわけじゃないとわかっているはずだが、いつまでこの仕打ちは続くのだろう。

 まさかバリッシュが表にでてくるまでってことは――。


「せ、先輩は奴隷が欲しかったんですか? まさかボクたちの面倒をみるために考えて――」

「ないわ。だったら獣人なんて高い買い物するわけないじゃない」

「それもそうですね」

「おいカロン! もっとねばれよ!」


 あいつらわかっててやっているんだよな? そうだよな。

 ライナーもなんとなく察しているらしいので、あとはエレナの悪ふざけがいつまで続くかだが。

 それまで我慢するしかない、と俺は半ば諦めの境地に入ったが、それに物申す人物がいた。


「ご、ご主人様を悪く言わないでくださいっ!」

「え? リーファちゃんどうしたの」


 見れば、両手をプルプルと震わせながら、それでもエレナに対峙するリーファがいた。


「たしかにお仲間のお金を使ったことは悪いことです。ですけど、ご主人様のおかげでわたしはここにいます。ご迷惑なら、この身一つで出ていきますから……ご主人様だけは、捨てないであげてください」

「リーファちゃん? これは違うのよ」

「だっ、だいたいあなたも何ですか! わたしと同じくらいの年なのにご主人様をいじめて! 臭いでわかりますよ、男の子くせにっ! 女の子みたいな喋り方をしてっ!」

「うっ……臭いでしかわからないボクって一体……」


 地味にカロンがダメージを負っていた。

 いけない、このままではリーファとエレナが喧嘩してしまう。

 しかし状況はもっと悪いほうへと傾いていた。


「うふふっ、よくわかったわね。そうよ、私はオ・ト・コ・ノ・娘」

「なんか言葉のニュアンスが違う気がしたが」

「言わないでください……ボクもそう見られること、わかってますから」


 そろそろ止めないとまずいんじゃない?

 と思っていても、俺の身体は縛られているので動けない。

 ライナーは体格的に無理。だとすると――。


「エレナさん! ボクの身体でそれ以上はやめてください!」

「え、じゃあカロンくんが相手してくれる? そうね、私の身体だしそれでいいわ」

「えっ? あっ、ちょっ……せんぱいっ! たすっ」

「一名様、ごあんなーい」


 パタン、と扉が閉められた。

 ライナーたちが泊まっている隣室からバタバタ聞こえるのは気のせいだろう。

 うん、気のせいにしておこう。


「ライナー、それとリーファ? この縄をほどいてくれるか」

「あ、ああ。なんというか、お前のところのメンバーはすごいな」

「そうですね……わたし、ここでやっていけるのでしょうか……」


 ようやく自由になった身体で、二人の頭を軽く撫でる。


「安心しろ、俺も不安になってきた」

「それ、ぜんっぜん安心できません……」


 リーファのつぶやきに返事をするかのように、隣室の壁がドンと叩かれた。






 バリッシュの意識が覚醒したのはカロンがやつれ、エレナがつやつやになって帰ってくるのと同時だった。


「お、おい。カロン大丈夫か?」

「うぅ……もう婿にいけません」

「そうね、行くのはお嫁さんだもんね!」


 さらに落ち込むカロンを見て、バリッシュは深々とため息をつく。


「さっきも思ったが、カロンを虐めるのは程々にしておけ、エレナ」

「え、リーファちゃん? いきなりどうし――」

「リーダーだぞ」


 こいつ本気でわかっていなかったのか?

 横を見るとライナーはうんうん頷いているが、カロンは視線を逸らした。

 ……お前もか。


「カロンがいくら女の子にしか見えないからって、男の娘とは言いすぎだろ。それにしては妙に……すんすん。なんかお前、女くさいな」

「だってさっきまでカロンちゃんエキスを――いや、それはいいのよ。え、もしかして本当にバリッシュ? それでリーファちゃんの記憶もあるの?」

「ん? ああ。だからロイドを縛るのはやりすぎだな。オレはここにいるし、リーファを通じて行動もちゃんと見て――」

「じゃあバリッシュ、ロイドご主人様の奴隷なんだ」

「――――」

「えっと『ご、ご主人様を悪く言わないでくださいっ!』だっけ? ぷるぷる震えちゃって、可愛かったなー」


 バリッシュに代わったリーファは無表情だ。

 だが、真っ赤になる顔色までは隠しきれていない。

 それにご自慢のケモ耳はペタンとなり、尻尾は縮こまるように身体へ巻き付いている。


 ……なんだこれ。

 俺たちのリーダー可愛すぎかよ。




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