11:皆は何処へ?
本日2回めの更新です
いくつか予想は立てていた。
が、リーファが残っていたのは良い意味で想定外だった。
「こっちではライナーがいなくなった。カロンとエレナはどうした?」
「そういやお二人ともいませ――ま、まさか幽霊の仕業ですか!?」
「そうかもしれない。とりあえず……朝食にするか?」
可愛らしい腹の音がなったことで、朝食の選択肢がでてきた。
リーファは顔を赤くしながらも朝食を用意してくれたが、他のメンバーはきちんと食べているのだろうか?
まあいい。
既に目星はついている。
「ごちそうさま。リーファ、何か変な匂いはしないか?」
「変な匂いですか? そうですね、この屋敷に入ってから何かは感じますが、それがどこからかはわかりません」
やはり、ここには何かがいる。
なぜリーファが残ったのかはわからないが、その何かの手がかりは開かずの地下牢にあると見てよいだろう。
「この屋敷に地下牢があるって話だけど、どこか壁の薄そうな場所はわかるか?」
「えと、少しずつ動いていけばわかるかもしれませんが、地下牢の入口って壁で隠されているんですか?」
「ん? どうだろうな」
度々使われるということなら、壁で埋め立てられているのはおかしい。
スライド式か、回転式か。
しかしそれなら昨日の調査で気づいたはずだ。
だとすると、入り口は壁ではない?
「壁じゃないなら床に隠されている? いや、それだと出られなくなる可能性もある。ならば最初に探すのは」
「えと、ご主人様? 昨日は寝てしまってわからないのですが、外回りは確認したのでしょうか?」
「外回り?」
「はい。地下牢というのは秘密裏に処理したいときに使うもの。屋敷の中ににあれば、気づくものも多いのでは?」
リーファのいうことも一理ある。
しかし、彼女はどこでそんな知識を取り入れたのだろう。
なんというか、闇が深そうで怖い。
リーファとともに、屋敷の外を探索する。
今まではこういった場面で、必ず一人だったので何か新鮮だ。
「あ、向こうに柔らかそうな土があります! これなら畑が作れます!」
「リーファはこの屋敷に仕える気満々だな」
「はい! こんな立派なお屋敷に仕えることができるなんて夢のようです! これも全てわたしを買ってくださったご主人様のおかげです!」
リーファの無償の笑顔が眩しい。
おいバリッシュ、俺はあんたのせいでこんな罪悪感に苛まれてるんだぞ。
今度出てきたら文句いってやる。
「あっ! ここ、他と違って雑草がないですよ。色も何か不自然です」
「本当だな。見るからに何かありそうだ」
屋敷の裏側、隅のほう。
そこだけ不自然に空間が拓けており、調べれば壁がスライドするようだ。
「これ、地下牢の入口じゃないですか?」
「そうらしい。灯りはないが、行くか?」
荷物にランタンがあったはずだが、地下牢といっても屋敷の地下だ。
スペースも狭いので、俺は夜目でもなんとかなる。
「行きましょう。あ、いいこと考えました」
それだけ言うと、リーファは壁をスライドさせ、思いっきり叫んだ。
「エレナさーーーーーん!! いたら明るくしてくださーーーーい!!」
返答はマジックミサイルで返ってきた。
それも、一発だけではなく数十発で。
「わわっ! ご、ご主人様だいじょうぶですか!?」
「ああ。ちょうどいいからこのまま進もうか」
「え! でも攻撃され続けてますけど……」
「明るいからちょうどいい」
(おいやべぇぞこいつ……ナニモンだよ)
「ん? 何かいったか?」
「わっ! 漏れてる! ミサイルが漏れてるので前向いてくださいぃ!」
リーファは隠れるのに必死で余裕がないらしい。
だとするとさっきの声は、犯人か?
ちょうど明るくなったので、光源へ向かって歩いていく。
目の前から連続的に発射されてることを考えると、このマジックミサイル連打装置がエレナで間違いないだろう。
「おいエレナ、十分だから止めてくれ」
「うふふ。どう? 明るくなったでしょ」
「お前は成金か」
エレナも俺に魔法が効かないことは知っている。
だからこんな強硬手段にでたのだろう。
しかし普通に無属性のライトを使いこなすあたり、最初からこれで光らせてくれたらよかったんじゃないか?
「おーい、ライナーちゃん。カロンちゃん。ロイドがきたわよ」
「おう、はやかったな。腹がへったからはやくだしてくれ」
「ぜぇんぱぁぁいっ! 信じてましたよぉぉぉ!!」
俺がカロンを見ようとした途端、辺りが暗闇に包まれた。
エレナのやつ、泣き顔が見られたくないからってライト消しやがったな。
「いくらやっても鍵があかないのよ。多分そこらへんにあるんだろうけど、実力行使でもダメだったわ」
「そっか。じゃあな」
「諦めるのはやくないかしら」
「ぜぇんぱぁい……」
助けを求められるのはともかく、鍵なんてどこにもないんだが。
俺よりも夜目が効くリーファに探してもらっているので間違いない。
この檻の鍵は近くにない。
「こんなときバリッシュなら開けられるかもしれないが――」
「いや、オレでも無理だ。この鍵は奥から壊されてやがるからな」
驚いて振り向くと、そこにはご主人様と慕ってくれるリーファではなく、暗闇でもわかるほどの無表情なバリッシュがいた。
しかし、鍵が開かないとなると、どうやってここに閉じ込めたんだ?
「おっと、オレが出てきたからかお出ましのようだ。エレナ、ライトを頼む」
再び地下牢が照らし出される。
違うのは、ただ一点。
(なんだよこいつら。俺の存在にまで気づきやがったよコンチキショー)
地下牢の宙に浮く、透けた男性がいたことだろう。