3/3
灰の世界
「高矢時人です。よろしくお願いします。」
転校初日、軽い自己紹介を終わらせ案内された席に着く。
真っ黒な黒板に真っ白なチョークで書かれた自分の名前が消される。そして灰色の教室。
いやモノクロといえば良いのだろうか。
本当の色はなんとなく分かる。
だが大抵は目に映るのは白と黒しかない。
そう、両親が亡くなったあの日から...
席は窓側から2番目の最後尾だった。
支給された教科書を机の上に出し、授業を受けた。
休み時間になると質問攻めにあったが、イジメの恐怖は不思議と無く、普段通りに答えることができた。
そして放課後、部活をしていない時人はすぐに下校し、帰宅した。
学校までは徒歩15分という近い通学路だ。
家に帰って仏壇に向かい帰宅の言葉をかける。
「ただいま」
青空の下で笑顔のツーショットを決めている両親を見る。
「なんで家の色は普通に見えるのかな...」
そう、時人は家の中のものはモノクロに見えないのだ。
「考えても仕方ないし飯食べて寝るか...」
そうして夕食を食べ眠りにつくのだった。