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教えて、潮田先生!  作者: 神崎 美海
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叶わない恋と知っていても。

潮田先生との出会いは高校生活3年目のことだった。

この春から異動してきた若い童顔の先生。最初の印象はそれくらいだった。


“潮田 壱”。お世辞にも上手とは言えない字で先生は黒板に大きく書いた。

「歳は24歳、趣味はギター、軽音楽部と吹奏楽部の顧問で、1年1組の担任です」

そこからも先生の自己紹介は割と長くて、内容のほとんどが音楽のことだったから、根っからの音楽好きなんだろうなと感じていた。


その時の私は、化学、というよりかは理系が大の苦手で、先生には敵対心すら持っていた。

だから、その後の授業も理解しようとする気すらも起こらなくて、すやすやと夢の世界に入っていた。授業のノートは、隣のいつも起きている子に授業が終わった後に借りて、写していた。

そんな私は、まともに授業を受けていなかったせいで、前期中間の考査日の1週間前に行われた抜き打ちテストで、すごい低得点をたたき出してしまった。


これは、まずい。“欠点”という文字が私の脳内を駆け巡った。あああ、どうしよう。

しばらく考え込んで、私はダメ元で授業終わりに潮田先生の元へ駆けた。今日の放課後に補習を頼みたいと伝えると、先生は案外すぐにOKを出した。ほっと安心して、SHR教室へと向かった。


待ち合わせは16時、化学準備室。16時ちょうどにガラス窓のドアをノックした。「どうぞー」と声がして、私は恐る恐るドアを開けて中に入った。そんな私の恐縮した様子を見た先生はくすっと笑って、向かい側の席を指して「どうぞ」といった。


分からないところはほとんどだったが、一から説明してもらうときっと日付が変わると思ったので、特にわからないところには付箋を貼っておいた。

私のノートを見て、先生は少し驚いた顔をした。

「仙野、俺が黒板に書いてないことまでメモしてくれてるんだな」

先生が「ほら、こことか」と指さしていたのは、隣の席の子が書いていた補足の説明だった。私は、これもノートの部分なんだと思って写しただけだったのに。

ああ、それは隣の子が書いてたやつで、私は写しただけです。授業中はもっぱら爆睡してました。なんて本当のことは少しも言えずに、私は「あははー…」と苦笑いを浮かべることしかできなかった。


先生の説明は、とにかく分かりやすかった。意味不明な化学記号も、一つ一つ説明してくれる。覚えるコツ、「何それ!」って言っちゃいそうな語呂合わせもたくさん教えてくれた。

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