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春の始まり

 外では台風のような風が吹いています。


残っていた桜の花びらも、この風にはひとたまりもありません。

強い風に運ばれて全部どこかに飛んで行ってしまいました。


「これはとんでもないことになったわね。花壇の花は大丈夫かしら?」


どうもチューリップの茎が二本ほど折れてしまってるようですよ。


「まぁ残念。今年は綺麗に咲き揃っていたのにね。」


ゆかこさんは窓の外を見ながら風の音を聞いています。


「ふーん。もう少ししたらおさまりそうね。」


ゆかこさんには、わかるんでしょうか?



昼を過ぎると、徐々に風がやんできました。


「わー、花びらがいっぱい落ちてるよ~。」


「たっくん、そこの桜の花を拾ってよ。」


「これ、まだ花の形をしてるね。」


「あ、ここにもあるっ!」


色とりどりのランドセルに黄色のビニールの覆いをした、一年生の子どもたちが学校から帰って来たようです。



5人グループの子ども達は、拾った花びらを小川に放って流し始めました。


「あらあら楽しそうね。でもちょっと危ないかも。」


ゆかこさんは春風に頼んで、見守ってもらうことにしました。

嵐の名残の春風のしっぽが、子ども達が川に落ちないように見てくれました。


たっくんの青いランドセルを支えている風は、顔を赤くして踏ん張っていましたよ。



子ども達がやっと遊びに飽きて家路を辿った頃、ゆかこさんは町のパトロールに出ることにしました。


「芽が出始めたばかりの新芽が心配よ。」


空から庭や公園を見て回りましたが、ほとんどの木々は無事のようです。


神社と同じように茎が折れている花が何本かあっただけでした。


「植物は生きる力があるのね。」


そうですね、ゆかこさん。

大地に根を張った草木は強いものです。



「あっという間に葉っぱが出揃ったわねぇ。」


黄緑色や真っ赤な新芽が風にゆらゆら揺れています。

日差しが戻って来た水色の空に、キラキラと輝いて伸びていっているようです。


「子ども達も葉っぱもピカピカの一年生ね。」


今年度はどんな年になるんでしょう。


新しく始まった生活を応援して、ゆかこさんは旗を振りました。



「フレーフレー、み・ん・な! 頑張れ頑張れ、こどもたち!」


町中にゆかこさんの応援の声が響き渡りましたよ。


今年も素晴らしい年になるといいですね。

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