合コン
シュールだ・・・
まさか人生で、ゴブリンの合コンに携わる時があるなんて。それにしてもシュールだ。
現状、ゴブリンはメスオスが同じ数くらいいた。見た目じゃ全くわからないが、飾りを付けているのが基本的にメスらしい。飾りが、指輪だったり、ミサンガだったり細すぎて結局見分けにくいのだが。
放っておいてもこいつらが子作りしてくれるんなら本望だが、そんな可能性はないにも等しい。だから、合コン的なものを俺が開催した。俺が適当に時間を計って、オスはそれぞれ椅子に座っているメスのゴブリンと会話をする。俺が合図すれば、隣の席に移る、ローテーション式の合コンだ。上手くいくのかどうかは知らないが。
聞こえてくる会話は様々だ。
「趣味はなぁに?」「うーん、最近はイノシシの鼻の穴に指突っ込んでる!」「わはは!面白そうだね!」
うん。何が面白そうなの?ばっちいよ?
「今度、隣でご飯食べない?」「うん、いいよ!」
お、上手くいってるか??
「君のイノシシ肉は僕がもらうからね!お返しに雑草スープあげるよ!」「いらないよ!!」
期待した俺がアホでした。
はぁ。こんなんで上手くいくのだろうか?不安しかない。
✕ ✕ ✕
「で?いいなって人見つかったやつはいたら挙手しろー。」
シーン・・・まぁ、そうだろな、あんな会話しかしてないならそりゃそう...
「はいっ!」
ならんのかい。お前は確か、イノシシ肉を取ろうとしてたやつじゃねぇか。
「お、お前か。じゃあ気に入った子のとこに行け。子作りしてもいいですかとかなんとか言って、許可もらいなよ。」
「うん!」
タッタッタッと走っていき、たどり着いた先は、やはりあのメスゴブリンだった。
「やっぱりイノシシ肉貰えないかな?」
「嫌だって!!」
「えっと、振られたってことでいいの?」
「えぇ!?いやいや!肉はもういいよ、君に惚れたんだ!子供が欲しい、君との間に!」
「ひゃっ、は、恥ずかしいよぅ・・・でも、いいよっ!」
萌えねええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!
ぜんっぜん萌えないんだけど!!え、何これ!?逆にすごくね!?リリィとかが言ってたとしたら俺悶絶してたのに!なにが、ひゃっ。だよ!二度と使うなぼけ!!・・・ふぅ。
そんな、誰得な恥じらいを見せたメスゴブリンとオスゴブリンは手を繋いで、石に座った。仕切り直して再度問う。
「ごほんっ。他はいないかー?」
その後、なんと10組以上も出来た。もう、なんでもいいや。とりあえず子供作れればいいわけだし。深く考えない方がいいや。パンクする。
俺は皆が解散したあと、最初に出来たゴブリンカップルのところに行った。少し興味を持ったのだ。
「なぁ、お前、どこに惚れたの?」
「えっと、僕が肉貰うって言った時に、嫌だよ!って言われたのね。その、嫌だよっが可愛かったんだ!」
「変わってんなぁ、そんな可愛くな..,いや。ゴブリンとはいえ女だ。まぁ、幸せにしてやんなよ。」
「う、うん!」
俺は木と枝と葉で出来た小屋に入る。とても簡素だが、ただ過ごすだけにはむしろ心地よささえ感じる。はぁ。最近俺はおかしい。何故か、無意識のうちにリリィの顔が浮かんでくる。胸が高鳴る。好き・・・なのか・・・?
「いつでも遊びに来てね!」
その言葉が、ずっと心の中でこだましていた。
少し過去を振り返ろう。
俺は高校1年生だった。クラスではモブキャラで、端っこでひとり本を読む日々を送る。成績は上位で、偏差値は全国模試でも70は超えている。暇で勉強していただけだが。読んでいた本はラノベが多く、現実では叶えることの出来なかった、ラブコメ学園ものを読んでいた。また読みたくなってきたな。
これといった友達もいなく、中学校の友達としか遊ばなかった。特に可愛い子もいなくて、正直つまらなかった。
でも今は、とても楽しい。大変なことは沢山あるが、それでもこちらの世界の方が幾分か楽しい。
もう夜遅いや、寝なきゃ。また明日から忙しいぞ。
深い眠りについた。