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ゴブリン使って異世界征服  作者: ゴブリンのおさ。
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盗賊ザイルの独裁

洞窟から出て4時間ほど。かなりの距離を歩いたら、村らしきものが見えてきた。いかにも村って感じの村。畑があって、花も咲いているのが綺麗だ。ただ、何か殺風景に思える。


「人が誰もいない・・・?」


農作業をしている人影も、話し声も、何も聞こえない。何かがおかしい。こういう日もあっていいや、なんて空気でもない。明らかに重たい空気が流れていた。ゴブリンはそんな空気が読めず、「人いねぇぞ!飯奪い放題だ!」とかキャーキャー騒いでいる。少し黙らせようかな。


すると、そんなゴブリンの声に反応したのか、近くの家の窓から女の子が覗いているのが見えた。年は俺と同じくらいに見える。ただ、ひどく顔が強ばっている。俺はその家に近づいた。


「君、少し話せないか?」


窓越しに話しかけたが、反応がない。


「何でそんなに怯えた顔を・・・?俺は、この村に始めてきたんだ。ゴブリン族族長をしている。ここの村に来て思ったんだが、明らかに普通じゃない雰囲気がする。そのことについて気になってるんだ。話してくれないか?」


そう、しっかりとした声音でいうと、女の子は大急ぎでドアに走り、開けて、「早く入って!」と言った。俺はゴブリンを外に待たせて、部屋に入れてさせてもらった。


「ありがとう。俺の名は橘準。さっきも言ったが、わけあってゴブリン族の族長をしている者だ。」


「そ、そう。私はリリィ、アレンデール・リリィと言います。」


「そうか、リリィ、よろしく。それで、この村に何があったんだ?」


「えっと、話すと長いんだけど、簡単に言えば、急にきた人たちがいきなりこの村の頭領だと言い張って、無茶を言ってくるの。」


「なんだって?」


「だから、あなた達を見つけた時はもしかしたらその人と関わりのある人たちなのかと思って、入れるのを拒んでいたの。ごめんなさい。」


「何を言っている、この状況下だ。無理もない。懸命な判断だと思うよ。でも、その人が来る前の頭領はどうなったんだい?」


「実は、私の父が前頭領を務めていたんです。父は必死で抵抗したのですが、結果的に牢屋に入れられてしまいました。」


「うーん。なんとなく状況は理解出来た。」


まさかこんな問題ごとが起きていたなんてな。厄介だ。だけど、いい機会でもある。この危機に貧した村を救えば、何かしら利益は出るはずだ。いっちょやってやるかっ!


「俺たちゴブリン族が、この村を救うよ。」


「なぜです!?あなた達は無関係、そんなこと頼むことはできません!」


「君が頼んでいるんじゃない。俺が、この村を救いたいんだ。」


「え・・・どうして・・・」


「元々ここに来た理由は、この村の技術を貰うためだったんだ。そんな村が滅んでしまえば、俺らにとってもいいことはない。どうだい?助けるのは助けるが、後で技術盗んじゃダメってのはごめんだ。君からお父さんに頼んでくれるって言うのは。」


リリィは少し考える。とても整った顔立ちの小さな顎に手を当てながら。しばらくしてリリィは答えた。


「わかりました。やれるだけやってみます。とにかく、この村を救ってください。」


「任せろ!」


俺はそう言って外に出て、待っていたゴブリンたちに事情を話した。すると、「そんなひどい頭領なんか、ぶっ潰してやる!」「血祭りだぜ!」など物騒なことを叫んでいる。


「何も殺すつもりはない!ただこの村から出てってもらうだけだ。まぁ、やむを得ずの場合も幾分か考えられる。この中で最も戦闘能力に長けているやつ、3人ぐらい出てきてくれ。そんなに人数はいらないはずだ。」


俺は、その他のゴブリンをただ待たせるだけではダメだと思い、何かリリィの手伝いをしろと言っておいた。リリィにも伝えておいたからあいつらの心配はいらない。問題はこっちだ。頭領が今住んでいる豪華な家の在処は教えてもらったからいいのだが、話が通じるやつだろうか?


リリィの家から15分程度歩いた先にあった。とても豪華だ。わざわざ作らせたらしい。その家に近づこうとすると、控えていた甲冑姿の門番兵が2人出てきた。


「おいガキ!何勝手に入ろうとしてんだよ!これはただ事じゃすまないぞ?」

「投獄なんて甘いものじゃおわらねぇ。死刑だな!」


「あんた無茶苦茶だなっ!・・・頭領と話がしたいんだ。通してくれないか?」


「うるせぇよクソガキ!死ねっ!」


そう言うと、持っていた槍を俺の心臓めがけて刺そうとしてきた。嘘だろ?止める気がない。笑ってやがる。こいつら、狂ってんじゃねぇのか!?


ヤバいっ、死ぬっ


なのに何秒待っても槍は刺さってこない。ん?と思い目を開けると、ゴブリンが静止に入っていた。驚いた。ゴブリンの立ち位置から距離がそんなに開いてはなかったとはいえ、この素早さで動けるのか?おまけに筋肉質で火力もある。これは・・・素晴らしい!!


「族長の命狙ったぞコイツら!お前らやれっ!」


「「おうっ!」」


残りの2体のゴブリンも恐ろしい速さで門番兵を切りつける。殺しはしなかったものの、大量出血だ。しばらくは動けない。


「ありがとう。助かったよ」


「とんでもないっす族長。俺らに出来るのは、これくらいっすから!」


頼りになるな。


そして、やっとこさドアの前にたどり着く。3回ノックをすると、中からかなりいかつい、顔に十字型の切り傷をつけた大柄な男が出てきた。


「あ?なんだてめぇ。」


そう言うと、俺の後ろで門番兵が血だらけになっているのを見た。


「はっ、そういうことか。反逆者だな?」


門番兵が死んでるのを見たはずなのに、何故かニヤニヤしている。


「まぁ、うち入れや。」


そう言って、ドアを大きく開き中へ手招きする。俺らは言われた通り中に入る。話が通じるやつかもしれない。


「どういう了見だ?話だけは聞いてやる。」


「俺はこの村のものではない。ゴブリン族族長の橘準という。」


「あ・・・?この村の者じゃねぇだと?」


「そうだ。訳あってここに来たところ、どうやら独裁を働いているらしいじゃないか。」


「ははっ!独裁とぁひでぇ言い方してくれんじゃないの。俺はただこの国に潤いをもたらそうとしてるだけだ。」


「何を言うかと思えば。村の娘に聞いたぞ?村人の税は収穫の8割らしいじゃないか。」


「俺たち盗賊のおかげでこの村は成り立ってんだぞ?そのくらい当然だろう。」


「盗賊・・・?」


「そうさ、俺ァこのへんじゃ有名な盗賊、ザイルっつーもんだ。」


「ザイル。お前の政治はこの国の発展に悪影響しか及ぼさない。今すぐ山に帰れ。」


「黙って聞いてりゃ調子乗ったこと言いやがって。」


ザイルは腰に入れている鉄の剣を抜く。俺の隣にいるゴブリンたちも身構える。


「あんま舐めてもらっちゃ困るなぁ俺を。この村の剣技を習得した俺に勝てるか?」


「何を言っているんだ?まぁどうでもいい。すまないゴブリンたち、頑張ってくれ!」


それから3対1の対決が始まった。ただ、ザイルの剣術は見事なものだった。数の優位をものともしない華麗な動き、剛腕から繰り出される思い一撃一撃。適当に戦うだけでは簡単に負けてしまいそうだ。ゴブリンは近づく→切るくらいしか考えれないため、3人のコミュニケーションもバラバラ。足でまといになる動きをするものもいる。そうか、指示を出さねば。


「聞けゴブリン!俺が指示を出すからその通りに動け!ザイルの剣術は確かに華麗だ。だが、スピードがないっ!明らかにスピード特化の剣さばきであるにも関わらず、ザイルの剣ではうまく使いこなせていない!ここを突く!」


スピードに特化した剣術は、隙がかなりある。ただ、その隙を得意の機敏さで埋めるからこそ驚異的な剣術となるのだ。なのにザイルは、その大柄な身体のせい、又剣のせいでそのすきが埋めれていない。それは、スピード重視の剣術からして致命的な欠点だ。


「2体で左右から切り込め!」


切り込むと、ザイルは俺の予想どうり、身体を大きくひねって右に薙ぎ払い、一気に2体の攻撃を防いだ。


勝機っ!


「今だ!残りの一体は懐に飛びつき、心臓をえぐれ!!」


しっかりと踏ん張った足で驚異的なジャンプ力と素早さを出しながらザイルの懐-心臓部分-に入り、石の剣を深く突き刺した。ザイルは吐血する。


ザイルは右に薙ぎ払ったあと、大きく体勢が崩れてしまった。なぜか。本来スピード重視であるから、おおきく振りかぶって火力を増すのだが、それが仇となったのだ。タダでさえ火力があるのに振りかぶることで、振り切ったあとの反動は大きく、十分な時間があった、そこを突いた。


「グ・・・グハァッ・・・」


大量の血が流れ出る。床に突っ伏してしまった。


「命をとるつもりはなかったが仕方が無い。仕掛けたのはお前からだ。」


「クソ・・・クソガキァァァァアアアアア!!!」


そう叫ぶと、絶命した。



死体をそのままにしておくのは気が引けたので、土をほって入れてやった。二度と還るな。こうして、結局手荒なことをしてしまう事になった。が、問題は解決しそうだ。

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