Dead and Alive〜彼は死に、そして生きた〜
処女作です。生暖かい目で見守って下さいませ。。。
西暦1990年、私は誕生した。何不自由なく、平凡ではあるが健康的に育った。そしてよく本を読み、ファンタジーに想いを馳せていた。
西暦2002年、新しい本を読み始めた。その本が私に地獄門を潜らせた。
私の名前は佐々木拓巳。現在26歳。どこにでもいる普通の会社員だ。そう、ただの普通の、郡の中に埋もれる個となった凡俗の1つだ。中、高、大と順調に進学し4年前から出勤という名の葬列に参加し始めた。卒業する前にはちゃんと就職先が決まっていたことも然り、割と順調に人生を歩んでいると周りからよく見られる。確かにそう苦しんだ覚えは無い。
しかし、それが私にとっては苦痛だった。きっときっかけは小学校だか中学校の頃に読んだあの本だろう。今でもそれを持ち歩いている。あれを読んでから私の人生は糞の掃き溜めのような見るに堪えないものになってしまった。
その物語がそれ程素晴らしいものかと聞かれると、売上は実の所そうでもなかった。内容も大勢の人には王道ファンタジーとしか写らないものだろう。しかし、私にはどうしてもあの物語を忘れられない。何故なら、初めて私に「感情」というものを教えてくれたからだ。初めて抱いた「感情」は「苦しみ」だった。かなり長い物語だったため1日では読み切れず途中で読むのをやめた時に感じたものだ。次に感じたのは「興奮」だった。ファンタジー物なら大体あるバトルシーンだ。最後に抱いた感情は「哀しみ」だ。物語がハッピーエンドを迎えて本を閉じたその瞬間にそれは私の元に訪れた。
初めてあれを読んでから10年は過ぎた。以来ずっと哀しみに暮れている。一層の事物語を彩った勇者達のように冒険に出るだけの気合があればいいのだが、如何せん私は臆病な質故に周りに流され、いくら悲哀の沼にに沈みゆく身と言えども、笑うべき時に笑うような生き方をしていた。
そして、今日、今まさにこれからだ。地獄に別れの祝砲を鳴らす。私は走る列車の前に飛び出た。
祝砲は肉や骨の潰れる汚く酷い嫌悪感と吐き気を催すような音だった。