茨の道
一年で、変わるものなんて、ここには無い。
相変わらず、空虚で、武骨な、遺跡。
僕は変わっただろうかと、一人、考える。少なくとも、あの時の様に、何も解からないままではない。
僕は、僕の答えを見つけたから。
一年前と同じ場所、同じ姿で、ハルが佇む。セイとトキは、後方で静かに立っている。あの時と同じように、対応はハルに任せるようだ。
「こんにちは、サハラ」
「こんにちは、ハル」
初めて、名を呼ぶ。
「答えが出たよ」
「聞かせてもらっても良いかな」
穏やかな表情。僕の答えを聞いたら、どうなるのだろう。
「僕は、やっぱり貴方たちが憎い」
父さんの意志だとしても、手を下したのはこの人たちだ。
「だから、貴方たちを殺す」
僕は、そう言って、笑ってみせた。
ハルは、少し驚いたように瞠目する。
「もっとも、今すぐは無理だけどね」
これが、僕の答え。
「僕は、不老不死になったよ。『エンドレス』を摂取した。だから、時間は幾らでもある。いつか必ず、貴方たちを殺してみせる」
「殺してくれるの?」
ハルは微笑んだ。
「間違っても、貴方たちに殺してほしい、なんて言わないよ。絶対に、僕が殺してやるから」
「俺たちは、全人類が滅びても生き残るけれど?」
「それまでには、殺して見せるよ」
「どうやって、死なない人間を殺すの?」
「取りあえずは勉強する。貴方たちを殺す為に」
ハルに、セイに、トキに、言葉を贈る。
「貴方たちを殺す為に、僕は生き続けるよ」
目標があれば、永遠に飽きたりはしない、それが困難であればあるほど、人生は充実する。
僕は、僕から大好きな父さんを奪った、大嫌いな貴方たちに、復讐をする。
「これが、僕の答えです。」
どう思う、父さん――。
「セイ、トキ、感想はある?」
「生意気だな」
「身の程知らず」
「ハルはどうだ」
「楽しみ」
ハルが嬉しそうに笑う。
「ま、退屈はしなさそうだな」
「精々、挫折を味わえ」
三人の殺人者は、可笑しそうにサハラの言葉を受け取った。
「これからもよろしく、サハラ」
ハルが手を差し出した。
「こちらこそ、ハル。覚悟していて下さい」
サハラがその手を強く握る。
「覚悟、させてくれたらね」
二人が、嗤った――。
西暦68495年。
僕は、殺人を決意した。
ここから、僕の道が始まる――。
遥か彼方むかしに書いた話です。テスト投稿。




