~黒雨~
すみません、あわてて書いたものなのでお粗末でございます・・。
それでも呼んでくださる方はどうぞお進みくださいませ。
時刻は丑三つ時、まだ闇が町を覆っているときだ。
町の中心部。
闇の中に紅い染みのようなものがあった。
それは曼珠沙華、別名 彼岸花だった。何十何百と咲いていた。
曼珠沙華は紅くぼんやりと光っているようで、どこか不吉だ。
そして、城。
曼珠沙華に守られるように
黒く重たい空気を漂わせた城があった。
その城の最上階には封印の文字が書かれた部屋があり……
さて、この物語はその『城』の中で始まる。
主人公は若くして城の主となった姫。
その名は―――――
「小百合姫様」
一人の家臣が頭をたれた。
「先日の件なのですが…、実はお祖母様の病が悪化して…先ほどお亡くなりになりました」
家臣の先には簾がかかっており、先は見えない。
「そうか、お祖母様が…」
簾の奥から響いた声は、まだ幼いものだった。
「では、私がここの城主となるのだな…」
その声には悲しみが滲んでいた。
「は、そのようにお祖母様から承っております。手配はこちらでさせていただきますので、姫様は何もなさらなくてかまいません」
家臣はそういって部屋から出て行った。
「………お祖母様」
簾の奥、小百合姫はつぶやいた。
「さみしくなっちゃった?」
扉の向こうから声がした。
それも若い男の声。
家臣じゃない、聞いたことのない声だった。
「なぁ、さみしいなら俺がいてあげる」
その声は一瞬にして彼女の背後にまわった。
「そなた、どうやって…、一瞬で…?……何者じゃ」
「それとも、さみしくない?」
その声はすぐ耳元に。
熱い息が耳に引っかかる。
「俺のこと――――知ってるくせに」
囁く男の声は優しくて、温かいものだ。
だが、なぜか悪寒と震えが全身を走る。
小百合姫は確かに彼を知っている。
それもいつも近くにいる存在。
だが、そんなはずはない。そんなはず…
「じゃぁ、もう一度教えてあげるよ。俺の名は黒雨。死神だよ」