表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/15

一章 人間使い Ⅳ


 ダイさんが静かに口を開く。


「お前さ、変だ。奇妙、妙に無頓着だ。明らかに一般的な人間とは違う」


 行き先がまだ見えきらない。

 ぼかした言い方で、灯火の周りに漂う暈の様に曖昧な言葉でダイさんは踏み込んでくる。囲う様に、詰める様に。アナタも随分と遠回りではないだろうか。そう思う。


「物事を比べるのは……なんと言うか……その、『あやふや』を形にするって行為があんまり好きじゃない……そんな中で性格なんて尚更ですよ。俺だってごく一般的っす」


「適当を抜かすねぇ、それっぽい事言えば流れていくと思ったのか? こんな例え山に釣竿持ってく様なもんだぜ」


「……山を流れる川にだって魚はいますよ」


「何、そうなのか」


 知らなかったのかよ。適当なのはどっちだ。


「ま、それはともかくだ。お前は俺が今まで見てきた人間とは何となく違う」


 それはともかく、とされてしまった。逸らさずにダイさん自身が言いたい事を押し通してくる。このボケもきっと計算の上なのだ。

 どんどん足場が削られていく、彼の知りたい事、俺が触れたくない事に追い込まれていく。触れてはいけない訳ではないが、余計な事を考えてしまうのは嫌だ。


 アカネはまだ宙に目を向けている。何を考えているのか、彼女もいったい何なのか。


「……『詳しく説明するのもお前が初めてだ』とか言う割には人と比較するんだな」


 あえて声に出してみる。音量はダイさんに聞こえるか聞こえないかの瀬戸際ぐらいに、設定は思わず零れた独り言で。細かい所を――、


 突いていこう。という俺の意識がダイさんの鼻での笑いに掻き消される。


「その呟きだって打算的なモンだろ? そんな行動が取れる時点で普通じゃあ無ぇ。想定外にも、伴う恐怖をも踏まえてたった一つ、今を例に取るならば、『逃げようと』いうその他を切り離して一点に向かう思考、精神は普通じゃねぇ。気になるね、気になる」


 突く隙すら無かった。彼はここまで見通して会話を重ねていた――のだろう。置ける石が無い、脳内の盤面は一面の黒。そもそも俺は掌の上だったのだ。


「大した年数も無い、恐らく二十にも満たないお前の齢をよぉ、どう生きたらそうなれるんだ?」


 ふと気を戻すとダイさんが目の前に立っていた。俺と殆ど身長は変わらない筈なのに、反り立つ壁の如き威圧感。ダイさんが迫り、俺が一歩下がり。ダイさんが何をしたいか分かったが、結局手を進める術はゼロ。どうすればいい。


「言動から、名前から、立ち振る舞いから、気になるね」


 単語一つ一つを丁寧に発音して、ダイさんが右手に握った何かを俺の額に押し付ける。黄色く薄い三角形の何かを俺の頭を掴む事と並行して押し付ける。逃げられない。動けない。


「何……を…………」


「安心しろ。お前が聴いた声を、今のお前を作った声を」


 言葉は続かず、持ち上げ掛けた腕も降りていく。視界が薄く、白くなっていく。


 聞こえる声が、凄く遠い――


「聴かせて貰うだけだ」




 暗転。






『俺はお前が嫌いだよ。お前は悪くはないがな、とても嫌いだ』『ねぇ、その遊び……楽しい? 蟻がかわいそう』『鬼の子が、触れんじゃねぇ』『誰のお蔭でこの家にいられるんだろう。考えたら?』『カ行さえ無ければァァァァァァァ!』『ほ、ほんの冗談だろ、な?』『死んじゃえよ』『趣味悪い』『友達になってよ、お金あげるから』『そのサンドイッチはワタシが目を付けてたものなんだヨー、三年前から』『もう関わらないでくれ、うちの子に』『人間は敏感でなくちゃあ駄目だ、そしてオーバーでなくちゃあ、そうでなくちゃあ人間である意味が無いぜ』『うなぎうまい』『君はこの町に舞い降りた天使ならぬ悪魔、しかも弱い。磔にして飾るのも、首を切って晒すのにも丁度良すぎる』『オメェがどうせやったんだろうがぁ!』『親の事が知りたい?』『敷神君』『僕と会えるのももう最後だぜ? 泣けよ』『机の中にトンカチ入ってたんだが何これ泳げない僕に向かっての盛大な嫌がらせ?』『君の父親は檻の中で首切って死んだってよ』『あああごめんなさいごめんなさい』『アーンタって何か黒いよナー、暗いんじゃなくて黒い』『しくがみきりさき? 変な名前』『君のお母さんが、君をここに預けていったの』『僕の役目は君に信念を押し付ける事だ、生き方を見付けて貰う事。君がどんな道に進むことになっても、だ』『キリサキ君って何か面白いね』『桐咲君をここに置いておく訳にはいかない』『お前を人間だとは思わない』『また自転車で出かけるんだ、いってらっしゃい』『君の母親が人を殺したそうだ、それも、何人もだ』『掴み所が無いなあ君は、持ち手くらい付けたらどうなのさ』『永遠のティーンエージャーだ』『ゴルゴ13貸して』『何の目的も無く死んでる様に生きて、楽しいかい? 楽しかったかい? 楽しくあれるのかい?』『やーいやーい犯罪者』『初犯じゃないらしい』『兄貴は私の言う事を聞くしかないんだよ』『よくもまあ生きてられたもんだ』『いま……一人なの?』『い、一日一万円!?』『ナーナーキリサキ―』『なんでお前がついてくるんだよ』『なんでお前みたいのが……っ』『正直な所、君がいたから他の子が仲良くいられたんだろうね。結局は君が悪とか言ってた方々が悪だったのかも分からないね』『違う! 私はそんな』『くわばらくわばら』『君は今、何をしたい? どう在りたい?』『学校でファーストフードってなんだか新しいね、って何これ不味い』『見たい景色を見れない法律なんてひどくナンセンスだね』




『君は殺人鬼の両親から生まれたって事だよ。殺したり産んだり大変だね、足してもはるかにマイナスだけど』





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ