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風葬のシルヴァ  作者:
第五章 魔王軍隊長
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最終話 風の続く世界

魔王戦争から、三年が経った。


 世界は静かに変わっていた。


 ノクティス大陸を覆っていた闇は完全に消え、かつて魔物の巣だった土地には少しずつ人の街が戻り始めている。


 長い間、誰も近づけなかった土地。


 その中心に、小さな村が作られていた。


 村の名前はまだない。


 ただ、人々はそこをこう呼んでいた。


「風の村」


 理由は単純だった。


 いつも不思議と風がよく吹くからだ。


 


 その村の外れ。


 丘の上。


 一人の少年が剣を振っていた。


 白い髪。


 静かな目。


 風が彼の周囲でゆっくりと流れている。


 シルヴァだった。


「……ふう」


 剣を下ろす。


 すると背後から声が飛んできた。


「まだやってるの?」


 振り向くと、ティナが立っていた。


 相変わらずの茶色の髪。


 腕を組んでこちらを見ている。


「毎日毎日飽きないわね」


「習慣だ」


「もう魔王いないのよ?」


「だからだ」


 シルヴァは肩をすくめる。


「平和な時ほど鈍る」


 ティナが呆れた顔をする。


「ほんと真面目ね」


 そこへ、軽い声が飛んできた。


「ねえねえ」


 二人が振り向く。


 クジャだった。


 相変わらずの眼帯。


 カードを指でくるくる回している。


「村の子どもたちがシルヴァに剣教えてほしいって」


「断った」


「もう断ってる」


 ティナが笑う。


「人気あるわよね」


「意味が分からん」


 クジャが肩をすくめる。


「世界を救った英雄だし」


「本人その気ゼロだけど」


 その時、遠くから声が聞こえた。


「シルヴァ!」


 振り向く。


 ミルスだった。


 以前より元気そうだが、さすがにまだ完全には治っていない。


「また子供たちが来てるわよ」


「ほら」


 ティナが笑う。


「逃げられないわね」


 シルヴァは少しだけため息をついた。


「……分かった」


 丘を降りる。


 その背中を見ながら、クジャが小さく笑う。


「結局やるんだ」


 ティナが言う。


「優しいのよ」


 ミルスも小さく頷いた。


 


 村の広場。


 子どもたちがシルヴァを囲んでいた。


「剣ってどうやって強くなるの?」


「魔王ってほんとにいたの?」


「風の技見たい!」


 質問攻め。


 シルヴァは少し困った顔をする。


 ティナとクジャがそれを見て笑っている。


 平和な光景だった。


 


 その夕方。


 村の外れ。


 クジャは一人で丘に立っていた。


 風が吹く。


 彼女はゆっくり眼帯に触れた。


 少しだけ持ち上げる。


 その瞬間。


 目の奥で、凄まじいオーラが一瞬だけ揺れた。


 すぐに眼帯を戻す。


「……まだ危ないかな」


 小さく呟く。


 その時。


 後ろから声がした。


「どうした」


 シルヴァだった。


「いや」


 クジャは笑う。


「ちょっと昔思い出してただけ」


「孤児院の?」


「そう」


 風が吹く。


 クジャは空を見上げた。


「でもさ」


「今の方が面白い」


 シルヴァは何も言わない。


 ただ空を見る。


 


 そして。


 遠くの空。


 雲の向こう。


 ゴロ……と雷が鳴った。


 ティナが振り向く。


「今の」


 クジャが笑う。


「さあ?」


 シルヴァは少しだけ空を見つめた。


 そして小さく言う。


「……あいつかもな」


 遠い空。


 雷がもう一度だけ鳴る。


 だが。


 それはもう戦いの音ではない。


 ただ、世界のどこかで鳴る普通の雷だった。


 


 風が吹く。


 静かな世界。


 新しい時代。


 その中心で。


 白髪の少年が、空を見上げていた。


 


 物語は終わる。


 だが――


 風は、これからも続いていく。



『風葬のシルヴァ』


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