第70話 半神半魔
風が渦巻く。
シルヴァの放った竜巻が、魔王の攻撃を受け止めていた。
炎。
雷。
岩。
侵食。
すべてがぶつかり合う。
轟音が広間を満たす。
だが。
その衝撃の中心で、魔王は動かない。
リベリオン•ゼノアはただ立っていた。
クジャが小さく呟く。
「……止めただけ?」
ティナも気づく。
「防いだんじゃない」
ミルスがかすれた声で言う。
「押し返されただけ」
その瞬間。
竜巻が崩壊した。
ドォォォォン!!
衝撃波。
三人が弾き飛ばされる。
シルヴァが床を滑る。
ティナが転がる。
クジャが壁に叩きつけられた。
ゼノアが静かに言う。
「悪くない」
魔王の手の中で、核が光る。
第四魔王。
ミルスの核。
「だが」
ゼノアの身体から闇が溢れ始めた。
床が震える。
空間が歪む。
ミルスの顔色が変わる。
「……まずい」
クジャが言う。
「え、なに」
ミルスが答える。
「核の共鳴」
五つの核。
第二。
第三。
第四。
第五。
第六。
それらが同時に反応していた。
魔王の魔力が急激に膨れ上がる。
ティナが歯を食いしばる。
「まさか」
ゼノアが笑う。
「そうだ」
闇が広がる。
背中が裂ける。
巨大な翼が広がる。
腕が黒く変質する。
皮膚に紋様が浮かび上がる。
半神半魔。
魔王の真の姿。
第二形態。
クジャが思わず言う。
「……嘘でしょ」
ゼノアがゆっくり目を開く。
その瞳は、もはや人間のものではない。
「これが」
低い声。
「魔王だ」
次の瞬間。
地面が砕けた。
ズドォォォォン!!
巨大な岩壁が突き上がる。
第二魔王の力。
大地支配。
同時に炎が噴き上がる。
第五魔王。
爆炎。
さらに黒い影が広がる。
第三魔王。
侵食。
雷が落ちる。
第四魔王。
元素魔法。
そして魔力がさらに膨れ上がる。
第六魔王。
魔力増幅。
五つの力が同時に暴走する。
魔王城が揺れる。
空間が歪む。
ティナが呟く。
「……化け物」
クジャも苦笑する。
「いやもう笑うしかない」
シルヴァは剣を握る。
風が揺れる。
ゼノアが一歩踏み出す。
その一歩だけで床が砕けた。
「終わらせよう」
その瞬間。
ゼノアが消えた。
次の瞬間。
シルヴァの前。
拳。
ドォォォォン!!
シルヴァが吹き飛ぶ。
壁を突き破る。
ティナが叫ぶ。
「シルヴァ!」
クジャがカードを投げる。
「♦︎!」
爆発。
だが。
煙の中から魔王が歩いてくる。
無傷。
ミルスが小さく言った。
「……違う」
ティナが聞き返す。
「何が」
ミルスが答える。
「強さが」
「さっきまでと」
「次元が違う」
シルヴァが瓦礫の中から立ち上がる。
血が流れている。
だが剣はまだ握っている。
ゼノアがそれを見る。
「まだ立つか」
シルヴァが言う。
「当たり前だ」
風が強くなる。
空気が震える。
クジャが呟く。
「……あれ」
ティナも気づく。
「風」
ミルスが小さく言った。
「来る」
シルヴァの周囲で風が爆発する。
竜巻が生まれる。
魔王が笑った。
「なるほど」
その瞳が輝く。
「神の対抗存在」
風が唸る。
シルヴァの覚醒が、始まろうとしていた。




