第66話 奪われた核
闇が中央塔を飲み込んだ。
ジェネシスの放った魔法――
虚界崩断。
空間そのものが崩壊する。
黒い裂け目が広間を覆い尽くす。
床が割れ、瓦礫が浮き上がる。
ティナが叫ぶ。
「シルヴァ!」
その瞬間。
風が爆発した。
中央塔を覆う暴風。
シルヴァの周囲で空気が渦巻く。
瓦礫が宙へ舞う。
シルヴァが剣を構える。
「終わりだ」
ジェネシスが闇を押し込む。
虚界崩断が拡大する。
だが。
シルヴァは一歩踏み込んだ。
風が収束する。
剣に集まる。
圧縮。
凝縮。
そして――
シルヴァが振り抜いた。
「天風創断」
風が世界を斬った。
暴風の刃が闇を切り裂く。
虚界崩断が崩れる。
空間が裂ける。
ジェネシスの瞳が初めて見開かれる。
「……!」
次の瞬間。
風の斬撃が直撃した。
ドォォォォン!!
中央塔の壁が崩壊する。
瓦礫が吹き飛ぶ。
ジェネシスの身体が地面に叩きつけられる。
血が広がる。
静寂。
数秒の沈黙。
ティナが息を吐く。
「……やった?」
クジャが言う。
「いや」
その瞬間。
闇の魔力がわずかに動いた。
瓦礫の中。
ジェネシスがまだ立っていた。
だが。
満身創痍。
胸。
腹。
肩。
すべて深い傷。
ラースの斬撃と、今の一撃。
明らかに限界だった。
ジェネシスは小さく笑う。
「……なるほど」
シルヴァを見る。
「ここまでとは」
ミルスが魔法を構える。
「まだやる?」
ジェネシスは首を振った。
「いや」
そしてゆっくり言う。
「役目は果たした」
その瞬間。
シルヴァの胸が光った。
「!」
クジャが叫ぶ。
「シルヴァ!」
第三魔王の核。
シルヴァが持っていた核が反応する。
闇が伸びる。
ジェネシスの手が空間を掴む。
「回収」
ズッ――
核が引き抜かれる。
シルヴァが膝をつく。
「くっ……!」
ジェネシスの手に、第三魔王の核が現れる。
ティナが剣を振る。
「させない!」
だが。
空間が歪む。
ジェネシスの身体が消える。
転移。
広間の奥。
ジェネシスは核を握る。
「これで」
「四つ」
第二。
第五。
第六。
そして第三。
闇の魔力が膨れ上がる。
ジェネシスが空を見上げる。
「魔王」
静かに呟く。
「準備は整った」
その瞬間。
ジェネシスの身体が崩れた。
膝をつく。
血が流れ続けている。
だが笑う。
「……だが」
シルヴァ達を見る。
「ここまでだ」
空間が開く。
黒い裂け目。
ジェネシスはその中へ歩く。
最後に言った。
「次は」
「魔王だ」
裂け目が閉じた。
静寂。
中央塔に残されたのは四人。
そして。
ラースの亡骸。
ティナが小さく言う。
「……核」
ミルスが答える。
「奪われた」
クジャが息を吐く。
「しかも四つ」
シルヴァは立ち上がる。
拳を握る。
そして中央塔の奥を見る。
「魔王城」
低い声。
「行くぞ」
戦いは、まだ終わらない。




