第56話 風葬
魔王城・西塔。
石柱が並ぶ広間。
その中央で、シルヴァは足を止めた。
正面に一人の男が立っている。
長い剣。
静かな殺気。
魔王軍第五隊長――ベルーゼ。
ベルーゼはシルヴァをじっと見つめた。
「お前が」
「シルヴァか」
シルヴァは剣を抜く。
「そういうお前は」
「魔王軍の隊長だな」
ベルーゼは静かに頷く。
「第五隊長ベルーゼ」
「名前くらい覚えて死ね」
シルヴァは軽く肩を回した。
「悪いな」
「覚えるのは倒したあとだ」
ベルーゼが笑う。
「面白い」
剣を構える。
「なら」
空気が張り詰める。
「試してやる」
次の瞬間。
ベルーゼが消えた。
ドン!!
衝撃。
剣が振り下ろされる。
シルヴァが横へ跳ぶ。
床が砕けた。
ベルーゼの目が細くなる。
「反応はいい」
シルヴァが踏み込む。
風が巻き起こる。
剣が走る。
キン!!
金属音。
ベルーゼが剣で受け止めた。
「なるほど」
笑う。
「ただのガキじゃないな」
シルヴァは言う。
「隊長も大したことなさそうだ」
ベルーゼのオーラが膨れ上がる。
空気が重くなる。
「そう思うか?」
黒い翼が広がる。
魔神化。
床が軋む。
シルヴァの目が鋭くなる。
「……来たか」
ベルーゼが踏み込む。
凄まじい速度。
剣が振るわれる。
シルヴァが受ける。
ガァン!!
衝撃。
柱が崩れる。
ベルーゼが笑う。
「いい」
「強い奴を殺すのは楽しい」
シルヴァが静かに言う。
「奇遇だな」
風が集まる。
剣に集中する。
空気が震える。
「俺も」
一歩踏み出す。
「同じだ」
次の瞬間。
風が爆発する。
「天風創断」
斬撃。
ベルーゼが剣を振る。
だが。
風の刃が先に届く。
ザン!!
ベルーゼの胸が斬り裂かれた。
血が飛ぶ。
ベルーゼは膝をついた。
少し笑う。
「……見事だ」
シルヴァは何も言わない。
ベルーゼはゆっくり倒れた。
ドサッ。
魔王軍第五隊長ベルーゼ。
ここに死亡。
その瞬間――
パチパチと拍手が響いた。
シルヴァが振り向く。
そこに立っていたのは。
雷のオーラをまとった男。
ディーン。
元勇者パーティの戦士。
そして魔王軍第一隊長。
ディーンが笑う。
「見事だな」
シルヴァが剣を構える。
「……ディーン」
ディーンが雷をまとった剣を抜く。
「まさか」
「お前と戦う日が来るとはな」
雷が広間を照らす。
ディーンが言う。
「ここからが本番だ」




