第51話 魔王城
夜が明ける頃。
黒峰山脈を越えた四人の前に、それは姿を現した。
巨大な城。
いや、城という言葉では足りない。
山のように巨大な黒い建造物が、ノクティス大陸の中央にそびえ立っていた。
雲を突き抜ける尖塔。
幾重にも重なる城壁。
空そのものを覆い隠すような威圧感。
ティナが小さく呟く。
「……これが」
クジャが肩をすくめる。
「魔王城」
ミルスは静かに頷いた。
「ノクティス大陸の中心」
「魔王の心臓部」
シルヴァは城を見上げる。
何も言わない。
だが、その視線には迷いがなかった。
ティナが言う。
「ここまで来たのよ」
「引き返す気はないでしょ」
「最初からない」
シルヴァは短く答えた。
クジャが笑う。
「じゃあ行こうか」
四人は城門へ向かう。
魔王城の門は巨大だった。
高さは三十メートル以上。
黒い鉄で作られている。
普通なら、開けることなど出来ない。
だが。
四人が近づいた瞬間。
ギィィィ……
重い音を立てて門が開いた。
ティナが剣を握る。
「……歓迎されてるわね」
クジャが笑う。
「罠だね」
ミルスは言った。
「当然よ」
シルヴァは歩き出す。
「行くぞ」
四人は城の中へ入った。
内部は静まり返っていた。
高い天井。
長い廊下。
黒い石の床。
だが。
魔王軍の兵士が一人もいない。
ティナが眉をひそめる。
「……おかしい」
クジャが言う。
「逆に怖いね」
その時だった。
声が響く。
「ここまで来たか」
四人が同時に構える。
廊下の奥。
闇の中から、一人の男が歩いてきた。
白い長髪。
黒い衣。
冷たい瞳。
ミルスが小さく言った。
「……」
その男は静かに笑った。
「初めまして」
「侵入者たち」
ティナが睨む。
「誰?」
男は軽く頭を傾ける。
「ジェネシス」
「魔王軍の参謀だ」
シルヴァが言う。
「止めるのか」
ジェネシスは首を振る。
「違う」
ゆっくり手を上げる。
「試すだけだ」
次の瞬間。
床の紋様が光った。
魔法陣。
ミルスが叫ぶ。
「転移!」
ドォォォン!!
光が爆発する。
空間が歪む。
ティナが手を伸ばす。
「シルヴァ!」
しかし。
光が四人を飲み込んだ。
一瞬。
姿が消える。
静寂。
廊下にはジェネシスだけが残った。
彼は小さく笑う。
「さあ」
「楽しませてくれ」
魔王城の試練が始まった。




