第50話 魔王軍の精鋭
夜が更ける頃。
氷牙山脈を背にした四人は、焚き火を囲んでいた。
火の音だけが静かに響く。
パチ……パチ……
ティナは枝で火をいじりながら言った。
「それにしても」
「魔王城ってどこにあるのよ」
クジャが空を見上げる。
「ノクティス大陸の中央」
「黒峰山脈の向こう」
ミルスが補足する。
「この大陸の魔力の中心」
「つまり、魔王の心臓部」
ティナはため息をついた。
「分かりやすいわね」
シルヴァは黙ったまま剣を磨いている。
クジャが横目で見た。
「ねえシルヴァ」
「まだラースのこと考えてる?」
「別に」
「嘘」
「嘘じゃない」
「嘘だね」
ティナが笑う。
「クジャ、しつこい」
「だって面白いし」
ミルスが小さく笑った。
「兄弟ってそういうものよ」
シルヴァは肩をすくめる。
「知らん」
その時だった。
風が止まる。
焚き火の炎が揺れた。
ミルスの表情が変わる。
「……来る」
ティナが立ち上がる。
「魔物?」
ミルスは首を振った。
「違う」
「もっと強い」
クジャが目を細める。
「魔王軍だね」
次の瞬間。
森の奥から黒い影が現れた。
鎧。
魔力の槍。
赤い目。
十人以上。
統率された動き。
ティナが呟く。
「……精鋭」
先頭の男が低く言う。
「侵入者を確認」
「排除する」
魔王軍の兵士たちが一斉に武器を構えた。
シルヴァが立ち上がる。
「ちょうどいい」
剣を抜く。
「ウォーミングアップだ」
次の瞬間。
風が爆ぜた。
ドン!!
シルヴァの姿が消える。
敵の中央へ突っ込む。
キィン!!
一人。
二人。
三人。
一瞬で吹き飛ぶ。
ティナも走る。
「光斬!」
閃光の斬撃。
魔王兵の槍が砕ける。
クジャはカードを投げた。
「カードブレイク」
空を切り裂く刃。
兵士の武器を奪う。
ミルスが杖を掲げた。
「氷結」
地面が凍る。
魔王兵の足が止まる。
シルヴァがその中央を走る。
風が唸る。
「遅い」
一閃。
ドォォン!!
魔王兵が吹き飛ぶ。
戦闘は数分で終わった。
最後の兵士が倒れる。
ティナが息を吐いた。
「……精鋭って割には」
クジャが笑う。
「まだ入口だよ」
ミルスは遠くを見ていた。
夜の空。
その向こう。
黒い影。
巨大な塔。
シルヴァが目を細める。
「見えた」
クジャが振り向く。
「どこ?」
シルヴァは指をさす。
地平線の向こう。
雲を貫く巨大な影。
黒い城。
ティナが小さく呟いた。
「……魔王城」
ミルスは静かに言う。
「ここから先は」
「もう引き返せない」
シルヴァは剣を背負った。
「最初からそのつもりだ」
クジャが笑う。
「いいね」
「そういうの」
ティナは火を消した。
「じゃあ行きましょう」
四人は歩き出す。
ノクティス大陸の中心。
魔王城へ。
運命の戦いが、静かに始まろうとしていた。




