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風葬のシルヴァ  作者:
第四章 氷の牙
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第49話 別れ際

 氷の広間を出たあと、四人はそのまま村へ戻らず、山腹の少し開けた場所で一度休むことにした。


 兄弟戦の余韻が、まだ誰の中にも残っている。

 無理に歩き続けるより、少し呼吸を整えた方がいい。


 ティナは火を起こしながら、何度もシルヴァを見ていた。


「何だ」


「いや……」


「言え」


「本当に平気?」


「三回目だぞ」


「だって、さっきの冷気すごかったのよ」


「死んでねぇ」


「便利な言葉みたいに使わないで」


 クジャがくすくす笑う。


「ティナ、完全に保護者だね」


「違うわよ」


「違わない」


「どっちの味方なの」


「面白い方」


「最悪!」


 ミルスは少し離れて、氷牙山脈の奥を見ていた。


 ラースは引いた。

 だが、終わったわけではない。


「ねえ」


 ティナが火を見つめながら言う。


「ラースって、結局何がしたいの」


 シルヴァは少し考えた。


「魔王を殺す」


「それは分かる」


「その後は?」


「知らん」


 クジャが代わりに言う。


「でもたぶん、“何かになりたい”んじゃなくて、“何にも縛られたくない”んだと思う」


「自由でいたいってこと?」


 ティナが聞く。


「うん。でも、強すぎる自由って大体誰かを傷つけるんだよね」


 その言葉に、ミルスが小さく目を細めた。


「本質ね」


 クジャは肩をすくめる。


「なんとなく」


 シルヴァは火を見つめたまま低く言う。


「だから止める」


「勝ってでも?」


「ああ」


 ティナはその横顔を見た。

 決意はある。迷いもある。だが、それでも行くつもりなのだと分かる。


「……そっか」


 風が少しだけ弱くなる。

 氷牙山脈の空は相変わらず重いが、さっきまでより呼吸はしやすかった。


 クジャが突然、寝転がって空を見上げた。


「ねえ」


「何よ」


「この章、人気出そうだね」


「どの章よ」


「兄弟バトル編」


 ティナが呆れて笑う。


「今それ言う?」


「大事だよ」


「あなた本当にブレないわね」


 シルヴァは半分だけ苦笑した。


「確かにな」


「え、乗るの?」


「少しだけな」


 それを聞いたティナとクジャが、同時に顔を見合わせて笑う。


 そんな穏やかな空気の中、ミルスがふいに言った。


「氷牙山脈はここまで」


 三人が顔を上げる。


「ここから先は、隊長たちが動くわ」


「……魔王軍」


 ティナの顔つきが変わる。


「ええ」


 ミルスは頷く。


「ネメシスが落ちて、ラースも本格的に動いた。もう魔王軍が黙って見ている段階じゃない」


「つまり?」


 クジャが問う。


「次は、隊長編よ」


 その言葉には、今まで以上の重さがあった。


 ディーン。ヴァイラ。ベルフィリア。ゼルシア。ベルーゼ。

 そしてその先にいる、ジェネシス。


 ノクティス大陸の旅は、ここから“個の成長”だけでは済まない戦いへ入る。


 シルヴァは静かに剣の柄へ手を置いた。


「上等だ」


 その返事を聞いて、ミルスはほんの少しだけ笑った。

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