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風葬のシルヴァ  作者:
第三章 魔導の魔王
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第32話 地下中枢

 アストラの地下中枢へ走るティナの足音が、石の回廊に反響していた。


 魔力炉へ繋がる通路は複雑で、壁一面に古代魔導の紋様が走っている。

 普段なら美しいと思える光景も、今は不気味にしか見えない。


「急いで……!」


 ティナの後ろを、ミルスが追う。


「焦りすぎないで。足元を見なさい」


「分かってる!」


 返事は強かったが、実際には焦っていた。

 クジャを置いてきた。シルヴァは正面でネメシスと戦っている。ここで地下中枢まで壊されたら、アストラそのものが終わる。


 回廊を曲がった先で、黒い霧が渦巻いていた。


「……いた!」


 ネメシスの侵食影だ。

 人型に近い。だが顔がなく、腕だけが異様に長い。壁に手を差し込み、魔力炉へ繋がる陣を汚している。


 ミルスが即座に杖を振った。


「そこまでよ」


 重力の杭が落ちる。

 影が床へ縫い付けられる。


 だが完全には止まらない。霧のように身体を散らしながら、なお侵食を続けている。


「しぶとい……!」


 ティナが光を集める。


「聖光斬!」


 斬撃が影を断つ。

 今度は手応えがあった。侵食影が大きく崩れる。


 けれど、その奥からまた別の影が湧き上がる。


「まだいるの!?」


「本体と繋がってる限り再生するわ」


 ミルスの声が鋭い。


「ティナ、光を一点に集中しなさい! 散らすんじゃなく、核を焼くの!」


「核ってどこよ!」


 その瞬間、ティナの耳にクジャの声が響いた気がした。


 ――胸の奥、少し左。


 幻聴かもしれない。

 でも、ティナは迷わなかった。


「……信じる」


 剣を両手で握る。

 深く息を吸う。


 光を広げるのではなく、圧縮する。

 守るための光ではなく、断つための光へ。


 白い輝きが刃へ収束する。


「聖天閃光――!」


 一閃。


 侵食影の胸の少し左を、光が貫いた。


 影が止まる。

 次の瞬間、内部から白く焼け崩れた。


 ドォォォン!!


 回廊に張り付いていた黒い霧まで一気に消し飛ぶ。


 ティナが大きく息を吐いた。


「……やった?」


 ミルスはすぐに魔力炉を確認する。


「中枢は無事」


 それからティナを振り返り、少しだけ目を見開いた。


「今の光」


「……何?」


「圧縮できてたわ」


 ティナは自分の剣を見る。

 まだ微かに白い残滓が残っている。


「これが……」


「ええ」


 ミルスが頷く。


「あなたの覚醒の入口よ」


 だが、その余韻に浸る暇はなかった。


 上階から大きな衝撃音が響く。


 シルヴァだ。

 いや、シルヴァとネメシスの戦いが、一段上へ進んでいる。


「戻るわよ!」


「うん!」


 ティナは剣を握り直し、ミルスと共に再び上を目指した。

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