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風葬のシルヴァ  作者:
第二章 ノクティス大陸
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第17話 灼炎砂漠

 翌日、四人は岩場を抜け、ついに灼炎砂漠へ入った。


 景色が一変する。


 黒かった大地は赤茶けた砂に変わり、空気はさらに乾いた。

 地面のあちこちから熱気が立ち上り、遠くの景色が蜃気楼みたいに歪んで見える。


「……無理」


 砂地に足を踏み入れた瞬間、ティナが顔をしかめた。


「まだ入ったばかりだぞ」


「入った瞬間に無理なものは無理なの!」


「情けないなぁ」


「あなたも同じくらい汗かいてるでしょ!」


 実際、クジャの額にも汗が浮いていた。

 眼帯の下まで蒸れているのか、ひどく嫌そうな顔だ。


 シルヴァはそんな二人を横目に見ながら、風で熱を逃がして先へ進む。

 ミルスだけは、魔導で薄い冷気の膜を張っているのか、比較的平然としていた。


「ずるい」


 ティナが言う。


「工夫よ」


 ミルスは涼しい顔で返す。


「あなた達も覚えなさい」


「魔法使いと同じこと言われても」


 昼を過ぎた頃、砂漠の真ん中で獣の骨のような岩山が見えてきた。

 そこだけが妙に大きく、砂の海から突き出ている。


 ミルスが足を止める。


「ここから先が、第五魔王の巣よ」


「巣って」


「そのままの意味。アグニスは獣型。火山の奥を寝床にしている」


 クジャが目を細める。


「……いるね」


「分かるのか」


「うん。すごくうるさい」


 眼帯を押さえたクジャは、ひどく嫌そうに顔をしかめていた。


 その瞬間、砂が爆ぜた。


 四人の足元から、巨大な影が突き上がる。


「避けて!」


 ティナが叫ぶ。


 黒い獣。

 狼ではない。豹に似ているが、全身が燃える石みたいな皮膚で覆われている。口を開くたび、喉の奥で炎が揺れる。


「こいつら……!」


「第五魔王の眷属よ」


 ミルスが杖を振る。


「重力圧縮!」


 一体がその場で潰れる。

 だが残りは三体。さらに砂の下にまだ気配がある。


 シルヴァが剣を抜く。


「面倒だな」


「面倒で済ませないで!」


 ティナが光を纏って飛び出す。


「聖光斬!」


 獣の首が飛ぶ。

 同時にクジャのカードが砂の下へ突き刺さり、潜んでいた一体が爆ぜた。


「地面の下にもいるよ!」


「知ってる!」


 シルヴァが風を足元へ叩き込む。

 砂が吹き飛び、潜んでいた獣たちの位置が浮き上がる。


「右!」


「任せて!」


 ティナが走り、クジャが笑う。


「じゃあ左は僕ね」


 連携は悪くなかった。

 前よりもずっと自然に噛み合っている。


 だが――その最後の一体を斬り倒した時だった。


 砂漠の奥、岩山の向こうから、耳を裂くような咆哮が響いた。


 ゴォォォォォォ――ッ!!


 熱風が吹き荒れる。

 空気が震える。


 ティナの顔から血の気が引く。


「……これ、本体?」


 ミルスの表情が険しくなる。


「ええ」


 クジャの笑みも薄くなった。


「でっかい」


 岩山の向こうに現れた影は、今までの眷属とは比べ物にならなかった。


 四足の巨獣。

 全身が黒赤い炎を纏い、背中には溶岩のような亀裂が走っている。頭部には王冠めいた角。眼だけが、獣というより“王”の色をしていた。


 第五魔王――アグニス・バルド。


 熱が、世界を焼くように広がっていく。

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