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【完結】どくはく  作者: 春風由実


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あなたの告白⑧


 あぁ、良かったよ。

 覚えはあるなら話が早くていい。


 世継ぎを見るのが楽しみだと言ったんだってね?

 私の子を早く見たいとも言ったそうだな?


 悪い意味では言っていない?


 そうだろうね。

 悪い意味だけに捉えられないよう慎重に言葉を選び、ちくちくと針で刺していくような嫌らしい真似をしてくれたな?


 親が教えてくれないと大変ですね?

 私のために頑張らないといけませんね?

 伯爵家の育ちで物知りですね?


 お前は何様のつもりなんだ?


 間違えるな。

 彼女は私に何も言わなかった。


 城を出て気が緩んだな。

 ここでは自分だけは監視されないものとでも思っていたか?


 私も舐められたものだよ。



 言い訳はいい。

 本音の発言を許してやる。


 意思の疎通を図ろうではないか。



 言わないか。ならば当ててやろう。


 お前は私の相手が彼女では不満だった。

 

 尊き血を持つ私にもっと相応しい相手がいただろうと零していたのも聞いている。

 本意ではなく結婚させられる主君が不憫でならないと周囲に同情を誘い、何をするつもりだった?


 ほぅ。これは誤解か。


 お前の忠誠心の高さは知っているよ。

 だから城を出るときについて来るかと聞いたのだからね。


 お前のおかげで私もまた己の未熟をひとつ知ることになったよ。



 いいか、よく聞け。

 お前でも分かるように話してやるからな。


 臣籍降下の際に得る公爵位は、基本的に一代限りであることは分かっているな?

 確かに功績を残せは次代に続けることは出来る。


 そして私たちは二人で手を取り合い、あの女公爵にも負けない功績を残すことも決めている。

 これはお前も知っている通りだ。


 だがそれは子孫のためではない。

 私がいずれ『公爵夫婦のようにあれ』と言われたいから決めたことなんだよ。

 彼女はこれに同意してくれただけだ。


 しかし私は彼女との子どもが要らないとも言っていない。


 本当によく聞けよ。

 お前にはこの一度しかないからな?


 お前たちが話せば、彼女はそれを義務として受け入れるだろう。

 そして役割を務めようとする。


 それでは私が嫌なんだよ。


 私が子を望むときは、彼女が私との子が欲しいと心から思えたときだ。


 だから余計なことを言うな?



 そして彼女を下に見るのはやめろ。

 出来ないならお前は外す。


 その顔。

 お前は彼女の優しさに救われていることさえ分かっていないのだろうな。


 今までの話を他人事の顔をして聞けていただけはある。

 あぁ、今日はずっと感心していたからな。


 お前は本当に彼女を分かっていない。

 思想で歪めて、そのままを見ていないからだ。


 お前の嫌味が彼女に通じていないわけがないだろう。


 それでも彼女はお前を許した。

 それが彼女が君の優秀さを買った意味。


 彼女はな、一人に固執するような愚かな真似はしないんだよ。



 何を驚いている。

 

 そうでなければ、お前はやむを得ない理由で退職済みだった。


 退職の理由なら、私がいくらでも作ってやれるからな。

 だがそうしないのは、優秀な人材を失って彼女が悲しむという理由があるからなんだよ。


 これが恩情だ。


 お前の忠誠心は私も買っているからな。

 今度こそ間違えるな。

 私の意を真に理解してから動け。

 分からないなら聞け。勝手に都合よく想像するな。


 ここは城ではないんだ。

 あの場所での血統主義は忘れろ。

 城を出た王族がそれを持てば、争いの種にしかならないことを悟れ。

 当主となるのは私だろうと、この家で最も大事にすべき人が誰かを理解しろ。


 そしてそれを周囲にも理解させるんだよ。

 それがはじめからお前の仕事だ。




 さぁ、彼女を迎えに行こうか。

 今日はいつものお茶会だからな。


 彼女はなんて言うだろうね?

 

 今朝だって聞いていたか?

 愛人にどうかと、また別の令嬢を勧めてきたよ。


 酷い人だよ。

 そしてとても愛しい人だ。


 あんな顔をして言うんだから。


 あぁ、好きだな。

 そういう彼女が大好きだ。



 いつもうるさいくらいに話すのに大人しいね?


 迎えに行くのが早いだとか。

 惚気話は聞きたくないだとか。

 もっと引かれるからやめておけとか。


 いつもみたいに言わないのかな?


 彼女の前ではいつも通りにしてくれないと困るのだけど?

 そういう感じで行くなら、理由作りをするよ?



 諦めろ。

 君はもう逃げられない。


 城を出る私についてくると言ったのは君だ。

 選択は与えただろう?


 貴族家に入り、そして追い出された者の行く末は、君には分かるね?

 そして君は今日、さらに知ってしまった。


 そうだよ。君の思う通りだ。

 上に身を置く者たちなんてのはね、大衆の理想とする聖人君子とは掛け離れた人間ばかりなのだよ。


 綺麗ごとで国は成り立たない。

 上に立つ者の側にいてその恩恵を受けようとするならば、相応の覚悟を持ってくれないとね。


 上に立つ者たちだって、これは同じだよ。

 覚悟を持たずして役割を放棄し落ちていった者たちを、君は見て来ただろう?


 君が選び、そういう場所に身を置いて来たこと。

 今日からは正しく理解してくれると嬉しいね。





ここで完結です。

最後までお読みいただけて嬉しいです。

ありがとうございました♡

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