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【完結】どくはく  作者: 春風由実


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母の言い分②


 夫には正直に相談したの。

 愛し合う二人の間に隠し事は良くないでしょう?


 そうして長く話し合って。

 私たちは赤ん坊と距離を取ることにした。


 しばらくは乳母に任せて、起きている間はあまり顔を合わせないようにしてみたわ。

 眠っている姿はそうね、可愛らしく思えていたわよ。


 だけどどうしても、あの目……。

 あの瞳の色が苦手だったわ。




 そうしているうち、また私が妊娠して。


 出産のときは一度目よりもずっと緊張したわね。

 でも瞳の色を見たときには、今度は二人で大喜びよ。


 あの人と同じ色をしていたの。

 そして髪は私と同じ色だった。


 今度こそ愛し合う夫婦の子どもを手にしたように思えたわね。


 そうしたら、あの子は間違いだった気がしてきたの。




 あの子ったら、どんどん似ていくのよ。

 もう怖いくらいに、会うたびそっくりな顔立ちになっていったわ。



 愛し合う夫婦って似てくるなんて言うけれど。

 私たちって、最初から似ていたみたい。


 あの人も昔から私の母を苦手に思っていたようなの。

 だから……距離を置いただけなのよ?


 私たちはあの子を想っていたからこそ、そうしたの。


 だって顔を見たら。

 見たくないものを見ないように、目を細めてしまうでしょう?


 あの子の前で口を開けば。

 嫌な言葉をいくらでも掛けてしまいそうだったわ。


 手を伸ばされたときには。

 いくら優しい私でも、咄嗟に払い落としてしまうかもしれない。


 だから近付かない方がいいと思って。

 夫婦でそうしたの。


 すべてはあの子を守るため。



 その代わり、あの子には何不自由ない暮らしをさせてきた。


 乳母によく懐いていることは知っていたわ。

 幼児の頃から親への当てつけをしているみたいでそれは嫌らしかったけれど。

 それでも私はあの弁えない乳母を取り上げるような酷い真似はしなかったわよ?

 母ならあっさりと取り上げていたでしょうね。


 第一子ですもの。

 本当ならもっと厳しく育てなければならなかったわ。


 次期当主となる可能性が高ければ当然のこと。


 私たちなんて優しいものよ?


 実家と比べたら、どれだけ優しい家に生まれたか。

 あの子は知らないから、出て行くなんて言えたのね。


 もう後悔しているのではなくて?



 まぁ、なんてこと。

 まだ分からないなんて。



 何がそんなに不満だったのかしら?

 将来の当主候補として、教育係だって十分過ぎる程に付けて貰っていたでしょう?


 ドレスだって成長に合わせて必要な分をきちんと作らせていたわ。

 あの子が困るようなことは、今までに一度だってなかったはずよ?


 優しいこの伯爵家で、何不自由なく暮らせていたはずなのに。

 それでも足りないと言う子になるなんて、私たちだって夢にも思わなかった。


 だから今は困っているわね。


 どうして私が悪いように言うのかしら?


 説明したでしょう?

 あの子のためを想って、私たちはあえて距離を取って接してきたの。


 だけど側に置かないからって、何も想っていなかったわけではないわ。

 遠くからでも、必要なものはたっぷりと与えてきたでしょう?


 だから、ちょっと行き違いがあるだけだと思うのよ?


 私たちがどれだけあの子のためを想って生きてきたか。

 話せば分かってくれると思うわ。


 あの子だって、私の娘ですからね。





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