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祖母の確認③


 あらあら、私は疑われているのねぇ。

 そう思われても仕方がなかったかもしれないわ。


 でも本当に知らないのよ?


 あの頭の足りない嫁と孫娘が奇妙な話をしていたから。

 面白いことを言うわねって、私はそう伝えただけ。


 下の孫娘も同じように言っているのではないかしら?

 うふふ、分かるわよ。

 あの子は何でも正直に話したでしょう?


 それで夫は私も一緒に捨てることにしたのね。

 えぇ、分かっていたわ。

 あの人の中では子育ての全責任が私にあるの。

 

 上の孫娘の功績だけは、あの人のもの。

 あの子も祖父に可愛がられていたことは認めたかしら?



 あらまぁ。そうなの。決まったのね。


 そうね。もう私が何かする必要がないことは分かったわ。




 ねぇ、教えてくれないかしら?


 私だって分かっているのよ?

 息子に縁談が来たところからおかしいもの。


 連れてくる侍女がいることは分かっていたわ。

 けれど事務官までも、夫が素直に受け入れたときには、正気を疑ったわね。

 夫がそこまでの人なのだとよく分かる出来事だったわ。


 最初から高位の皆さまの高尚なお考えがあったのでしょう?

 きっと王家まで絡んでいるのではなくて?


 この家は覚えの良くないことをしてしまっていたのかしら?

 それともただの増え過ぎた貴族家の整理の一環?


 上の孫娘は、あの女公爵の孫として認められたのね?



 あらあら、私を高く評価してくださるのね。

 ふふふ。何も隠してなんていないわ。

 私だって高位貴族家に生まれた娘だもの。それなりの教育は受けてきたのよ。


 どうしてそのように振舞わないかって?

 私はね、義母にはよーく躾けていただいたの。


 ねぇ、知っていらして?

 伯爵家の妻は、愚かであればあるほどいいのですって。


 大事な大事な息子が、最後の当主として立派に後始末が出来たのだもの。

 あちらではご夫婦揃ってさぞお喜びなのではないかしら。

 きっと泣いていらっしゃるわね。


 まぁ、悲しくないかですって?


 息子に伯爵が務まらないことは分かっていたもの。

 期待が無ければ、感じるものはないわ。

 えぇ、そうね。可哀想なことだと思うわよ。


 夫に切り捨てられたこと?


 いずれこうなることは分かっていたもの。

 同じことよ。何も思うことはないわ。


 愛していたのではないかですって?


 ふふ。うふふふふ。


 あの家訓なら知っていたわよ。

 ご丁寧に義母が教えてくれていたもの。


 可哀想な人よねぇ、お義母さまも。


 私はいいのよ、あのとき有難く感じたことは本当だから。

 それに夫は言ったことを反故にはしなかったわ。

 だから私もあの人の望む妻で居続けることが出来たの。


 あら、どうしたのかしら?

 私はこの人生に満足しているのよ。


 夫とは、とても貴族らしい素敵な関係を築けていたと思わない?



 最後にあの子、上の孫娘の次の婚約者になる人を当ててみせましょうか?

 あら?聞きたくなさそうねぇ。残念だわ。


 随分と代替わりも進んで、良好な関係性を示したい頃でしょうし。

 それでも中枢には、入れたくはないでしょうからね。


 本家筋ではないあの子がちょうどいいのでしょう?

 理想的な孫娘を作るには、我が家はさぞ素晴らしい環境だったことでしょうね。

 あちらから出て行く先も整えられて。


 あらあら。

 高位貴族なんてものはね、プライドばっかり高い人間の集まりなのよ。

 あなたも覚えておくといいわ。



 それで私たちは、これからどこで暮らしていくことになるのかしら?

 夫も一緒なのでしょう?

 これからは二人で慎ましく生きていくわ。


 息子夫婦?

 もう孫もいる年齢なのよ?

 あの子たちはあの子たちで好きに生きて貰うわ。


 下の孫娘のこと?

 そういえば夫も奇妙なことを言っていたわね。

 あの子たちの結婚を、夫が好きに出来るはずなんてないでしょうに。

 とても可哀想に思うわ。えぇ、夫も、孫娘のこともね。


 侯爵家のあの子と責任を取る形で結婚はするのかしら?

 あの子もいいように使われてしまったのでしょうね。

 あちらも先代が随分と派手なお振舞いをされていたことは知っているわ。

 今のご当主さまもさぞご苦労なさってきていることでしょう。

 あれで無事にいられたのだもの、孫の件でとてもよく使えたということね。


 えぇ、そうね。

 どの子も自業自得。

 高尚な皆さまからすれば、利用されるような生き方をしていたことが悪いのでしょう。


 これからは時間だけはたっぷりとあるでしょうから、せめて二人の孫の行く末が少しは良くなるよう祈ろうかしらね。

 えぇ、とても心からの幸せを願うことなんて出来ないわ。


 酷い祖母かしら?

 でもそれが貴族家の娘に生まれた宿命だもの。

 あの子たちには受け入れて生きていってもらうしかないの。


 下の孫娘はあのままがいいのかもしれないわね。

 あの嫁のように、何も分からず生きていけるなんて、とても幸せなことでしょう。

 夫もそうね。息子もそうだわ。

 きっと分からないことは幸せなのよ。

 下の孫娘には、あの子らしい幸せを願ってもいいかもしれない。


 そうなると、上の孫娘だけが不憫ね。

 あの子は幸せになれないでしょう。


 間違いなく、私の孫ね。







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