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女侯爵の吐露③


 これでも要らぬ子たちは、妾含め、整理してきたのだよ。


 今も残る弟妹たちは、私をよく支えてくれている。

 侯爵家に生まれた者の義務を理解しているいい子たちばかり残したからね。


 私たちは何も教育を与えなかったわけではなかった。

 一人ずつに力を入れられなかっただけで、侯爵家の子に必要な教えは授けていたし、どの子も家に相応しい大人になるよう成長を見守ってきたとも。


 そうだね、それを監視と言う人もいるかもしれない。


 父か?

 あれは何も知らなかったろうな。


 あの男は性欲さえ満たされれば、それでよかったのだろうよ。

 口ではあれだけ優秀な子が欲しいと繰り返していたあの男は、産まれた子のその後を気にする素振りを一度だって見せたことはなかったからな。

 あぁ、別邸から妾が消えれば、新しい女を補充することだけは出来ていたね。


 すると認識はしていたのかな?いやどうだろうな。妾の意思で逃げたとでも思っていそうだ。

 あれは女を大事に出来る男でもなかったからね。

 それに片付けもしてこなかった。いや出来なかったのだよ。


 こうして昔語りをしていても、つくづくあれが侯爵の器には無かったことがよく分かって、嫌な気分になってくるね。


 あの男の処理かい?

 こちらの準備が終わり次第、すぐに隠居して貰ったとも。

 健康上の理由でな。


 あぁ、安心したまえ。まだ生きている。



 それはいいとして。

 こちらの目を搔い潜る、そういう小賢しい子どもというのはいるものでな。


 外向けには生まれた順では十番目、我が家の四男ということになっていたあの子は、あの男によく似て女好きに育っていたことは知っていた。

 それでもね、ぎりぎりのところでトラブルは回避出来ていたのだよ。

 ここまでという線引きが自分で出来ているのなら、まだ使い道はありそうだと考えてしまった私も悪かったね。


 あれはある日、手を出してはいけない女性に手を付けた。


 切り捨てることにして、先方へと謝罪に伺えば。

 ある提案がなされてね。


 ほら、醜聞なら、もう我が家は父の代で嫌というほどに重ねてきているだろう?

 こんな子だくさんの高位貴族家が、今の時代に他にあるかい?


 だからさ、ひとつ足すくらいどうってことない話だった。

 それに私も、そろそろ父と多過ぎる弟妹のせいで長く苦労してきた憐れな女侯爵、というところに収まるのもいいかと思ってね。


 これであの子も侯爵家に生まれた子として、役に立ったということになる。

 あの子の将来に使い道を見て生かした私の過去の判断は、意外に正しかったと言っても今なら許されるかな。


 ははっ。

 私を呼ぶよう言っているか。


 またとない機会を得ていたというのにな。

 あれも父親に似て可哀想なことよ。


 私からの伝言は単純だよ。

 家のため、よく役に立ってくれた、褒めていたと伝えてくれ。


 あぁ、あとはあちらに委ねるといい。

 うちもここで手を引く約束だからね。


 そうだね、そのまま指示があるまで入れておけばいいよ。


 それまでの間にあれをどう扱おうとも、私から意を唱えることがないことは君たちに約束しよう。

 これで安心したかな?








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