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第5章 悪役令嬢、選挙戦に巻き込まれる

クラリッサが次期生徒会長候補として名を連ねた週明け、セレスティア魔法学園では異例とも言える“選挙戦”の幕が上がった。


選挙とは名ばかりで、これまでの代替わりはほとんどが事務的な推薦と承認によって済まされてきた。

しかし、クラリッサの立候補により、初の“公開演説”と“討論会”が企画されたのだ。


(なんでこんな面倒なことになってるのよ……)


演壇の袖で腕を組みながら、クラリッサは深いため息をついた。

今日は、候補者による公開討論会。

壇上には既に他の候補――伝統を重んじる名家出身のラディウス・セラン、温厚な平民出身者マーガレット・シェリーなど、計四名が並んでいた。


彼らはいずれも、品行方正で優等生然とした面々だ。

その中央に、毒舌と誤解で構成されたクラリッサが立つ構図は、明らかに異質だった。


「それでは次の質問です。“あなたが会長になった場合、学園にどのような改革をもたらしますか?”」


司会者の声に、順に候補たちがマイクを手に語る。


「私は伝統を守り、貴族社会の秩序を保ちます」

「私は平民にも開かれた制度作りを――」


やがて順番がクラリッサに回ってきた。


(……何もしてないのに期待され、善政を求められて。笑わせるわね)


クラリッサはマイクを取ると、会場を鋭く睨んだ。


「――改革、ですって? 笑わせないでちょうだい」


ざわめく聴衆。

けれど彼女は構わず続けた。


「私は学園を変えるつもりなんてないわ。高貴とは傲慢であること。強さとは、弱さを踏みにじること。貴族とは、そういう存在であるべきでしょう?」


凍りつく空気。

だがそれは、一部の“目覚めた者たち”には、まるで“問題提起”のように聞こえた。


(ああ、また……また誤解された)


演説後、クラリッサの支持は謎に増加。

「真実を暴いた勇気ある発言」「建前を壊す覚悟」として、講堂に集った生徒たちの間で一気に話題となり、翌日には各寮での噂話の中心となっていた。


一方、候補者控室では、ラディウスが苛立ちを隠せずにいた。


「なんなんだあの女は……下品な口ぶりで場を荒らすだけかと思えば、生徒たちの喝采を浴びている……!」


そこに現れたのは、エルシア・ルルヴァン。


「ねえ、彼女を本当に“悪”と呼べるのかしら」


彼女の冷ややかな声が、選挙戦に新たな火種を投じた。


そしてその裏で、ユリウスは静かに次なる計画を練っていた。

この選挙を通じて、学園の深部――貴族と平民の対立、制度の歪みを暴こうと。


(クラリッサ嬢……あなたの“誤解”には、利用価値がある)


善か悪か。

本音か偽りか。


学園を揺るがす選挙戦は、やがてクラリッサを想像もせぬ戦場へと導いていく。


続く。

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